時の人
<インタビュー・時の人>Dolby Japan 代表取締役社長 漆山正幸
2010/11/18 16:51
週刊BCN 2010年11月15日vol.1358掲載
Dolby技術の領域を広げる
デジタル化とともに「高音質」が浸透
Q. 日本支社から日本法人になって3年。業績は?A. 好調に推移している。ワールドワイドでは、今年4~6月に前年同期比35%増を果たした。日本も、ワールドワイドと同様に伸びている。当社の技術が多くの製品で使われるようになったからだ。
Q. どのような製品で使われているのか。
A. 一つはテレビだ。地上デジタル放送への移行に伴って、テレビのユーザーは番組をより高画質・高音質で視聴したいと考えている。そこで、薄型テレビに当社の技術を搭載するメーカーが出てきている。二つ目はパソコンだ。OSの「Windows7」は、迫力のあるサウンドが聴ける「Dolby Digital」などを搭載している。Windows7搭載のパソコンの販売が順調なのは、当社の業績にも好影響を与えている。三つ目はBD(ブルーレイディスク)。プレーヤーやレコーダー、メディアを開発するメーカーが、フルハイビジョン映像にふさわしい高音質を実現する「Dolby TrueHD」などの技術を採用している。デジタル製品で音質追求の動きが出ていることから、順調に推移した。
Q. 通期見通しも期待できそうか。
A. さすがに30%台の増加を維持するとは断言できないが、前年度比で10%の後半から20%の前半で伸びることは期待できる。
Q. 今後、力を入れる製品分野は?
A. 携帯電話とオンラインのデジタルコンテンツ分野で当社の技術を採用してもらえるよう、力を注いでいる。
Q. 具体的に実施したことは?
A. 携帯電話に関しては、すでにシャープと富士通から搭載製品が発売されており、外出先でも音楽を高音質で、気軽に聴く文化の浸透に取り組んでいる。その一環として、今年10月に家電量販店で、NTTドコモと共同で「Dolby Mobile」のよさをアピールする体験キャンペーンを実施した。このキャンペーンには、延べ1800人という多くの人に参加していただき、効果があったと確信している。
Q. デジタルコンテンツ分野の進捗具合はどうか。
A. 現在、サービスを提供する事業者、コンテンツを開発するベンダーなどに話をもちかけている。ただ、課題もある。コンテンツ制作のコストだ。デジタルコンテンツになって、多くの視聴者は安価にコンテンツが楽しめると認識している。そこで音質にこだわったためにサービス料金が高くなってしまっては、本末転倒だという見方が根強くある。つまり、音に関してはコンテンツ側ではなく、端末側で追求すればといいという考えなのだ。本来は、コンテンツと端末の両方で追求すれば、素晴らしい音を実現することができる。コンテンツに関しては、当社の技術を採用してもらうのに少し時間がかかるかもしれないが、引き続き力を入れていきたい。
「パートナーであるハードメーカーなどの手間を軽減したことで、今の当社がある」と自信をみせるのには、わけがある。社長就任当時、Dolby技術を搭載する製品に関して、その製品自体を米国本社で検証、認定してからでなければ、ハードメーカーは搭載製品を発売できないことになっていた。しかし、ここは日本だ。「当社の検証や認定が遅れることで、パートナーが予定通り製品を出せないのは困る」と、検証や認定を日本法人で実施することを決意し、体制を整えて本社に提案。了承を取りつけた。これによって、メーカー各社は製品をいち早く市場投入できるようになった。
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