時の人

<インタビュー・時の人>シャープ ネットワークサービス事業推進本部 副本部長 兼 メディアタブレット事業推進センター所長 新井優司

2011/01/27 18:44

週刊BCN 2011年01月24日vol.1367掲載

 2010年12月10日、シャープは「メディアタブレット」と名付けたスレート型の電子書籍端末「GALAPAGOS」を発売した。発売から1か月の段階では、ビジネスマンのユーザーが多いが、今後は幅広い層の獲得を目指すという。デジタル時代の新たな読書スタイルを提供する「GALAPAGOS」が目指すものは何か。新井優司ネットワークサービス事業推進本部副本部長に聞いた。(取材・文/田沢理恵)

コンテンツ拡充でユーザー獲得
「やっぱり便利」な存在を目指す

Q. 発売から1か月。販売状況は?

A.
 これまで大きな宣伝はしていないのだが、スタートは好調だ。「書籍」の人気は根強いということを実感した。ユーザーはITリテラシーが高いイノベータが中心。コンテンツはビジネス向けの新聞や雑誌などが中心ということもあって、今のところ40~50代の男性がほとんどだ。


Q. これからどのようにユーザーを獲得していくのか。

A.
 ターゲットは、若者から年配者までと幅広い。「GALAPAGOS」では具体的に何ができるのか、というポイントを明確にするために、幅広い層が親しんでいる書籍を軸に展開している。しかし、書籍だけでは時代のニーズに対応できない。次の段階は、カラー液晶で雑誌や動画コンテンツが楽しめることを生かして、一般誌や女性誌などコンテンツの幅を広げていくことで、アーリーアダプタや女性を獲得していく。今後開始する予定の動画サービスによって、若年層の獲得も狙う。

Q. 店頭は実機の展示だけだが、購入して、持ち帰ってすぐに使いたいというニーズもあるようだが……。

A.
 「GALAPAGOS」は、ユーザー個人の嗜好に合わせてコンテンツをお勧めしたり、サービスを提供するのが特徴だ。使い始めてからも、サービスや端末のアップグレードで“進化”していくので、他の商品に比べると、より手厚いサポートをしていく必要がある。そのため、販売の段階からユーザーとダイレクトにつながりたいと考えた。コンテンツ提供側のサーバーや、ユーザーの端末のトラブルがあった場合も、スピーディな対応ができる。しかし、確かに「申し込み手続きに手間がかかる」とか「店で受け取りたい」といった声も届いているので、改善を検討したい。

Q. 電子書籍への関心は、iPadの登場をきっかけに一気に高まった。iPadとの大きな違いは何か。

A.
 「GALAPAGOS」の強みは、書籍を軸とした操作性にある。例えば書籍フォーマットは、シャープが10年ほど前から取り組んできたXMDFで、これは日本語特有の縦書きやルビなどの表現などに強みがある。iPadは、どちらかといえばアプリケーションを自分で選んで活用する点が魅力だろう。「GALAPAGOS」は、設定した時間帯に新聞が自動で届く仕組みや、ユーザーに合ったコンテンツをお勧めするというプッシュ型のアプローチが特徴だ。

Q. 業界では、「GALAPAGOS」を含めた新端末が、テレビの次に来る商材の一つとして期待されている。

A.
 ダイレクト販売という手法に対して販売店さんの理解を得られたのも、これからのIT商品が購入後にサービスやサポートが必要な製品になっていくことが想定されるから。「GALAPAGOS」は、テレビのほか、電子レンジやエアコンとつながっていく可能性がある。「一つ持っていると、やっぱり便利」という存在になることを目指したい。

・Turning Point

 1995年のPHSサービスインに向けた取り組みが転機。シャープ製の製品をキャリアから提供するというビジネスモデルだった。

 シャープブランドがつかない商品を提供するということは、ある意味、デバイス事業に近い。商品事業として、当時は異質のビジネスだったが、新井副本部長にとっては新鮮に映ったという。それまで音響システムなどの技術職として、エンドユーザーのことを考えた製品を作ってきた氏にとって、キャリアのメリットも考えて商品を作るという新しいビジネスを学ぶきっかけとなった。その製品は小型・軽量で話題を呼び、大ヒットとなった。
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