時の人
<インタビュー・時の人>ゼンリンデータコム 代表取締役社長 清水辰彦
2011/02/24 18:44
週刊BCN 2011年02月21日vol.1371掲載
地図を軸にプラットフォーム整備へ
行動を喚起するサービスを提供
Q. 主力事業の地図サービス「いつもNavi」の現状を教えてほしい。A. 順調だ。昨年1年間で、さまざまなデバイスで使える「いつもNavi」の会員数が大幅に増えた。
Q. その要因をどう考えているのか。
A. 携帯電話の機能が充実し、ネットワークインフラが確立していることによって、携帯電話を使って常に何かをしているということが当たり前になった。ユーザーがさまざまな携帯電話サービスを利用するなかで、地図や位置情報サービスは、ごく普通に使うサービスとして定着してきた。このことが、会員増につながったと考えている。
Q. 好調ななかで、課題は何か。
A. 最近、需要が急速に増えているスマートフォンへの対応だ。このとき、アプリケーションだけをスマートフォンに対応させただけでは意味がない。スマートフォンならではのサービスを付加することが重要と捉えている。
Q. 具体的な対応策は。
A. 最寄り駅からの道のりや飲食店など、単なる周辺地域の情報だけでなく、検索したい情報そのものの価値を高めていく。例えば住宅地図では、住宅の位置情報に不動産情報などを付加する。また、クルマに対しては、渋滞など道路情報を提供するだけでなく、走っている道路の工事情報や、走りやすい道路なのかどうかなど、もっと尖った情報を提供することがポイントだ。道路に関しては、歩行者向けにも、歩道の状態や地下街の様子などの情報を提供したいと考えている。スマートフォンでは、ユーザーが「行動しながら利用する」というケースが増えてくる。そこで、行動を喚起するサービスを拡充し、地図や位置情報を欠かせない存在にするために、現在、次のステップのサービスを開発中だ。
Q. サービスを拡充するためには、アライアンスも必要になるのでは。
A. 地図を軸とする「プラットフォーム」の開発では、アライアンスは重要で、現在も進めている。地図や位置情報の提供に加え、現在、取り組んでいるのは、位置情報を利用したプラットフォームの構築だ。これは、「いつもNavi」をはじめとする位置情報アプリやカーナビゲーション、TwitterやSNS、位置ゲームなど、ユーザーが何を利用しているときでも、位置情報を取得・分析して、関連する有益な情報を提供する仕組みをイメージしている。現在、さまざまなベンダーとプラットフォームを構築している段階だ。このような取り組みで、ユーザーが本当に必要な情報を得られる環境をつくっていく。これが、当社のクラウド時代の立ち位置だと確信している。
米国で、オフィスの立ち上げから会社の設立までを手がけたことは、大きな財産になった。会社から海外事業拡大の指示が出て米国に渡ったものの、「正直いって、当初は何をやればいいのか分からなかった」と振り返る。オフィスを立ち上げたが、「3年ぐらいは売り上げゼロ」。ターニングポイントになったのは、地道な営業が実を結び、自動車メーカー最大手、米GMがカーナビゲーションシステムに同社ソフトを採用したことだった。ゼロから大きな収益を生むに至った経験を、現在はゼンリンデータコムの経営に生かしている。
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