デジタルトレンド“今読み先読み”
<家電エコポイント>エコポイント半減の影響大 “先食い”の家電量販店に激震
2010/12/22 16:51
週刊BCN 2010年12月20日vol.1363掲載
過去最高の伸び率
量販店が潤った11月
家電エコポイント制度改正前の11月。ポイント付与の対象となる薄型テレビを購入しようと多くの人が家電量販店に駆けつけた。「BCNランキング」では、今年11月の薄型テレビは、販売台数で前年同月比505.3%、販売金額で381.6%を記録した。この数値は、前回の家電エコポイント制度改正の3月を大幅に上回る。3月の台数と金額を100とすると、11月は台数で197.1、金額で188.3と、3月の2倍弱に膨れ上がった。年末商戦本番を迎える12月を前にして、家電量販店の多くが潤った格好だ。 ケーズデンキホールディングスは、11月18日、千葉県習志野市に「ケーズデンキ新習志野店」をオープンした。立ち上がりは順調で、チラシ掲載の目玉商品はもとより、「エコポイント半減を前に、薄型テレビの購入者が非常に多かった。新店舗のオープン時に、ここまで薄型テレビが売れた例はない」(鈴木正己店長)という。
11月5日にオープンしたヨドバシカメラの「マルチメディア京都」は、関西地区では大阪の「マルチメディア梅田」に次ぐ大型店舗。JR京都駅に直結しているという利便性から、出張ついでに立ち寄る会社員の姿も多い。ここも、地元住民を中心に、薄型テレビなどの省エネ家電特需が起きた。
ピーシーデポコーポレーションは、これまで販売してきたオリジナルブランドの薄型テレビに加え、今年から大型店で国内大手メーカー製品の取り扱いを始めた。「薄型テレビの販売は、既存顧客の確保に加え、新規顧客の獲得につながっている」(野島隆久社長)と、集客に貢献。11月の販売も引き続き順調に推移したという。
需要増が一気に反転
新たな商材探しに躍起
家電エコポイント半減前による駆け込み需要は、環境省が発表した数字からもわかる。今年10月末の時点のエコポイントの累積発行数は2357万7000件で、3534億8000万点。10月だけをみると、件数が約250万件、点数が約340億点となっている。点数の内訳はテレビが約236億点で、今年の3月、2月に次ぐ3番目の数値だ。冷蔵庫は約40億点、エアコンは約63億点と、ともに過去最高だった。11月の数値は、12月10日現在、まだ公表されていないものの、「10月を上回る数値を記録する」(環境省担当者)という。
テレビは、年間を通じて家電量販店の売れ筋商材の一つだが、11月には過去に例のない大きな伸びをみせ、冷蔵庫やエアコンも順調だった。家電量販店にとっての11月は、省エネ家電を中心とするひと足早い年末商戦、いわば“先食い”だったことになる。
では、エコポイント改正で需要減が予想される12月は、実際にどのような状況になっているのか。BCNランキングの12月1~11日の薄型テレビの販売は、前年同期(09年12月2~12日)と比べて台数で48.9%、金額で34.9%と大幅に減少している。家電量販店でも、「12月に入ってから厳しい状況が続いている」との声が多い。「薄型テレビの販売不振は予想していたが、では何を売ればいいのか」と漏らす店さえある。
年末商戦本番の12月に大きなダメージを受けている店頭市場。家電エコポイント制度自体、11月に多くの需要があったことで、予定の2011年3月の前に打ち切りとの見方も出ている。
この逆風のなか、家電量販店は“ポストエコポイント”の商材探しに躍起だ。今、量販店の多くが力を入れているのは、各キャリアの製品が出揃ったスマートフォンや、薄型テレビの周辺機器であるサラウンドシステム、PCなど。11年4月以降は、7月の地上デジタル放送完全移行など、再び店頭が盛り上がる可能性はある。しかし、その後の“ポスト地デジ”となると、店頭での抜本的な対策はみえてこない。市場環境に応じた新製品の投入など、メーカーによるテコ入れが必要だろう。(佐相彰彦)
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