時の人

<インタビュー・時の人>富士通 執行役員常務ユビキタスプロダクトビジネスグループ長(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ社長) 大谷信雄

2011/04/14 18:44

週刊BCN 2011年04月11日vol.1378掲載

 2010年10月、富士通が東芝の携帯電話事業を譲り受け、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ(富士通東芝モバイル)が誕生した。KDDI(au)向け携帯電話やスマートフォンを開発しながら、一方で富士通の携帯電話事業と連携を取り、NTTドコモ向けに端末を提供している。この一連のビジネスの指揮を執るのが、執行役員常務ユビキタスプロダクトビジネスグループ長であり、富士通東芝モバイル社長でもある大谷信雄氏だ。富士通東芝モバイルの方向性、そして富士通のクライアント端末を軸とした事業拡大策を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

国内事業とグローバル化の確立へ
ハードとサービスの総合戦略で拡大

Q. 昨年10月の富士通東芝モバイルコミュニケーションズの設立から6か月あまり。今、どのような状況なのか。

A.
 富士通がNTTドコモ、富士通東芝モバイルが東芝の事業を引き継いでKDDIと、それぞれ異なる通信事業者に携帯電話やスマートフォンを提供し、そのことが相乗効果を生んでいる。社内でも、東芝と富士通のノウハウがうまく絡み合っている。


Q. KDDI向けのスマートフォンに関しては、出遅れたようにみえたが。

A.
 確かに出遅れたことは否定できない。しかし、今年2月に発売した「REGZA Phone IS04」は予想以上の売れ行きだ。昨年末にNTTドコモから「REGZA Phone T-01C」を発売していたので、発売の若干の遅れがあったとしても取り戻せると確信していた。ただ、本当の勝負はこれからだと考えている。

Q. 本当の勝負とは、どのような意味合いか。

A.
 他社との勝負だけでなく、さらに市場をつくっていくことを見据えるということだ。国内のスマートフォン市場は急激に伸びたとはいえ、まだまだこれから。しかもスマートフォンビジネスは、国内市場だけでなく、グローバルな流れにも乗らなければならない。国内市場の拡大に寄与する製品を発売していきながら、グローバルでも事業を拡大する策を講じる。これがポイントだ。

Q. 勝つための策は?

A.
 富士通グループの強みは、スマートフォンだけでなく、PCやサーバー、ネットワーク機器、ストレージ、ソフト・サービスと、多くの製品をもっていることだ。一般消費者に直接提供するスマートフォンやPCの機能を拡充していくことはもちろん、通信事業者の回線インフラやシステム部分の増強にも貢献することが重要と考えている。また、クラウドサービスの充実で、消費者がスマートフォンをさらに快適に使える環境の整備も行っていく。さらにはITだけでなく、他の業界を巻き込んでいくことも必要だ。このような総合戦略で事業を拡大していく。

Q. 総合戦略の例を挙げてほしい。

A.
 例えば医療関連だ。自動的に体調を管理する機能をスマートフォンに搭載し、例えば体温を測って、そのデータを自動でリアルタイムに、ネットワークを介してかかりつけの病院へ送る。また、自宅のPCでも管理することができる。これは国内だけでなく、海外でもニーズが高まっている。このような世界を実現することができないかと、実用を模索しているところだ。

Q. フィーチャーフォンについては。

A.
 多機能携帯電話のフィーチャーフォンは完成している。販売は継続していくが、今後はスマートフォンに舵を切る。

・Turning Point

 入社時、配属先でワープロ「オアシス」に携わった。「今、振り返ってみると、その時から一貫してクライアント端末に携わっている」と、大谷執行役員はいう。就職活動の時、富士通のイメージは「オフコンなど大型コンピュータ関連のビジネスを手がけている会社」だった。両親に「端末関連の仕事をしている」と話したら、「末端ということか?」と勘違いされとか。クライアント端末は、消費者はもちろん、法人であっても個人が直接使用するもの。「前線にいると認識し、常にトレンドを捉えていなければならない」と気を引き締める。
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