デジタルトレンド“今読み先読み”

用途広がるPC用スピーカー テレビやモバイル端末など利用シーンが多彩に

2011/02/10 16:51

週刊BCN 2011年02月07日vol.1369掲載

 PC向けのスピーカー市場が好調だ。2010年はほぼ前年超えで推移した。「BCNランキング」の前年同月比をみると、12月は販売台数98.1%、販売金額102.8%とやや落ち着いたものの、PCとの接続だけでなく、薄型テレビとつなぐ需要の拡大によって、市場は活性化している。また、2011年は、ワイヤレスモデルなどによるメーカーの積極的な活用シーン提案が見込まれ、新規ユーザーの獲得が期待できそうだ。


高音質で楽しむPCコンテンツ
大手量販店ではDTMで訴求

 PC用スピーカーとは、iPodやウォークマンなど、携帯オーディオの専用コネクタを備えていない比較的小型の汎用スピーカーのこと。エレコムは、デザインやカラーなどのバリエーションに富んだ製品を多くラインアップする。2010年の市場が好調だった理由を、福良卓二商品開発部部長代理は「CDやDVD/BDをPCで楽しむ人が増えている。また、インターネット上の動画コンテンツを視聴するニーズが高まっている」と振り返った。また、オンキヨーの砂長潔取締役PC営業部長は「高品位な携帯オーディオの影響で、よりよい音を求めるユーザーが増えている」と分析する。

 メーカーだけでなく、販売店もユーザーの志向に合わせて動き始めた。東京・ビックカメラ池袋本館パソコン館は、10年秋のリニューアルの際、PC用スピーカー売り場をアップルのMacintoshやiPodを揃えるフロアに設置し、DTM(Desktop Music)との連携を訴求している。Mac・DTMコーナーの井野木拓登スタッフは、「Macに付属する音楽制作ソフト『GarageBand』で音楽をつくる人は多く、DTMのユーザーは確実に増えている」と語る。売り場で人気があるのは、ボーズの2chスピーカー「Companion2 Series II multimedia speaker system」だ。オーディオ機器メーカーとしてのブランドと、1万円台という同社製品のなかでも手頃な価格が好評だという。

 今、PC用スピーカー市場で目立つのは、価格の二極化だ。例えば、12月の「BCNランキング」でPC周辺機器メーカー製品の税別平均単価をみると、エレコムが1500円程度、サンワサプライは2300円程度だ。一方、オーディオメーカーのオンキヨーは、専門性を生かした単価の高い製品をラインアップしていることから1万3000円程度。市場全体の平均単価3900円の3倍近くになる。ボーズもまた、オンキヨーと同じ価格帯で提供している。価格帯の広がりによって、ユーザーは用途に応じて製品を選択できる環境にある。

ビックカメラ池袋本館パソコン館のPC用スピーカー売り場

2011年は薄型テレビに期待
ワイヤレスのメリットも

 家電量販店の店頭では、最近の傾向として、PC用スピーカーを薄型テレビとつないで使う需要が高まってきているという。ビックカメラの井野木スタッフは「今年に入ってから、たくさんのお客様から『薄型テレビとつなぎたい』という相談を受けた。最新のPC用スピーカーは、音声のデジタル伝送ができる光デジタル音声端子を備えているものが多くなっていることが理由だ」という。 薄型テレビにつなぐスピーカーといえばサラウンドシステムが定番だが、価格が高く、おいそれとは手が出せない。そこで安いPC用スピーカーで、手軽に高音質を手に入れようというわけだ。井野木スタッフは「11年は薄型テレビとの組み合わせで、PC用スピーカー市場は好調を維持する」と期待する。

 一方、メーカーのオンキヨーは、「スマートフォンやスレートなど、モバイル端末が後押しして、PC用スピーカー市場は堅調に推移する」(砂長取締役)と予測し、利用シーンの拡大をビジネスチャンスと捉える。このジャンルに向けた製品として、主にモバイル端末とつなぐことを想定したワイヤレスモデルを、11年春から初夏にかけて発売する予定だ。スピーカーにケーブルがなく、部屋の好きな場所に置いて音楽が楽しめる。「オーディオ機器の悩みの種となっていた、ケーブルの取り回しの問題を解決してくれる」と砂長取締役はワイヤレスのメリットを強調する。

 現在、PC用スピーカーのワイヤレスモデルはあるにはあるが、市場での構成比は販売台数で2.7%、販売金額で6.8%と、存在感はまだまだ。オンキヨーは用途提案に力を入れ、新ジャンルとして育てていく方針だ。

 薄型テレビのほか、多彩なモバイル端末の登場で、PC以外の接続機器が広がる――PC用スピーカーの好調は続きそうだ。(井上真希子)
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