時の人

<インタビュー・時の人>デル コンシューマー&SMB事業本部 マーケティング本部長 原田洋次

2011/06/23 18:44

週刊BCN 2011年06月20日vol.1387掲載

 「BTO・直販・低価格」を武器に成長を遂げてきたデル。これまで、PCに関する一定の知識をもつ中・上級者をコアユーザーとして獲得してきた。そんなデルが、PCのコモディティ化を背景に、一般ユーザーへのアプローチを強化している。コンシューマー&SMB事業本部の原田洋次マーケティング本部長に聞いた。(取材・文/田沢理恵)

目指すはコンシューマNo.1ブランド
「新しいデル」を打ち出す

Q. コンシューマ向けPCの販売状況は?

A.
 昨年年末頃から、新しいユーザーを開拓するために、ブランディングへの投資に力を注いでいる。この半年ほどで、いいかたちで売り上げが伸びてきている。 


Q. 新しいユーザーとは?

A.
 これまで獲得してきたユーザーは、PCに関する一定の知識をもつ中・上級者が中心だった。今後は、メインストリームの「INSPIRON」と「XPS」で、独身男性や20~30代の女性、ファミリーなどのボリュームゾーンを獲得していきたい。また、ゲーミングPC「ALIENWARE」では、ゲーマー(ゲームユーザー)を拡大したい。

Q. どのように訴求するのか。

A.
 かつては『このスペックでこの価格』というように、機能対価格のインパクトでユーザーを獲得し、成長してきた時期もあった。しかし、PCがコモディティ化し、他社との価格差も縮まっているなかで、これまでとは違うメッセージを打ち出す必要がある。そこで、これまで取り組んでこなかった感情的な訴求を開始した。デルの根幹であるカスタマイズを強みに、「あなたに適したあなただけの一台」というソリューション提供の訴求に力を入れていく。

Q. しかし、カスタマイズの選択肢が少なくなったように思うが。

A.
 BTOにこだわってきたが、「オプションの選択肢が多すぎて分かりにくい」という声もあった。とくに、新たに獲得したいユーザー層にこの傾向がある。そこで、ニーズが高いオプションに絞って選びやすくした。また、BTOでは納期に対する不満の声があった。これに対応して、昨年から始めた最短で2営業日納品という即納モデルは、現在、コンシューマ向けの販売台数の半数を占める。

Q. オンラインや電話の直販がメインのデルにとって、量販モデルはどのような位置づけなのか。

A.
 日本は、「店頭で購入を決める」という購買行動が顕著な国。量販モデルや製品の展示・直販スペース「デル・リアル・サイト」を店頭に設けることで、今までデルを知らなかった人にアプローチできるようになった。チャネル販売はほぼ純増で伸びている状況だ。

Q. 今後の目標は?

A.
 とくにコンシューマ向けの製品は、デザインに力を入れて訴求しているが、まだ認知度が低い。今後は広告展開を見直し、きっちりアピールしていく。これまであまり行っていなかった電波系広告なども検討している。ゲーミングPC「ALIENWARE」については、「宇宙最強のゲームマシン」をテーマに、一線を画したブランディングを行っていく。新しい試みのモバイル製品「Streak」を含め、いろいろな意味で「新しいデル」を打ち出し、コンシューマのNo.1ブランドを目指す。

・Turning Point

 原田洋次本部長は、2000年代前半にデル日本法人が始めた製品の展示・直販スペース「デル・リアル・サイト」を立ち上げた中核メンバー。当時の日本のコンシューマPC市場では、「お客様の9割が店頭で購入しているといわれていた時代。製品が見られない、触れられないことに機会ロスを感じていた」という。

 しかし当時のデルは、リテールビジネスに慎重で、店頭販売に乗り出すことはできなかった。そこで生まれた発想が「リアル・サイト」。これによって、今までリーチできていなかったユーザーをつかんだ。日本法人発で、初めてグローバルに展開したベストプラクティスでもある。
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