デジタルトレンド“今読み先読み”
<データ通信カード>モバイルタイプに人気集中 WiMAXが躍進するデータ通信カード
2011/02/24 18:44
週刊BCN 2011年02月21日vol.1371掲載
伸びるモバイルタイプ
通信料金がひとまとめで便利に
モバイルタイプの通信カードを投入して注目を集めたのは、イー・モバイルだ。2009年11月発売の「Pocket WiFi(D25HW)」が人気を博し、その後、各キャリアもモバイルタイプ端末で追随した。モバイルタイプは、従来のUSB型やExpressCard型に加え、すでに一つのジャンルとして確立している。「BCNランキング」でも、1月のカラーを合算したシリーズ別ランキングで、トップ10中、7モデルはモバイルタイプ。その人気は明らかだ。 ビックカメラ有楽町店本館では、1月上旬からモバイルタイプの特設コーナーを1階入口付近に設置し、販促に力を入れている。特設コーナーでは、イー・モバイルやNTTドコモ、WiMAXなどのキャリアを集め、端末やサービスが比較できるようにしている。携帯電話・PHSコーナーの望月俊治スタッフは、「販売台数・金額ともに前年超えが続き、好調」と手応えを語る。同店では、このほか携帯型ゲーム機やオーディオ機器、PC売り場でもモバイルタイプ端末を展開している。
一方、キャリアのNTTドコモは、09年7月、家電量販店に加えてドコモショップでもデータ通信カードの取り扱いを開始。さらに、モバイルタイプの製品を10年に2モデル発売したことが追い風となって、データ通信カード全体の売り上げは好調だった。石田俊哉ユビキタスサービス部ユビキタスサービス企画担当部長は、その要因を「カバーしている通信エリアがユーザーに評価された」とみている。また、「新規契約者のうち、約半数がモバイルタイプ」ということで、人気ぶりを実感しているようだ。
また、高速無線通信「WiMAX」を提供しているUQコミュニケーションズの前島勲企画部門デバイス推進部長は、「複数の端末をまとめてつなぐことができるだけでなく、回線を一つにして通信料のコストを下げることができる」とモバイルタイプのメリットを語る。
WiMAXの構成比が拡大
自宅での利用提案がカギ
端末の形状の変化に加え、最近目立つのがWiMAXの伸長だ。「BCNランキング」のキャリア別販売台数構成比をみると、UQコミュニケーションズが有料サービスを開始した09年7月から右肩上がりの成長を続け、10年12月には40.2%で1位に躍り出た。それまで独壇場だったイー・モバイルは37.0%で2位に。11年1月は、WiMAXが38.5%、イー・モバイルが38.1%とほぼ横並びの状況になっている。 UQコミュニケーションズの前島部長は、WiMAXの好調の理由を「通信速度とブランドの認知に加え、サービス料金がユーザーに評価された」と分析する。UQコミュニケーションズは、家電量販店やプロバイダなど、MVMO(仮想移動体通信事業者)をもつのが強み。ユーザーは、用途に応じて端末や料金を選ぶことができる。UQコミュニケーションズはこのビジネスモデルを活用し、外出先だけでなく、自宅でも使うことを想定したクレードル付きの端末などを拡充し、強く訴求していく方針だ。
一方、ドコモは次世代通信サービスLTE(Long Term Evolution)を利用した10年12月開始の高速データ通信サービス「Xi(クロッシィ)」で攻勢をかける。現在の端末ラインアップは、USB型とExpressCard型だけだが、「2011年のなるべく早い段階で、Xi対応のモバイルタイプを提供する」(石田担当部長)という。さらに、UQコミュニケーションズと同様、「自宅の固定回線の置き換えを狙う」として、データ通信カードの自宅での利用提案に力を入れていく。
量販店も、キャリアと同じように今後の市場を分析している。ビックカメラの望月スタッフは「Wi-Fi対応のPCやスレート、携帯型ゲーム機など、対応端末の増加と、外出先だけでなく自宅で使うニーズが市場を左右する」と予測する。データ通信カード市場は、モバイルタイプの普及に次いで、利用シーンの拡大という次のステップに移行したといえそうだ。(井上真希子)
- 1