時の人
<インタビュー・時の人>ワコム 取締役 執行役員 ジャパン・アジアパシフィック統括本部 統括本部長 小見山茂樹
2011/02/10 18:44
週刊BCN 2011年02月07日vol.1369掲載
ペンとタッチの「インターフェース企業」
2011年はグローバル化を加速
Q. 2010年のペンタブレット事業の動向は。A. ペンタブレット事業は、プロ向け、個人向け、医療・教育・金融などに向けたソリューション事業、PCメーカーなどに技術を供給するコンポーネント事業の四つに分かれる。プロ向けの「Intuos」は、映画やゲームなどいまやコンテンツは7~8割がデジタル化しており、堅調に推移している。個人向けの「Bamboo」は、日本ではコミックのデジタル化の需要があり、年末商戦では「Bamboo Comic」が過去最高の売上高を記録した。ソリューション事業は、例えばペーパーレスを推進する企業が導入するケースが目立った。業務の効率化やセキュリティの確保、環境への配慮につながるからだ。コンポーネント事業は、パートナーであるPCメーカーがPCよりもスレートの開発に注力していることもあって、引き合いがあった。
Q. 今後、スレートは伸びていくのか。
A. 急成長するとみている。調査会社のIDCによれば、2015年の世界市場のPC需要台数は年間約5億台。また、大和証券によると、そのうち、1億5000万台をスレートが占めると予測されている。スレートの普及によって、これまで当たり前だったマウスとキーボードというPCのインターフェースが大きく変わる可能性がある。当社のペンとタッチセンサーを活用することで、さらに魅力的なデジタルライフをユーザーに提供できると考えている。
Q. ワコムといえば、まず「Bamboo」が頭に浮かぶ。家電量販店の店頭施策に非常に力を入れている印象だ。
A. 個人向け製品は、2007年、ブランドを「Bamboo」に変更した。ブランディングとは、会社のカルチャーをつくる行為。単なる広告宣伝ではない。一つの会社でブランドを確立していくには、社員の人数が多ければ時間もかかるし、弊害も出てくる。その点、当社はグローバルで700人程度。意識改革はうまくいったと感じている。こうした社内改革がないと、仮に売り場で製品を置いても、ユーザーに魅力が伝わらない。ワコムはPC周辺機器メーカーではなく、インターフェース企業。それが伝わるよう、強く意識している。
Q. ペンタブレット事業はしばらく成長が見込まれるが、課題は何か。
A. 製品面では、個人向け製品をもっと使ってもらえるよう、性能やアプリケーションなどの質を高めていきたい。また、企業向けのソリューション事業には、大きなマーケットがあるとみている。製品開発については、扱っている製品の種類が多いので、開発リソースが足りないことが課題だ。すでに台湾などに開発拠点があるが、中国やインドなど、オフショアを広げていくことを検討しなければならない。会社として、よりグローバル化を進めていかなければならない時期に差しかかっている。
シチズン時計にいた1988年、世界初のノートPCの事業化に携わり、米コンパックにPCをOEMで提供する機会に恵まれた。PC市場の急成長と、その後の低迷を目の当たりにしたことで、マイクロソフトやインテルの位置づけなど、PC業界のビジネス構造を把握することができた。もう一つは、PCよりも小さい通信端末に注目が集まっていた頃、2000年にハンドスプリングの社長に就任。Palm OSを搭載したPDAを開発・販売していた。当時は通信インフラが整っておらず、Palmは爆発的に普及することはなかった。しかし、Palmから、ペンタブレットの礎となる「直感的な操作」という思想を学んだ。
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