デジタルトレンド“今読み先読み”
<除湿機>衣類乾燥機能を強化 年間を通して売れる商品に
2011/06/16 16:51
週刊BCN 2011年06月13日vol.1386掲載
部屋干しニーズを捉えて機能を強化
除湿機は例年、5月頃に各社の新製品が出揃い、6月の梅雨入りとともに販売がピークに達する。今年は、例年より2~3週間早い5月下旬に梅雨入りしたこともあって、商戦は前倒しでスタートした。ビックカメラ有楽町店では、「5月の販売台数は前年同月比1.5倍に拡大した」(本館B1階の関口篤主任)と、好調だ。除湿機市場は、毎年60万~70万台前後(日本電機工業会調べ)で推移しており、急激な伸びはないが、ユーザーの利用目的には明らかな変化がある。それが、衣類の乾燥だ。三菱電機ホーム機器営業部空質アメニティー営業課の関口裕紀氏によると、「ユーザーの除湿機購入目的を調査したところ、04年頃までは、部屋の除湿が圧倒的だった。ところが、年々、衣類の乾燥を目的とする人が増え、07年以降は衣類乾燥が部屋の除湿を上回っている」という。衣類乾燥のニーズの中身は、「雨の日だけでなく、花粉や黄砂などが飛散する日も洗濯物を室内で干したい」ということ。つまり、部屋干しのニーズは年間を通してあることになる。
こうした動向を背景に、三菱電機では、06年、それまでの「除湿機」という呼称を「衣類乾燥除湿機」に変更。パナソニックも、昨年から「除湿乾燥機」にした。
商品名に「乾燥」をつけるだけあって、各社とも新製品の乾燥機能は充実している。パナソニックは、上位モデル「F-YHGX120」にエコナビを搭載。これは、洗濯物の量を見分けるとともに、乾燥が終わると自動で停止する省エネ機能だ。
三菱電機は、赤外線センサー「部屋干し 3D ムーブアイ」で洗濯物を検知し、濡れている洗濯物や乾きムラを狙って乾燥する上下スイング角度を従来の150度から160度に拡大した。三菱電機ホーム機器の関口氏は「乾きムラを解消するための機能を強化するとともに、臭いの不快感を抑えた」と自信を示す。また、「MJ-100FX」には新たに送風と除湿を組み合わせて効率よく運転する「エコ干しモード」を備えて省エネ性能を強化した。東芝は、従来から展開しているコンプレッサー方式に加えて、乾燥剤を用いて湿度を制御するデシカント方式の「RAD-DN70」を同社で初めて導入し、ラインアップを強化した。
普及率は20%強程度 認知度の高まりがカギ
各社は、カタログで衣類乾燥機能を前面に打ち出すことで、除湿機が年間を通して利用できることを訴えているほか、店頭では、「部屋干し」をテーマにしたPOPで活用提案を行っている。しかし、現状ではまだまだ認知度は低い。パナソニックでは、6月から「除湿機とは何をする機器か」をわかりやすく伝える冊子を配布している。「ファミリー中心としたユーザーに加え、ひとり暮らしの女性ユーザーを獲得したい」(アプライアンス・ウェルネスマーケティング本部商品グループ空質商品チームの吉田晴香氏)。一方、ダイキン工業は、除湿・加湿・集塵・脱臭の四つの機能を搭載した「クリアフォース」を、冬から春は加湿器や空気清浄機コーナーに、梅雨時は除湿機コーナーなどに置くことで、シーズンごとにそれぞれの切り口で提案している。空調営業本部事業戦略室商品企画グループの福島多恵子氏は、「人は加湿、家は除湿といったように、もともと一年を通して使用するコンセプトの製品。どれかがおまけの機能ではない。一年中使えることで、ユーザーの満足度は高い」という。「クリアフォース」の実勢価格は7万円前後で、現在のユーザーは30~40代のファミリー層が中心。しかし、今後は若年層からも注目度が高い空気清浄機をトリガーに四つの機能を付加価値として訴求し、需要を掘り起こしていく。
パナソニックの吉田氏によれば、除湿機の世帯普及率は「22%程度」にとどまっているという。しかし、雨や花粉などのほか、夜に洗濯をして干す人、外に洗濯物を干すことに抵抗感をもつひとり暮らしの女性など、衣類乾燥へのニーズが増幅しているのは事実。ビックカメラの関口主任によると、「『乾燥機能をもつ洗濯機は高価で手が出せない』という一人暮らしの人などが、除湿機の低価格モデルで部屋干しをするニーズがある」という。ユーザーに機能と利便性が伝わり、認知度が高まれば、普及に弾みがつきそうだ。(田沢理恵)
- 1