デジタルトレンド“今読み先読み”

相次いで登場するスレート端末 薄型テレビとの連携で新しい世界へ

2011/01/27 16:51

週刊BCN 2011年01月24日vol.1367掲載

 2010年5月に登場したiPadは、またたく間に市場を席巻した。iPad追撃を狙ったメーカー各社は、昨年秋から続々とタッチパネル式のスレート端末を発表・発売している。今年はその動きがさらに加速し、消費者のデジタル生活を大きく変えそうだ。また、昨年末には、通信事業者が続々とスマートフォンの新製品を発売。これもいまや携帯電話の枠を超え、持ち運べる情報端末として消費者の支持を得つつある。そして2011年、スレートやスマートフォンは、メールのやり取りやウェブの閲覧だけでなく、テレビと連携する。

「CES」で各社が披露 クラウドサービスの発表も

 1月6~9日、米国ラスベガスで開催されたコンシューマエレクトロニクスの世界最大の展示会「2011 International CES」。今回のCESでは、テレビメーカーによるタブレット型スマート端末の発表が目立ったほか、薄型テレビとつながることを訴えるメーカーが多かった。

 パナソニックは、CES開幕前日に記者会見を開催し、「スマート端末」と銘打った「ビエラ・タブレット」を披露した。これは、インターネットで映像視聴や電子書籍、SNSなどが楽しめるほか、同社のテレビ「VIERA」のタッチパネルリモコンとして使える点が売りになっている。パナソニック・ノースアメリカの北島嗣郎パナソニック・コンシューマー・エレクトロニクス・カンパニー社長は、「あえて『リモコン』と表現したのは、ビエラ・タブレットが違和感なく直観的な操作ができると、多くの人に意識してもらうため」と理由を語った。

 CES開幕初日の基調講演に登場した韓国サムスン電子は、薄型テレビのコンセプト「スマートTV」をアピール。尹富根映像ディスプレイ事業部長は、「スマートTVは、単なるテレビの機能強化ではなく、PCの延長でもない」と説明し、「コンテンツの共有など、多くのサービスを受けることができ、生活に欠かせない機器になる」として、スマートTVをハブにスマートフォンやタブレット端末がつながることを話していた。

 ほかにも、東芝やシャープなどが会見を開き、東芝が次世代Android搭載のタブレット端末を披露したほか、シャープがすでに市場投入している「GALAPAGOS」をベースとした電子書籍のクラウドサービスを開始することを発表した。

各社が発表・販売しているスレート端末
(左上がパナソニックの「ビエラ・タブレット」、右上がシャープの「GALAPAGOS」)、
左下が東芝のAndroid搭載端末

アプリの拡充でスレートが家電のコントロールタワーに

 スレート端末と薄型テレビがつながるようになれば、テレビで視聴していた映像コンテンツをスレート端末に表示することや、スレート端末に保存している画像やデータをリアルタイムにテレビへと映し出すことが可能となる。ユーザーにとっては、いつでもどこでも、映像コンテンツを楽しめるのは魅力的だ。売る側の家電量販店にとっては、商品個々の販売ではなく、薄型テレビとスマート端末の組み合わせで売れる点でメリットがある。しかし、この製品の可能性は、こんな小さなものではない。


テレビで複数のアプリを利用できることアピールするメーカーが多かった
(左からサムスン電子、パナソニック、シャープ)
 今回のCESで、スレート端末と薄型テレビの連携強化を発表した各社に共通していたのは、映像コンテンツ配信を含めた「アプリケーション」に重点を置いていたこと。ブースでは、薄型テレビにYahoo!やGoogle、Facebookなどのウェブサービスをはじめ、ケーブル事業者とアライアンスを組んでデジタル放送を流していた。

 サムスン電子の尹映像ディスプレイ事業部長は、「スマートTVの普及に向け、アプリケーションベンダーとパートナーシップを深めることが重要になる」と語り、またパナソニックは、「VIERA」と「ビエラ・タブレット」を支えるサービスとして、オンラインショッピングやゲームなどのアプリを配信する「VIERA Connect」を発表している。

 そして近い将来、アプリを利用し、ウェブを介することによって、スレート端末はテレビだけでなく、デジタル家電・生活家電とつながっていく。スレート端末が、家の中のデジタル機器のコントロールタワーになり、外出先からでも、自在に操ることができるようになるわけだ。各社のアプリ拡充はこれからの取り組みとなるが、新しい「デジタル機器がつながる生活」が創造されることは間違いない。(佐相彰彦)
  • 1

関連記事

iPadを追う国内勢が始動 “コンテンツ待ち”のスレート市場

2011年、売れるデジタル機器は? 購入意欲を刺激するキーワードが目白押し