時の人

<インタビュー・時の人>筆まめ 代表取締役社長 萩原義博

2011/05/19 18:44

週刊BCN 2011年05月16日vol.1382掲載

 ハガキソフトとして多くのユーザーに支持され続けている「筆まめ」。これまではクレオの製品ブランドの一つだったが、4月1日、新たに株式会社筆まめとしてスタートした。当面は「筆まめ」などの拡販に力を注ぎながら、開発への投資を積極的に進めていくことで、市場に適した新しいジャンルにもチャレンジ。クラウドサービスの提供も見据えて、収益を伸ばしていく方針だ。代表取締役社長に就任した萩原義博氏に、今後の展望を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

コーポレートブランドとして新たな船出
パッケージとクラウドの両輪で成長へ

Q. 株式会社になって状況は変わったか。

A.
 クレオで筆まめサービス事業に携わっていた人員が当社の社員になっているので、体制や業務に関しては以前とほとんど変わっていない。ただ、会社になったということで、改めて収益を確保しなければならないと実感している。よい製品を市場に出し続けていくために小回りを利かせて、開発などに積極的に投資していく。「筆まめ」は、ビジネスブランドとして非常に認知度が高かった。コーポレートブランドになったのだから、確実に成長しなければならないとかみ締めている。


Q. 設立から1か月、これまで取り組んできたことは?

A.
 取引先などへの挨拶回りが中心だった。そのなかで出てきた話の多くがハガキソフトの市場動向で、今年はとくに「予測がつかない」とする人が多かった。拡販への仕掛けが必要と考えている。

Q. どのような戦略を考えているのか。

A.
 まだ具体的に進んでいるわけではないが、例えば改めてハガキによるコミュニケーションを訴える店頭でのプロモーションだ。「日本を元気にする」という意味も込めて、eメールによるコミュニケーションだけでなく、自筆で元気に生活していることを伝えるなど、ハガキのよさを再認識してもらうことが重要だと確信している。また、ハガキの利用という観点からは、日本郵政を巻き込むのも一つの手だと考えている。

Q. 今年度、とくに力を入れる製品は?

A.
 パッケージでは、主力ソフトの「筆まめ」を引き続き拡販するほか、冠婚葬祭や年中行事の予定や履歴を管理することができる「筆まめおつきあい帳」の販売に力を入れる。一昨年12月に市場投入したのを皮切りに、昨年秋に第二弾を発売し、徐々に利用者が増えている。この製品で新ジャンルの確立を目指す。ほかにも、デジタルライフを身近にするような新しいジャンルの製品を出していくつもりだ。

Q. クラウドサービスには着手するのか。

A.
 現状では、クラウドで収益を確保しているケースはごくわずか。今すぐにビジネスとして手がけるわけではない。しかし、パッケージ市場が縮小傾向にあるなかでは、新しいビジネスモデルを構築しなければならない。その意味では、視野に入れている。サービスの提供形態は、PCやスマートフォン、タブレット端末が連動するような内容をイメージしている。

Q. 売り上げなどの数値目標は?

A.
 具体的な数値は公表できないが、今年度は増収増益を見込んでいる。パッケージ販売とクラウドを中心とした新規事業の両輪で、5年後に売り上げを現状の2倍に引き上げる。

・Turning Point

 製品開発に従事していた90年、ハガキソフト「筆まめ」を市場に投入した。「87年にもハガキソフトを発売したのだが、まだ市場に受け入れられなかった。90年当時も、ハガキをPCでつくることを訴えるのは、無謀だったのかもしれない」と振り返る。それでも「新しいジャンルとして市場に浸透させたい」との思いから発売。Ver.2まで見向きもされなかった「筆まめ」だが、Ver.3でようやく「ハガキソフトというジャンルが認められた」と実感したという。現行製品はVer.21。完全に市場として確立している。
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