デジタルトレンド“今読み先読み”

<台湾製タブレット端末>独自のユニークな製品が続々 タブレット端末で主導権を握る

2011/06/30 16:51

週刊BCN 2011年06月27日vol.1388掲載

 台湾の主要ITメーカーが、タブレット端末の主導権を握ろうとしている。他社と一線を画した製品を開発することが決め手と認識して、得意とするハードウェアのつくり込みに力を注いでいる。タブレット端末の特徴であるタッチパネルに、機能や操作性、使い勝手など、さらに独自の価値を付け加えた製品を俯瞰しよう。

「COMPUTEX TAIPEI 2011」では各社ともユニークなタブレット端末を展示

「COMPUTEX TAIPEI」にはユニークな新製品がずらり

 5月31日から6月4日まで、台湾台北市で開催されたIT関連製品の総合展示会「COMPUTEX TAIPEI 2011」では、多くのメーカーがタブレット端末を展示していた。多かったのは、単なるタブレットではなく、ほかの機器との連携を売りにした製品だ。タッチパネルを指で操作するという基本を押さえながら、ユニークな要素を付加した製品が各ブースを盛り上げていた。

 アスースは、展示会の前日に記者会見を開いてスマートフォン“内蔵”のタブレット端末「Padfone」を発表。スマートフォンを裏面にはめ込むこの端末は、「通話」と「大画面でインターネットやアプリを楽しむ」というスマートフォンとタブレットの“いいとこ取り”を実現。アプリケーションやデータを共有できるほか、データ転送の手間がかからない。最大の特徴は、1枚のSIMカードで両方を使えることだ。これまで通信事業者と2台分の契約を結ばなければならなかったユーザーにとって、コスト面でのメリットを提供する。なお、「Padfone」の仕様や機能、発売時期などは明らかになっていない。

 エイサーは、OSにAndroid 3.0を採用した7インチ液晶の「ICONIA TAB A100」、日本で7月上旬に発売を予定する「ICONIA TAB A500」、すでに5月下旬に発売となったノートPC「ICONIA-F54E」を展示。なかでも「ICONIA-F54E」は、14インチのタッチパネルを2枚搭載し、ノートPCとタブレット、両方の使い方ができる話題性の高い商品だ。コーナーは、常に実機の体験を待つ人で溢れていた。

 ギガバイト・テクノロジーは、キーボードと接続してノートPCとして使うことができ、オプションとして専用ドックを用意するWindowsのタブレット端末「S1080」を出展。この専用ドックは、スピーカーやDVDドライブを備え、タブレット端末の活躍の場を大きくする。

 タブレット端末のOEM(相手先ブランド供給)ビジネスを展開するシャトルは、ブースでは他社ブランドの製品を展示したが、Android OSのデスクトップ型タブレット端末の発売を計画。まず教育機関や金融機関など、特定業界向けに販売のアプローチし、軌道に乗った段階で家電量販店経由で一般消費者を獲得していく。 


「ちょっと変わった製品でユーザーを囲い込む」と話すシャトルのジャック・リン・セールスディレクター(左上)、「Padfone」で革命を起こすことに意欲を燃やすアスースのジョニー・シー会長(右上)、ギガバイトのリチャード・マー・シニアバイスプレジデントは事業の拡大には「ブランドの向上がポイント」と認識する

ハードウェアの開発力を駆使 まずは日本市場を攻略へ

 台湾の主要メーカーがタブレット端末でユニークなデザインや機能にこだわっているのは、他社が真似できないハードウェアの開発力を駆使して、世界で市場の主導権を掌握しようとしているからだ。

 アスースのジョニー・シー会長は、「革新的な製品をつくり出し、世界でリーダーシップをとる」と断言。ギガバイトのリチャード・マー・シニアバイスプレジデントも、「台湾メーカーの強みは、マザーボードを中心としたハードウェアの開発力。タブレット端末では、ユーザーの使い勝手を意識したデザインを追求していかなければならない」とアピールする。シャトルでデスクトップ関連部門を統括するジャック・リン・セールスディレクターは、「OEMビジネスで、各ユーザーに最適なハードウェアを開発できることが強み。タブレット端末の開発では、その強みを大いに発揮できる」と自信をみせる。

 マザーボードやベアボーンを中心とした自作PCのマーケットは、すでに成熟し、今後、爆発的に拡大する可能性は低い。また、タブレット端末が登場する前、台湾メーカーの製品を中心に伸びていたネットブックも、タブレット端末の登場と同時に衰退しつつあり、台湾メーカーは厳しい状況に追い込まれていた。さらに、ユーザーがタブレット端末を選ぶ最大の理由は、スマートフォンと同じように、アプリケーションの豊富さと楽しさにあるといわれている。この土俵では、台湾メーカーは勝負できない。

 一方、ハードウェアは、これまで培ったブランド力がカギを握る。そこで、台湾メーカーは、使い勝手に重きを置き、他社が真似できないハードウェアの開発力で勝負しているのだ。

 そして、これらタブレット端末の拡販で各社に共通するのが、日本市場の重視。「ブランド向上に適した地域で重要な市場は日本」(ギガバイトのマー・シニアバイスプレジデント)、「日本は品質に最も厳しい国であり、日本で認められれば世界でも通用する」(シャトルのリン・セールスディレクター)など、新たなコンセプトの製品をまずは日本での販売に力を入れ、次のステップとして世界市場に送り出す動きが出ている。(佐相彰彦)
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