デジタルトレンド“今読み先読み”

<ワンセグチューナー>計画停電をきっかけに需要が急増 人気再燃の可能性も

2011/05/05 16:51

週刊BCN 2011年05月02日vol.1381掲載

 ノートPCやiPhone、iPadなどのモバイル端末にワンセグチューナーを接続し、テレビ番組を視聴するニーズが高まっている。きっかけは計画停電。AC電源に接続する薄型テレビで視聴できなくなり、代わりにバッテリで動く端末で視聴する人が多くなったのだ。さらにこれを契機に、場所を問わずテレビ番組が楽しめるワンセグチューナーの人気が再燃する可能性が出てきた。

計画停電でノートPCやiPhoneなどに接続してテレビ番組を視聴
(バッファローの「DH-ONE/IP」)

計画停電開始の3月14~20日 販売台数で前年比3.5倍以上に

 東京電力管内で計画停電が始まったのは、3月14日。3月14~20日のBCNランキングでは、ワンセグチューナーの販売が急激に伸び、販売台数は前年同週の357.6%に達した。急激に伸びたのは、テレビチューナーを搭載していないノートPCや、ワンセグ機能をもたないiPhoneなどに差し込むだけで、停電でもテレビ番組が視聴できるからだ。なかでも、iPhone+ワンセグチューナーという組み合わせが多かったようだ。BCNランキングでは、バッファローのiPhone用ワンセグチューナー「ちょいテレi DH-ONE/IP」が、映像関連製品の機種別販売台数シェアで3月14~20日に17.1%を獲得。3月7~13日にトップを獲得してはいたものの、8.8%と10%未満にとどまっていた。計画停電開始の週に、一気にシェアを伸ばしたことになる。しかも、3月14~20日以降の週もトップシェアを維持した。


 バッファローは、「DH-ONE/IP」1300台を東日本大震災の被災地に無償で提供。同社は支援方法を検討するなかで、現地の情報不足解消のためにワンセグチューナーを選定した。1300台のうち300台については、同社の震災被災地支援チームが現地に直接運んで配布。残りの1000台は、支援物資として地方自治体に申請したという。

情報量が少ないことが受信のしやすさにつながる

 地上デジタル放送は、1チャンネル分を13のセグメントに分けて情報を送信している。このうち12セグメントを家庭向けのデジタル放送として利用しており、残りの1セグメント、つまり「ワンセグ」が、携帯端末向けの動画放送に割り当てられている。12セグメントの地上デジタルテレビ放送は、セグメント数が多く、大容量の情報を送信することができる。また、1チャンネル分で最大3番組のデジタル標準放送に分割して同時に放送できるので、視聴者はどの番組を視聴するか、自由に選ぶことができる。

 ワンセグに限って受信できるワンセグチューナーは、携帯電話やスマートフォンだけでなく、地デジチューナーのないノートPCでも手軽にテレビが楽しめるとあって、2006年に単体で周辺機器として登場した当時は大いにもてはやされた。しかし、視聴者の地デジ環境が整うにつれ、地上波と同じ内容のサイマル放送しかなく、情報量が少なく画質も見劣りするワンセグは、次第に「携帯電話のテレビ」になっていった。そして、「地デジ化」では、13セグメントすべてを受信することができる「フルセグ」に対応したフルセグチューナーが注目を集めるようになっていった。

 震災で再びワンセグチューナーに注目が集まったのは、この弱点が逆にメリットとして見直されたということだ。受信環境が悪い場所などでは、情報量の大きい「フルセグ」による視聴は難しく、情報量が少なく受信しやすいワンセグのほうが適している。しかも、ワンセグは受信エリアが広い。

 被災地では当面、情報不足を解決するためにデジタル放送を受信しやすいワンセグ対応機器を利用することになりそうだ。また、東京電力が計画停電を原則実施しないとの方針を示しているとはいえ、何かあった場合に備えてワンセグチューナーを新たに購入する人も出ている。このところの安定したiPhone用ワンセグチューナーの人気は、フルセグ機器とのすみ分けが進んでいる証拠でもあるだろう。やや下火になっていたワンセグチューナーが、その手軽さゆえに再び脚光を浴びることになりそうだ。(佐相彰彦)
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