デジタルトレンド“今読み先読み”
旅先で便利なデジタルアイテムに好機到来 夏休みの分散や長期化で高まる旅行需要
2011/07/28 16:51
週刊BCN 2011年07月25日vol.1392掲載
消費者の旅行意欲は2009年夏を上回る勢い
JTBが7月4日に発表した2011年の夏休み期間(7月15日~8月31日)の旅行動向によると、国内・海外を合わせた総旅行人数は推計7458万人で、前年を211万人下回る。前年割れを見込んではいるものの、節電に伴う夏期休暇の方針がまだ確定していない企業もあり、JTBでは休み間際になって申し込む「間際予約」の増加など、需要の拡大に期待しているようだ。それを裏づけているのが、同じくJTBが行った一般消費者へのアンケート調査。今年の夏に「旅行に行く」と回答した人は15.8%で、過去5年間では昨年夏(16.7%)に次ぐ高いポイントとなった。リーマン・ショック後の09年夏と比べると、「行く」が1ポイント、「多分行く」が1.9ポイント上回っている。
また、エイチ・アイ・エス(HIS)が、7月5日に発表した夏休み期間(7月16日~9月30日)の予約状況をもとにした海外旅行動向からも、消費者の旅行意欲の高まりがうかがえる。8月出発の海外旅行は、前年同日比2ケタを超えて推移。また、夏休み期間全体の予約人数は、前年同日比109%となった。同社では、「節電の夏は海外へ!」をテーマに、家族で4泊5日以上の旅行をすると1か月あたり15%の節電につながることをアピールし、需要喚起に力を注いでいる。
世界22か国で展開するオンライン旅行会社「エクスペディア」も好調だ。木村奈津子・東アジアマーケティングディレクターは、「3月は震災の影響でキャンセルが多かったが、4月第2週からは、取り扱い高が昨年比3倍、予約件数が2倍の勢いで伸長している」という。個人旅行をターゲットに、航空券とホテル、空港送迎を自由に組み合わせて割安な価格で利用できる「ダイナミック海外ツアー」の訴求を強化したことが、長期休暇需要の拡大という市場環境と相まってユーザー拡大を後押ししている。
「夏旅」コーナーを設置 専用機のメリットを訴求
ビックカメラ 有楽町店本館6階 吉田佳世氏 |
ビックカメラ有楽町店では、節電対策でサマータイム制を導入する企業が増えていることを背景に、本館6階のスーツケースコーナーでは、「夏旅」をテーマにしたPOPを作成して、アピールしている。今年6月頃からは「アフター4を有効に使おう」を打ち出し、金曜日夕方から土日を使った「プチ旅行」を提案。売り場担当の吉田佳世氏によると、「夏の旅行に向けてスーツケースが売れ始めるのは、例年は6月頃。今年の販売数は前年比で1割増えた」という。そのほか同店では、5階の電子辞書コーナーにも6階と同じ「夏旅」のPOPを設置。海外旅行に行く人をターゲットに訴求している。
旅に欠かせないアイテムの一つであるデジタルカメラコーナーでは、今年初めて防水デジカメコーナーを設置した。沖縄などのきれいな海に行くというお客様や、『昨年防水のカメラを持たずに出かけて後悔した』などの声を受けて、夏の旅行に向けての露出に力を入れている。
デジカメの普及率はすでに73.3%(11年3月時点、内閣府調べ)に達し、成熟期にあるほか、スマートフォンの台頭によって、買い替え需要が脅かされるという危惧もある。しかし、完全防水対応モデルは、機能特化が強みだ。
電子辞書やPNDは、スマートフォンで代用できるが、スマートフォンは海外では通信環境や料金が障壁となる。バッテリ駆動時間が短いことも、旅行でバリバリ使うには、ネックだろう。旅先で使うには、やはり専用機がいい。電子辞書やPNDは、旅をテーマにした利用シーンを打ち出すことで、メリットが際立つ。一定の需要を掘り起こせるだろう。
このほか、電子書籍も旅行を切り口にした訴求を強化していくことで、需要喚起ができる可能性がある。ビックカメラでは、シニア層を中心に、あらかじめダウンロードしておいたコンテンツを旅先で読みたいというニーズから、シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」への問い合わせが増えてきているという。
震災後の節電関連需要は、旅行にまで波及した。「旅行に行く=節電対策」をキーワードに、直接節電できる省エネ家電以外にも、節電消費のカギが隠れている。(田沢理恵)
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