時の人

<インタビュー・時の人>ヤマハエレクトロニクスマーケティング 代表取締役社長 安藤貞敏

2010/12/22 18:44

週刊BCN 2010年12月20日vol.1363掲載

 薄型テレビと組み合わせるサラウンドシステムは、2010年10月、家電エコポイント制度改定の影響で、前年同月比の販売台数で166.9%、販売金額で151.1%という好調ぶりだった。11月には販売金額で164.8%と、過去2年間の最高値を記録。しかしメーカー各社は、すでに来年4月以降の“ポストエコポイント”をにらみ、次の施策を打っている。ヤマハエレクトロニクスマーケティングの安藤貞敏社長に聞いた。(取材・文/井上真希子)

サラウンドシステムの標準ブランドに
“ポストエコポイント”は外付けタイプに需要

Q. 家電エコポイント制度改定を前に、薄型テレビの駆け込み需要があった。この影響で、サラウンドシステム市場は非常に好調だったが…。

A.
 確かに、エコポイントは、薄型テレビと一緒に買うことが多いサラウンドシステム市場に成長をもたらした。しかし、販売店は「いかにテレビを買ってもらうか」に意識が向いていて、サラウンドシステムについては、製品を一つひとつじっくりと説明できる状況ではなかった。エコポイント特需は販売の押し上げに一定の効果はあったものの、期待よりも若干低い結果となった。音響機器メーカーとしては、やはりお客様には製品のよさを十分に知ったうえで購入してもらいたい。


Q. 2011年7月のテレビの地デジ完全移行までは、引き続き拡大が見込めると思うが、主力製品は?

A.
 薄型テレビの買い替え需要で期待できるのは、テレビ台を兼用できるラック型だ。当社は、11年に向けてラインアップを強化しているのに加え、カラーバリエーションで、一般的なブラックだけでなく、ホワイトやアーバンブラウンなど、リビングのインテリアに合わせられるよう配慮している。性能面では、家庭用ゲーム機などのAV機器との接続や、壁に沿って置くときの設置のしやすさなど、細部まで工夫を凝らした。この点が他社とは異なる強みだと自負している。

Q. 今後、トレンドはどのように変化していくのか。

A.
 ラック型は、薄型テレビと同時に購入するユーザーがほとんどだ。テレビの需要が落ち着いたら、市場での構成比は小さくなるだろう。今後は、独自技術を投入した「YSPシリーズ」のバー型「YSP-2200」など、薄型テレビを購入した後で追加しやすい外付けタイプのシステムが伸びるとみている。これまではユーザーが自宅でサラウンド環境を構築するには、オーディオに関する専門的な知識が必要で、ハードルが高かった。しかし外付けタイプなら、初心者でも本格的なサラウンド環境を簡単に構築できる。当社はこのタイプを「ポストエコポイント製品」として位置づけている。

Q. ヤマハがこれからのサラウンドシステムで目指すものは何か。

A.
 薄型テレビ向けオーディオ機器の「標準ブランド」になりたいと思っている。ヤマハは、「どうしたら本格的なサラウンドをユーザーに楽しんでもらえるか」を常に追求し、製品を作っている。テレビがデジタルになり、大画面・高画質になったことで、ユーザーの映像環境は整ってきた。それに高品位な音を加えれば、リビングは立派なホームシアターになる。売り場での製品展示だけでなく、ユーザーに実際に音を聴いてもらえる機会を販売店と一緒につくり、製品の魅力を伝えていきたい。

・Turning Point

 ヤマハでAV機器の国内販売を担当していた26歳のとき、社内の語学研修に応募してドイツに行く機会を得た。1年間の滞在で視野が広がり、その後のビジネスに役立てることができた。仕事で駐在員として渡航すると、日本人の駐在員コミュニティで、どうしても日本人同士で集まってしまいがち。しかし、語学研修ではそうした場がなく、一個人としてドイツの文化や人と率直に向き合うことができた。帰国後は、海外向けの商品企画の際に「ドイツ人なら、ヨーロッパ人なら、こうした製品を好むはず」とイメージが湧き、経験を生かすことができた。
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