時の人

<インタビュー・時の人>ジャングル 代表取締役 高田晃子

2011/02/17 18:44

週刊BCN 2011年02月14日vol.1370掲載

 ジャングルは、年間で最も売れたメーカーを表彰する「BCN AWARD 2011」の携帯電話ソフト部門で、初めて最優秀賞を獲得した。これは、ユーザーのニーズに合った製品を市場に投入するためのマーケティングの成果にほかならない。トップシェアを獲得したノウハウを生かし、「売れる」ことを前提条件に、さまざまなジャンルでクリエイティブ重視の製品を発売。社員の意識改革でぜい肉をそぎ落とし、“筋肉質”の体制づくりを進めている。(取材・文/佐相彰彦)

売れる仕組みを整備
意識改革で筋肉質の会社に

Q. 御社にとって2010年は、どのような年だったのか。

A.
 以前からソフトウェア市場が縮小傾向にあるだけでなく、08年秋のリーマン・ショックからの世界不況で市場環境は厳しく、「不景気だから買わない」という消費者が多かったといえる。しかし、これは逆に「不景気でも必要なものは買わなければならない」と意識しているということ。そこで、「市場が本当に求めている製品は何か」を改めて考え、「売れる製品」の市場投入を追求したのが2010年だった。


Q. 売れる製品を投入するために、社内で実施したことは何か。

A.
 社内体制の抜本的な見直しだ。お客様が感じる“値頃感”は、不景気になる前と、なった後では異なる。その時の適正な価格で提供しなければ売れないので、固定費を下げるなどコスト削減策を講じた。

 また、社員の意識改革を徹底した。例えば、これまで営業担当者の主な業務は家電量販店を巡回することだった。定性情報の収集にはそれでいいかもしれないが、単に店舗を回るだけで、製品が売れるというわけではない。そこで、実売データと照らし合わせた製品の提供に力を注いだ。定量データをもとに、売れる要因と対策を考える。そして、家電量販店を訪れて、地域特性や来店者層など、その家電量販店に合った製品を提供していく。市場を調査し、市場の状況に合わせたプロモーションを実施するなど、マーケティングを徹底した。これで効果が出てきている製品もある。

Q. それが、最優秀賞を獲得した携帯電話ソフトか。

A.
 その通り。携帯電話市場は、昨年末からスマートフォンの需要が拡大している。これに合わせて、当社のソフトがスマートフォンにも対応していることを前面に押し出した。

Q. 課題は何か。

A.
 定量/定性情報を結合して、有効活用する販売手法がまだまだ確立していない。達成率は3%程度だろう。今後も市場を捉えた販売を強化していくほか、お客様のニーズに適した製品を市場に出すために、定性/定量情報の活用と、さらに営業部門と開発部門の人的な連携を強めていく。

Q. さまざまなジャンルのソフトを扱っているが、ラインアップの絞り込みは視野に入れているのか。

A.
 もちろん、ニーズに適さず、売れない製品を提供していくつもりはない。しかし、他社が提供していないジャンルの製品を出しているということが、当社の強みでもある。その強みを生かしながら、市場が求める製品の提供、新しい分野を創造していくというのが当社の使命だと捉えている。

・Turning Point

 高田社長のターニングポイントは、やはり08年秋のリーマン・ショック以降の世界不況。今、そこから「大きな学びを得た」と噛み締める。「不景気になれば、人は必要なものしか買わない。そんな時でも買わずにはいられない魅力ある製品をつくらなければ、生き抜いていけないと実感した」という。

 「不況を経験したからこそ、今の当社がある」。スキルの向上を目的に、社員は積極的に外部で開催されているセミナーや研修に参加。高田社長自身も、「今以上の経営スタイルを構築しなければならない」と痛切に感じたという。
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