時の人

<インタビュー・時の人>バイドゥ 取締役副社長 陳海騰

2011/05/26 18:44

週刊BCN 2011年05月23日vol.1383掲載

 中国最大手の検索サービスプロバイダ、百度。その日本法人のバイドゥは、現在、日本と中国をつなぐ“ゲートウェイ”としての役割を果たし、日本企業の中国進出支援に力を注いでいる。検索サービスではグーグルなどに遅れをとっている感は否めないが、グローバルでプラットフォームの強化を進めており、近く日本でも提供を拡大していく考えだ。日本での戦略を、陳海騰副社長に聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

日本と中国をつなぐ“ゲートウェイ”に
検索エンジンを生かしてサービスを拡大

Q. 現在、力を入れているビジネスは?

A.
 売り上げの柱は、中国関連のビジネスだ。日本企業の中国進出、中国企業の日本進出などを支援している。メディアサイトとして、基本的にプロモーションの実施をメインに据えている。具体的には、日本企業に対して、中国本社の中国語サイトへの広告出稿を提案している。また、中国人顧客を獲得するためのEC支援にも取り組んでいる。例えば、昨年1月に、楽天と合弁会社を設立した。楽天は中国語サイトに広告を出稿する当社の顧客だったが、後にジョイントベンチャー設立にまで話が進んだ。これらの中国関連ビジネスでは、クライアントとして100社以上を獲得している。


Q. ウェブサービスは?

A.
 もちろん、ウェブサービスの拡充は非常に重視している。しかし、日本語サイトで広告ビジネスを展開していないので、今は売り上げを増やすというよりは、ユーザーの囲い込みを念頭に置いている。囲い込みを目的とした主力サービスが、日本語入力システムだ。09年12月に「Baidu Type」として提供し、今年3月には「Baidu IME」の名称に改め、中身も大幅に改善した。入力エリアのデザイン「スキン」を変えられる機能や、「ギャル文字辞書」「IT用語辞書」「2ちゃんねる辞書」などのオプション辞書、ユーザーの入力傾向を学習する予測変換機能など、従来の機能を引き継ぎながら、画面をキャプチャするスクリーンショット機能や単語のユーザー辞書登録の簡易化、ユーザー設定ガイド機能などを追加している。「Baidu IME」は、週を追うごとにユーザーが増えている。

Q. ただ、「Baidu IME」は無料で提供している。収益の確保は、どのように考えているのか。

A.
 着地点は、ユーザーへの課金ではなく、クライアントからの広告出稿に据えている。「Baidu IME」で100万人のユーザーを囲い込めば、次のステップに進むことができる。現在の具体的なユーザー数は公表できないものの、近い将来には実現すると確信している。

Q. 検索エンジンは強化するのか。

A.
 われわれは、検索エンジンから自社ウェブサイトへの来訪者を増やす「SEM(サーチエンジンマーケティング)」をモットーにビジネスを手がけている。当然、グローバルレベルでプラットフォーム「Phoenix Nest」の強化を常に追求している。PCの従来の起動とOSを省略し、出発点として検索ボックスをユーザーに提供する「ボックスコンピューティング」をビジョンとして掲げ、それを進化させる開発を進めている。すでに中国では、企業に対して提供している。日本でも、近くプラットフォームを生かしたビジネスに着手するつもりだ。

・Turning Point

 中国での学生時代。「今思えば、日本語を専攻したことが転機かな」と振り返る。英語という選択肢もあったが、「ドラマ『おしん』とアニメ『一休さん』が大好きだった」こともあって、日本語を選んだ。1992年に来日し、沖縄国際大学を経て、神戸大学大学院で経済学修士号を取得。日本での生活は長い。

 現在は、日本と中国を行ったり来たりの生活。たびたび両国の“門”をくぐる自身の行き来になぞらえて、「当社は日本と中国をつなぐ“ゲートウェイ”」と表現する。日本企業の中国進出支援も、“ゲートウェイ”ビジネスにほかならない。
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