デジタルトレンド“今読み先読み”

Androidアプリの販売 チャンスは店頭にあり

2011/07/07 18:44

週刊BCN 2011年07月04日vol.1389掲載

 スマートフォンやタブレット端末は、豊富なアプリから自分に合ったものを選んで手軽に楽しめるのが魅力。Androidのアプリは、Android Marketなどのダウンロードサイトからダウンロードするのが一般的だが、端末の普及に伴って、新たなチャネルがみえてきた。それが、家電量販店の店頭販売だ。きっかけは、シマンテックのセキュリティソフト「ノートン モバイル セキュリティ」。3月の発売以来、好調に推移している。

店頭で予想以上の売れ行き 「ノートン モバイル セキュリティ」

 シマンテックが、Android端末向けセキュリティソフト「ノートン モバイル セキュリティ」の店頭パッケージ版を発売したのは3月18日。ロジャー・ヨーダー 執行役員コンシューママーケティング統括本部長は、「家電量販店には、スマートフォンを目当てに来店するお客様が多い。日本市場では、まず量販店で販売することがカギだと思った」という。

スマートフォン売り場で販売するシマンテック「ノートン モバイル セキュリティ」(写真=ビックカメラ有楽町店1階のスマートフォン売り場)

 そもそもPCと同じようにフルブラウジングができるスマートフォンは、常にオンライン犯罪の危険にさらされている。ましてやAndroidはオープンなシステムで、犯罪者たちの標的になりやすい。また、常に持ち歩いて使うスマートフォンは、紛失や盗難による情報漏えいの可能性もある。シマンテックは、こうしたセキュリティの必要性をお客様に伝えるために、スマートフォン売り場は絶好の場だと考えた。量販店に対して、携帯電話の契約コーナーやアクセサリコーナーでの「ノートン モバイル セキュリティ」の展開を提案し、販売を支援するためのポケットマニュアルの制作や勉強会の開催などの取り組みに力を注いでいる。

 ヨーダー統括本部長は、販売本数について、「当初予測の6倍くらい」と手応えを示す。BCNランキングの実売データで、発売後の3月21~27日の週次データを100として指数化すると、4月下旬から5月上旬に2倍に伸長。5月中旬以降は、やや減速傾向にあるものの、堅調に推移している。


 一方、同じセキュリティソフトのカスペルスキーやトレンドマイクロは、今後の提供方法を模索中だ。カスペルスキーは、まずは、Android 2.3対応の「カスペルスキーモバイルセキュリティ9 MP2 CF1」を12月31日まで無償で提供することで、Androidセキュリティの認知度底上げに取り組む。川合林太郎社長は、「Androidのセキュリティの認知度が低く、ニーズが顕在化していない状況だ。しかし、スマートフォンユーザーの拡大に比例して、脅威も拡大していく」と、需要喚起の必要性を強調する。すでにグローバルサイトでは30ドル弱で販売しているが、国内での価格や、店頭販売も含めた販売形態については、検討を進めている段階だ。

 トレンドマイクロは、今年9月の「ウイルスバスター モバイル for Android」の発売に向けて、5月11日からベータ版をダウンロード提供している。正式版は、ダウンロード、店頭でのパッケージ販売、キャリアや本体メーカーとの提携を含めて検討中という。

BBソフトは店頭販売で「ユーザーを掘り起こす」

 シマンテックのように、スマートフォンアプリをパッケージ化して店頭で販売するのは、これまでにあまり例のない試み。しかし、スマートフォンユーザーが先進層から一般層にすそ野が拡大している状況をみると、セキュリティソフトに限らず、店頭でアプリを訴求していく手法は、無視できないのではないだろうか。

 PCやデジタル機器にある程度慣れている人にとっては、無料や数百円程度の豊富な種類のアプリを自由に選べることがスマートフォンやタブレットのメリット。一方で、初心者にとっては、選択の幅が広すぎることがデメリットとなる。店頭で商品を選ぶという信頼感に加え、「日本は、世界のなかでも量販店で商品を購入する人が多い国だ」(シマンテックのヨーダー統括本部長)という購買行動のお国柄もある。PCソフトの販売がオンラインにシフトしつつあっても、いまだに店頭の売り場が存在しているのは、こうした日本の購買文化があるからだ。

 BBソフトサービスは、オンラインストレージサービス「SugarSync」の認知度を高めることを目的に、5月27日に店頭販売を開始した。「オンラインでの申し込みが圧倒的に多いが、オンラインストレージに興味をもっていなかった新しいユーザーを掘り起こす試み」(山本和輝・ソフトウェアサービス事業マーコム推進部シニアディレクタ)だ。店頭での露出は、パッケージ化や流通のコストをかけてでも、初心者層を中心としたユーザーを獲得できる可能性がある。スマートフォン・タブレットのアプリで新たな需要を喚起するチャンスは、店頭にあるのかもしれない。(田沢理恵)
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