デジタルトレンド“今読み先読み”
広がるバッテリ搭載家電 停電や節電対策で脚光を浴びる
2011/07/14 16:51
週刊BCN 2011年07月11日vol.1390掲載
スマートフォンバッテリが急伸
停電に備えたLEDライトも好調
電気製品は、生活になくてはならない存在だ。しかし、多くの製品はコンセントプラグから供給されるAC電源で駆動しているので、電気の供給が止まれば当然ながら動かなくなる。東日本大震災の被災地域や計画停電が実施された地域の人々は、電気が利用できない不便さを改めて実感した。また、それをニュースなどで目のあたりにした人々は、危機感を強くしたことだろう。そこで注目を集めたのが、バッテリだ。震災後、乾電池は品薄状態になり、充電池・蓄電池の需要は急上昇した。 その動きは、BCNランキングの「スマートフォンアクセサリ」をみると一目瞭然。スマートフォンのバッテリだけを抽出し、昨年5月の販売数量を1として指数化すると、今年3月は13倍という急伸ぶりだ。4~5月も10~12倍という大きな伸びを示している。Android OS搭載のスマートフォンの普及に比例して、対応バッテリの販売数量は昨年から増加傾向にあったが、3月以降の急激な伸びは、この影響だけでは説明しきれない。
こうした「内蔵バッテリに充電する外付けバッテリ」や「交換バッテリ」の需要が拡大している一方で、より直接的に停電に備えたバッテリ搭載製品も好調のようだ。東芝ライテックは、バッテリ内蔵のLEDシーリングライト「LEDH94210H-LC」を7月15日に発売する。停電を検知すると、補助LEDが自動で点灯する製品だ。
また朝日電器は、従来から販売しているバッテリ搭載の充電式LEDセンサーライト「TDH-300」の売れ行きが好調で、今後ラインアップの拡充を図るという。「TDH-300」は、コンセントに差し込んでおくと足元を照らすナイトライトとして役立つ小型の製品で、コンセントプラグから抜けば充電池ライトとして利用できる。阿部幸次・商品企画管理部課長は、「販売台数は震災後に急激に上昇し、以前と比較してとひとケタ違うレベルになった。現在も品薄の状態が続いている」と語る。拡充を予定する製品は、バッテリ容量を大きくして部屋全体を照らすことができる置き型照明で、9月1日の防災の日までに発売する予定だという。
テレビやリビング扇風機など
バッテリ搭載製品が続々登場
テレビや扇風機など、これまでバッテリを搭載していなかった家電製品にも、新たにバッテリを搭載した製品が登場している。 東芝は、バッテリで約3時間視聴できる19V型液晶テレビ「レグザ 19P2」を7月上旬に発売。停電などで地デジアンテナが使えないとき、付属のワンセグ用アンテナを使ってワンセグ放送を視聴できる製品だ。東芝デジタルプロダクツ&サービス社の長嶋忠浩・デジタルプロダクツ&サービス第一事業部長は、販売店などからの評価を受け、当初の見込みの倍に当たる「月産1万台を目指す」との目標を示している。 6月中旬、バッテリ内蔵のリビング扇風機「FM-BF16D」を発売したフォースメディアは、「初回出荷分は完売状態」(広報担当者)。追加生産分についても、予約で完売の状態だという。発表後に、時流に乗った商品としてテレビ番組で紹介されたことも、人気に拍車をかけた。
バッテリを搭載した製品は、停電対策だけでなく、電力使用量がピークとなる時間帯を避けて充電しておくことで節電にも貢献する。PCメーカー各社は、すでにこの「ピークシフト機能」を搭載したノートPCの発売やソフトの提供に動いている。 これまでの日本は、電気のある生活が当たり前の状態が続いてきた。持ち歩いて使う携帯電話やノートPCを除けば、家電製品にバッテリを搭載する必然性はなかったといえるだろう。しかし、震災後の電力供給不足を機に、AC電源がなくても駆動する家電製品への期待は、確実に高まっている。(田沢理恵)
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