時の人
<インタビュー・時の人>ソニーマーケティング ITビジネス部門 ITマーケティング部 統括部長 伊原 諭
2011/04/21 18:44
週刊BCN 2011年04月18日vol.1379掲載
使い方の提案が販売拡大のカギ
PCとAVをもつソニーの強みを生かす
Q. まずは、VAIO春モデルの特徴を聞かせてほしい。A. ノートPCの機能性と操作性に正面から向き合い、スペックとモビリティをバランスよく盛り込んだモデルSシリーズは、VAIOのオリジナリティと魅力を象徴するモデルだ。きょう体はフルフラット仕上げで、最長17時間駆動する別売の拡張用バッテリを装着してもデザインを損わないなど、細部までこだわっている。13.3型で重さ1.72kgという軽量化や、起動を高速化する独自技術を初めて取り入れた。他のPCブランドとはどこかかが違う“VAIOらしさ”を象徴するプレミアムモデルとして、満を持して投入した。同じくノートPCのFシリーズは、ソニーのAV技術をすべてつぎ込んだフルハイビジョン対応の3Dモデルだ。販売店さんの評価も高い。このSシリーズ、Fシリーズをコアに、VAIOの魅力をしっかり伝える。
Q. デスクトップPCは……。
A. 一体型デスクトップPCのLシリーズ新製品には、PCでテレビを見るときに『いちいちOSを立ち上げるのは面倒』という不満の声に対応し、OSを起動しなくてもテレビが見られる「スグつくTV」ボタンを搭載した。テレビ視聴に求められる即時性を実現した機能で、電源オフの状態から5秒で地デジが視聴できる。地上・BS・110度CSデジタルのダブルチューナーに加え、「スグつくTV」用に地デジチューナー1基を搭載することで実現した。この機能を差異化ポイントとして打ち出し、地デジPC需要を掴む。
Q. Windows 7搭載モデルへの買替えや買増しで、PC市場は堅調に推移してきた。販売店ではポスト地デジ商材としても期待が高まっているが、VAIOはどのように訴求していくのか。
A. PC市場は、テレビのエコポイント特需のような大きな伸長はなかったが、販売台数は堅調に推移してきた。一方で、課題は単価アップを図ること。そのためには、「フルハイビジョン対応の3D」「スグつくTV」など、付加価値を伝えやすくして、この製品を使うと「こんなことができる」「こんなふうに楽しめる」という使い方の提案が肝になる。また、これからPCは、テレビやレコーダーとの連携が本格化していく。この流れのなかで、AV機器とPC、両方の製品をもっているソニーの強みが生きる。例えば、2011年春モデルの液晶テレビ『ブラビア』は、Windows 7搭載のVAIOでキーボード操作ができるようにした。こうしたPC関連機器以外の製品との連携と訴求にも、力を入れていくつもりだ。ワンランク上の機種を提案するという発想ではなく、使い方の提案をすることが、結果的に単価アップにつながると考えている。モノ軸ではなく、「何ができるか」のコト軸で販売拡大を図る。
商品企画やマーケティングを担当するなかで、「何でもできることは、何にもできないことに等しいことを痛感した」という。メーカーが、新製品でこんなことも、あんなこともできるようになったと訴えても、ユーザーにしてみれば、結局何をしていいのか分からないからだ。ネットワークプロダクツMK課統括課長時代に担当した、高機能であったがゆえに訴求ポイントを絞り切れなかったホームサーバー「コクーン」やロケーションフリーテレビ「エアボード」で学んだ。いまは「コレだ」というポイントを明確にして、あえて余計なことをいわず、常にわかりやすくしっかり伝えることを心がけている。
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