時の人

<インタビュー・時の人>キヤノンマーケティングジャパン プリンティングソリューション企画本部 インクジェットマーケティング部部長 橋本圭弘

2010/11/04 18:44

週刊BCN 2010年11月01日vol.1356掲載

 キヤノンは、2009年、年間の販売台数シェアトップのメーカーを表彰する「BCN AWARD 2010」のインクジェットプリンタ部門で1位に輝いた。しかし、インクジェットプリンタ市場は成熟期に入り、これから大きな成長を見込むのは難しい。キヤノンは今後、どんなビジネスを展開していくのか。キヤノンマーケティングジャパンの橋本圭弘部長に、インクジェットプリンタ事業の進む方向を聞いた。(取材・文/井上真希子)

自らコンテンツを提供して需要を喚起
印刷品質と操作性でユーザーを掴む

Q. インクジェットプリンタ「PIXUS(ピクサス)」が2010年で10年を迎えた。目指してきたものは何か。

A.
 プリンタのユーザーは若者から年配者まで幅広い。求めやすい価格で、使いやすい製品を追求してきた。


Q. PIXUSが、市場で高いシェアを維持している理由はどこにあるのか。

A.
 印刷品質と操作性で、常にユーザーが満足する製品を提供し続けてきたからだと思っている。いま、プリンタのユーザーは、家庭向けと企業向けというジャンルの違いだけでなく、接続する機器が多様化していることから、細分化している。PC以外にも、デジタルカメラが直接つながるようになり、最近はそれにスマートフォンが加わった。それぞれのユーザーに対して、いかにプリンタの利用シーンを提案していくかがカギになる。派手ではないが、さまざまな媒体を通じて印刷のよさを地道に伝えていく。

Q. 市場の安定成長には、ユーザーに「印刷してもらう」ことが必要だ。印刷需要を喚起する方法は。

A.
 一つには、いま述べた接続機器が多様化している環境が、印刷需要の追い風になるとみている。さまざまな端末から必要な情報が印刷できるようになり、活用シーンが増えている。もう一つが、ユーザーが「印刷したくなる」コンテンツをわれわれ自身が提供することだ。その一環として、9月9日に純正インクユーザー向けのコンテンツ提供サービス「CREATIVE PARK PREMIUM」を開始した。ここでは、著名アーティストの作品をカレンダーやカードに利用することができる。これら二つの要素を組み合わせて訴求していく。

Q. これまで取り組んできたコンテンツ提供の事例を教えてほしい。

A.
 『ポケットモンスター』は人気がある。昨年10月開設のウェブサイト「ピクサスポケモンプリントギャラリー」は、ポストカードやブロマイドなどを豊富に揃えており、テレビや雑誌に露出すると、コンテンツのダウンロードが急増する。子どものいる家庭に支持されているようだ。

Q. インクジェットプリンタ市場の見通しは。

A.
 08年、09年は経済の減退感があったが、10年は以前の勢いが戻ってきている。ただ、デフレ傾向で単価は下落気味だ。付加価値をもつ新製品の投入で単価を上げていきたい。また今後、市場に投入するプリンタの台数が減らないようにしていかなければならない。本体に加えて、インクや用紙などの消耗品で収益を上げるビジネスモデルなので、台数が減少すると消耗品需要が減り、収益に影響を与える可能性がある。販売台数は確保し、ユーザーには適切なタイミングで買い替えてもらえるよう訴求していく。年末商戦を含めた10年12月末までに、メーカー別販売台数でシェア50%獲得を目指す。

・Turning Point

 学生時代に部活動で男声合唱を始めたことは、その後の人生に大きな影響を与えた。ドイツの後期ロマン派音楽から日本の歌曲、黒人霊歌、ミュージカルなど楽曲のジャンルはさまざま。在籍中は、全日本合唱コンクールで4年連続金賞受賞という結果を残すことができた。

 部活動では、音楽だけでなく、マネジメントの面でも学ぶことが多かった。部員80人以上が在籍する団体の運営や対外交渉は、社会人になってからも生かすことができた経験となった。現在もOBで結成された合唱団で練習を重ね、年1回は開かれる演奏会に参加している。
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