時の人

<インタビュー・時の人>三洋電機 執行役員 三洋電機コンシューマエレクトロニクス 代表取締役社長 大庭功

2010/12/09 18:44

週刊BCN 2010年12月06日vol.1361掲載

 PND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)のなかで高い知名度を誇る三洋電機の「Gorilla(ゴリラ)」ブランド。しかし三洋電機は、「Gorilla」を単なるPND製品とは考えていない。メディアのブロードバンド化や、コンテンツのデジタルデータ化を踏まえて、新しい用途提案に取り組んでいる。三洋電機コンシューマエレクトロニクスの大庭功社長に、PNDの可能性を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

PNDの新しい用途の提案を
量販店で需要の掘り起こし

Q. 「Gorilla」シリーズの販売状況から聞きたい。

A.
 順調だ。今年度前半を振り返ると、ETC(電子料金収受)車載器の利用による高速道路料金の割引で、ゴールデンウィークなど大型連休にクルマで移動する人が増えたことが、PND需要を押し上げる要因になった。外部環境としては、もう一つ、エコカー減税・エコカー補助金も、新車販売の増加とともに、PND需要の底上げにつながっている。


Q. 製品面で需要増に貢献した要因は?

A.
 まずはSSD(フラッシュメモリドライブ)化だ。ドライブをSSDにしたことで、きょう体をコンパクトにでき、低価格化を追求することができた。これで購入者のすそ野が広がった。搭載SSDの容量は、4GBから8GBへと大容量化が進み、今では16GBまで拡大している。地図や検索データなどが充実してきたことが、買い替えを促している。

Q. ということは、年末商戦にも期待が高まる、と。

A.
 前年同期に比べ、10%弱の増加は間違いない。

Q. PNDビジネスを拡大していくうえでの課題は?

A.
 PNDの用途をいかに提案するかということだ。PNDは、クルマに積んで使うことが多い。ただ、それだけを訴求したのでは、クルマを所有し、しかも運転する人だけにしか買っていただけない。そこで、クルマ以外のシーンでも活用できることを訴えていく。

Q. 具体的には?

A.
 PNDは、地図情報が充実していることと、持ち運べることが売りだ。そこで、ドライブの際に地図情報を利用するだけでなく、街を歩く時のPNDの地図情報の利便性を、運転する機会が多い男性、しかもスマートフォンを持っていない層にアピールしていきたい。また、地上デジタル放送に対応しているので、持ち運びに便利なテレビとしても使えることを訴えていく。さらに、地図情報に付加価値をもたせる取り組みも行っている。例えば、主婦が近くのスーパーの特売情報など、地域の情報を家事をしながらでも収集できるような用途を考えている。

Q. PNDの用途拡大は、現状でも実現できるのか。

A.
 アプリケーションを拡充することで実現できる。街歩きに関連するアプリケーションは、近く公開する予定だ。地域情報については、商店街との連携などを念頭に入れて、引き続き検討していく。

Q. 販売での課題は。

A.
 家電量販店経由の販売で、さらに需要を掘り起こす策を講じていきたい。そのためには、販売店とのパートナーシップを深めなければならない。当社側から提案をもちかけることが重要と考えている。

・Turning Point

 「昨年4月、当社に来たこと自体が大きな転機」という。これまで営業畑を歩んできた氏には、開発・製造のマネジメントノウハウがなかった。しかし、三洋電機コンシューマエレクトロニクスは開発・製造・営業が一体となった企業。「開発と製造の考えを吸収しながらの営業ができるようになった」。

 全体を見る目が備わり、今年7月、社長に就任した際には、「製造と開発、営業のそれぞれの立場を生かした経営」を追求。采配を振るう立場で、製造と開発、営業の三位一体で事業拡大に取り組む仕組みづくりに力を注いでいる。全体最適化に向け、バランスのとれた体制整備に余念がない。
  • 1

関連記事

三洋電機 ポータブルナビを高性能化 高価格帯商品へのシフトを図る