デジタルトレンド“今読み先読み”

<家電量販店の集客戦略>女性客獲得に挑む家電量販店 発想の転換がカギを握る

2011/02/03 18:44

週刊BCN 2011年01月31日vol.1368掲載

 これまでどちらかといえば男性客が中心だった家電量販店が、女性客の獲得に力を入れ始めている。ファッションや雑貨と違い、家電量販店にふらりと立ち寄ってウインドーショッピングを楽しむ……という女性は少ない。では、どのような方法で女性客を取り込むのか。ビックカメラとラオックスの取り組みを取材した。

ビックカメラがオープンした写真専門店「BIC PHOTO」。
若い女性が好む雑貨屋のような雰囲気だ

従来の店のイメージを払拭
プリント後の楽しみ方を提案

 昨年12月18日、ビックカメラが、東京・池袋に写真専門店「BIC PHOTO」をオープンした。これまで展開してきた大型店とはまったく異なる20坪程度の小さな店舗だ。若い女性が好む雑貨屋のようなつくりで、ワンフロアに、DPEやフォトブックの受付のほか、デザイン性の高いカメラストラップやケース、フォトフレームなどを展開している。店内を見渡しても、そこにビックカメラのイメージはない。久保智義DPE事業部事業部長は、「新しいお客様、とくに女性を呼び込むために、あえてビックカメラと気づかれないつくりにした。家電量販店のイメージを払拭しなければ意味がない」と、店づくりのコンセプトを語る。

ビックカメラ
久保智義
DPE事業部事業部長
 久保事業部長の狙い通り、「BIC PHOTO」には女性が次々と訪れる。オープン1か月で、来店者数は予想の2倍。さらに、「BIC PHOTO」での購入をきっかけにビックカメラのポイントカードをつくる人が、お客様全体の8割程度もいるという。久保事業部長は、「これまで来店していただけなかった方々を取り込んでいる」と、手応えを感じている様子だ。

 久保事業部長は、「DPE主体の店舗にするつもりはなかった」という。デジタルカメラが普及し、DPEショップが減少しているなかで、集客は見込めないとみていたからだ。その一方で、フィルム時代と比べて、カメラのショット数は圧倒的に増えている。「プリントしてみよう、という需要はあると見込んでいた。ただしその需要を獲得するためには、プリントするお客を待つ『DPEショップ』ではなく、プリントした後の楽しみ方を提案する商品を揃えることが必要だと考えた」。そして、全商品の約6割をこの店のために新たに仕入れ、プリントした写真を貼るデザイン性の高いフレームや台紙、アルバム、装飾グッズなどを豊富に取り揃えて、「自分好みに飾ってください」と提案した。これまでのビックカメラではなく、DPEショップでもない新しい店舗は、好調なスタートを切った。

百貨店と調和する店づくり
美容家電売り場で差異化

 昨年11月20日にオープンしたラオックス銀座松坂屋店。銀座の老舗百貨店への出店は、松坂屋に来店する日本人のお客様を足がかりにしながら、女性客の獲得を狙ったものだ。

ラオックス
銀座松坂屋店
浅野悦崇副店長
 店舗デザインは、白を基調にした明るい雰囲気。また、通路をゆったりと確保し、上品な印象を演出するとともに、家電量販店の無機質なイメージをなくすことで“買い心地のよさ”を追求している。「女性は、目的がないと家電量販店に来ない。心理的な壁を低くして、来店してもらえるようにしたい」(浅野悦崇副店長)という取り組みだ。

 最も力を入れている商品は、美容家電。6階のラオックスフロアのなかの一等地を確保した。ドレッサーや椅子を置き、美容器やドライヤーの体験コーナーを設置している。家電量販店で取り扱っているのはここだけという人気の洗顔器「クラリソニックmia」を販売するなど、品揃えにも自信がある。さらに、ファッションアドバイザーの植松晃士さんが選んだ商品を集めたコーナーを設置することで、それぞれの売り場に足を運ばないお客様にもアプローチしている。

 女性をターゲットに据えた心地よい店舗空間や、体験コーナーなどのサービスで来店者の満足度を高めて購買につなげる作戦は「店の売り上げの上位は美容家電。顧客は女性が中心」と浅野副店長がいうように、狙いどおりの成果をもたらしている。

 ビックカメラの「BIC PHOTO」は、家電量販店のイメージを払拭し、提案型の店づくりが奏功して、新たな顧客を獲得している。そして、ラオックス銀座松坂屋店も、家電量販店カラーを極力出さずに、百貨店と調和する店舗空間をつくることで成功している。女性客獲得のカギを握る売り場づくりは、これまでの発想を転換することから始まるようだ。(田沢理恵)

白を基調にした明るい雰囲気のラオックス銀座松坂屋店。美容家電の体験コーナーが、松坂屋に来店する女性客の心を掴む
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