時の人

<インタビュー・時の人>エーピーシー・ジャパン チャネル営業本部 本部長 妻鹿行雄

2011/04/28 18:44

週刊BCN 2011年04月25日vol.1380掲載

 急な電源障害や落雷に備え、企業向けのサーバーに欠かせないUPS(無停電電源装置)。個人については一部のヘビーユーザーが使用するケースがほとんどで、一般にはあまり馴染みのない製品だ。しかし、東日本大震災や計画停電をきっかけに、個人の関心が高まった。3月14~20日のBCNランキングでは販売台数が前年同週比で6倍を記録している。この需要にメーカーはどのように対応していくのか。「BCN AWARD」のUPS部門でトップシェアを維持するエーピーシー・ジャパン(APC)の妻鹿行雄・チャネル営業本部本部長に聞いた。(取材・文/田沢理恵)

一般ユーザーに正しい使い方をアピール
ニーズ高まる長時間バッテリ対応も検討

Q. BCNランキングデータでは、3月14~20日のUPSの販売台数が前年同週比で6倍を記録した。この売れ行きをどのように分析しているか。

A.
 一つには、既存ユーザーが、震災を機に買い替えに動いた。もう一つは、災害時に「PCをきちんとシャットダウンする」というUPSの必要性を痛感した新規ユーザーが購入している。さらに、計画停電対策として購入する一般ユーザーもいる。これらが急激に売れた背景だ。


Q. 都内の量販店は、すでに品薄状態。供給体制は?

A.
 震災の被害で当社の倉庫は稼働を停止していたが、3月28日に再開し、できる限り商品を供給できるように努力している。また米国本社からは、日本への製品供給を優先するように指示が出ている。従来の倍のスピードで生産し、コスト度外視で空輸を利用している状況だ。

Q. UPSは、これまで企業や一部の限られたPCユーザーが使用していたケースがほとんどだった。新規ユーザーのなかには、誤った認識で購入している可能性もある。

A.
 UPSは、電源に障害があったときに、短時間の電源供給を行って時間を稼ぎ、その間にサーバーやPCをきちんとシャットダウンしてデータを守る装置。日本語で「無停電電源装置」という名称が付いているので、発電機と誤解されやすく、一般ユーザーにはわかりにくいかもしれない。売り場も、UPSの何たるかを知っている人が買うことを前提に構成しているのが実情だ。これからは、メーカーとして、対応機器などの正しい使い方を店頭パネルなどでしっかり伝えていかなければならないと考えている。バッテリは、何回か放電しているうちに、15分もつはずが3分しかもたないこともある。こうした注意点などもしっかり訴求していきたい。

Q. 一般ユーザーにとっては、デジタル家電や白物家電にも使えるかどうかが気になる点だが。

A.
 PCのほか、テレビ、レコーダー、ゲームなどのデジタル家電には対応できる。家電品は、LED電球などの消費電力の低い製品ならば対応可能だが、冷蔵庫や電気ヒーターなどの消費電力の大きい家電で使用することはできないので、注意が必要だ。

Q. UPSは、万が一の時にデータを守るための装置だが、計画停電対策などで長時間バッテリの対応にニーズがあるのではないか。

A.
 企業向けで売れ筋のSmart-UPSシリーズには、サーバーの消費量が少なければ、拡張バッテリで3~4時間駆動するSmart-UPS RTという商品がある。いま、バッテリを長くもたせたいというニーズを背景に、注目されている。こうした状況からも、ホームユースでもニーズがあるとみている。個人・SOHO向けのシリーズに、長時間バッテリモデルをラインアップすることを検討している。

・Turning Point

 入社以来、ソリューションビジネスを担当してきた。ディストリビューションビジネスを担当することになったのは、08年年末から。顧客の要望に応じた解決策を提案するソリューションビジネスに対し、パートナービジネスは、マーケット全体が望んでいることを分析してパートナーとともに何をすべきかを考え、施策を打ち、販売店に売ってもらうことがミッション。「最初はソリューションビジネスとそれほど変わらないと思っていた」という妻鹿本部長だが、実際は「まったく違っていた」と振り返る。「慣れるまで、なかなかキャッチアップできなかった」という。しかし、今では「パートナーが儲かれば当社も儲かる。それがない限り、ビジネスは成り立たない」との信念で、チャネル営業本部を率いる。
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