デジタルトレンド“今読み先読み”

iPadを追う国内勢が始動 “コンテンツ待ち”のスレート市場

2010/12/09 18:44

週刊BCN 2010年12月06日vol.1361掲載

 iPad人気で一気に立ち上がった感のある「スレート」市場。6月の「BCNランキング」では、PC全体の10%に達する勢いをみせた。PCメーカーや携帯キャリアはこの状況を受けて、スレートや電子書籍端末などを相次いで発表。ハードだけでなく、コンテンツビジネスに参入する企業も現れている。現在は、一時のiPad人気は落ち着き、10月まではほぼiPad一色だったBCNランキングのスレートは、PCのなかでの構成比を落としつつある。しかし、11月にマウスコンピューターとオンキヨーが、国内メーカーの先陣を切って製品を投入。販売店は、年末から来春にかけて出揃ってくる第二陣にも期待をかけながらも、様子見の段階にある。

PCで獲得できなかった層を
用途提案で獲得

 5月28日発売のiPadは、スレートと呼ばれるPCの新ジャンルを創造した。シャープは7月、いち早く電子書籍端末で年内の参入を表明し、9月27日には「GALAPAGOS」として展開する方針を明らかにした。また、9月10日にマウスコンピューターが10型のAndroid端末を、9月28日にはオンキヨーがWindows 7搭載端末3機種で参入を表明。さらにNTTドコモは、7型液晶とAndroidを搭載したサムスン製スマートフォンを発表した。シャープを除き、これらは11月から売り場に並び始めている。

 iPad発売直後の6月に、PC全体に占める割合が10%に達したスレートは、10月には5.8%に低下。iPadに関しては、店頭市場での一服感は否めない状況だ。販売店では、「まだ市場動向を観察している状況」(小川正敬・ユニットコム PCショップ統括部マネージャー兼秋葉原地区統括マネージャー)という。


 ビックカメラ有楽町店本館では、スレートを“指で簡単に操作できるインターネット端末”として訴求している。しかし、Windowsコーナーの立切達也主任は、「PCとは異なるスレートならではの楽しみ方を伝えないと、普及は難しい」と危惧する。

 その一方で、ノートPCよりも軽量・薄型、そしてスマートフォンよりも大きな画面で見やすいスレートは、インターネット端末として、そして電子書籍端末、画像・映像ビューワー、ポータブルナビなど、一台何役もこなすデバイスとしての可能性をもっている。立切主任は、「年配者や子どもなど、PCで取りこぼしていた層を確保できる」との期待も示す。しかし、まだ各社が参入し始めた段階で、アプリケーションが揃っていない状況だ。


先行組は法人需要を開拓
個人はコンテンツがカギに

 いち早く参入したマウスコンピューターやオンキヨーの狙いは何か。11月4日にAndroid2.2搭載モデルを発売したマウスコンピューターは、発売初日に直販の初回入荷分を完売した。予想を大きく上回る売れ行きに、藤川真人法人営業統括部マーケティンググループ主任は、「タブレット(スレート)、Androidというキーワードへの期待が高い」と手応えを語る。しかしグーグルのスマートフォン向けアプリサービス「Androidマーケット」には対応していないなど、対応アプリが少ないことなどから、現段階で一般ユーザーに訴求するのは難しい。5型や7型、Windows 7搭載機などの製品化も視野に入れ、製品展開を図っていく方針だが、一般ユーザーをメインターゲットとしたときには、対応アプリの拡大がカギとなる。それでも、3万9800円という価格や、Flashに対応していることなどは、iPadにはない強み。SIerからの評価が高いことなどから、まずは法人需要の開拓を強化する。

マウスコンピューター
藤川真人 主任

 Windows 7搭載モデルで先陣を切ったオンキヨーも、法人需要が足がかりだ。同社は、「1機種では本気度が示せない」(菅正雄PCカンパニー社長)と、計3機種を発売。法人・個人市場とも、「『スレートといえばオンキヨー』というポジションを確立する。これに賭ける」(菅PCカンパニー社長)という信念で臨む。Android端末も、年末年始をめどに投入する。


オンキヨー
菅正雄 PCカンパニー社長
 スレートにライバルは多い。電子書籍端末として捉えたときには専用端末が、ネット端末としてとらえたときにはモバイルPCやスマートフォンが立ちはだかる。そして、これらのライバルにとっても、カギを握るのはコンテンツだ。

 メーカーも販売店も、スレートの一般ユーザー向けの訴求は、コンテンツが揃うまで様子見の段階にある。しかし、コンテンツが充実してくれば、具体的な用途提案ができる。スレートは、タッチパネルという手軽な操作性を生かし、先進的なユーザーだけでなく、これまでPC操作を苦手としていたシニア層などを掘り起こすだろう。PCやスマートフォンにはない魅力を明確に打ち出せば、需要は喚起できるはずだ。(田沢理恵、井上真希子、武井美野里)
  • 1