デジタルトレンド“今読み先読み”
<パッケージ版PCソフト市場>パッケージ版PCソフトに未来はあるのか ダウンロード版とのシナジー発揮が活性化のカギ
2010/11/04 16:51
週刊BCN 2010年11月01日vol.1356掲載
まだまだ大きい
パッケージ版の存在感
「BCNランキング」2010年9月のPCソフトのパッケージ版販売は、販売本数・金額ともに前年を上回り、全体としては回復傾向にある。しかし、これは昨年登場した新OS、Windows 7への対応で、表計算ソフトやワープロ、統合など、ビジネスに欠かせないオフィスソフトを買い替える動きが影響している。大半のジャンルは、本数・金額ともに前年割れが続き、依然として厳しい状況だ。 市場の低迷を受けて、PCソフトメーカーは、パッケージ版より先にダウンロード版を発売するなど、オンラインでの販売に力を入れる傾向がみえる。しかし、よくよく話を聞いてみると、決して店頭でのパッケージ版販売を諦めているわけではない。
2010年9月のセキュリティソフト販売本数シェアで1位のトレンドマイクロは、家電量販店でのパッケージ版販売、直販サイトでのダウンロード販売、ECサイトでのダウンロード販売と、主に三つの販売チャネルをもっている。なかでも量販店については、「販売数量は店頭でのパッケージ版が最も多く、非常に重視している」(マーケティング本部 グローバルマーケティング統括本部の吉田健史・コンシューマ&SBマーケティンググループ部長)という。
2010年9月のセキュリティソフトのメーカー別シェアで3位の位置にあり、前年割れが著しい趣味娯楽ソフトや携帯電話ソフトで高いシェアをもつソースネクストも、「ダウンロード販売の割合は年々大きくなってはいるが、現在も6対4でパッケージ版販売の割合が大きい」(小嶋智彰・常務執行役 セールスグループ担当執行役員)としており、まだまだ実店舗でのパッケージ版販売には、大きな存在感がある。
ダウンロード版を生かして
パッケージ版の販売増を狙う
メーカーが依然としてパッケージ版販売を重視するのは、販売数だけが理由ではない。ソースネクストの小嶋常務執行役は、店頭販売のメリットを「大手家量販店での取り扱いがあるからこそ、お客様に安心して買ってもらえる。インターネットで製品の情報を得て、購入するのは店頭という人も多い」と語る。 このインターネットの効能を店舗販売に生かしているのが、トレンドマイクロだ。同社は、ダウンロード版販売を展開してはいるものの、積極的に直販サイトに誘導して買わせる施策は打っていない。「直販サイトの主な目的は、無料の体験版を配布すること」(吉田部長)として、サイトで無料体験版をダウンロードし、店頭でパッケージ版を購入するサイクルにユーザーを導いている。
ソースネクストも、ダウンロード版で店頭販売を伸ばす策を打っている。例えば、映画などを丸ごと一本収録して字幕を表示する人気の英語学習ソフト「超字幕」シリーズを、ダウンロードで先行販売。そこで人気のあったタイトルだけをパッケージ化することで、店頭販売の効率化を図っている。
量販店も、こうしたインターネットの役割を認識し、対応を講じている。ビックカメラ新宿西口店PCソフト・書籍コーナーの山根祝重主任は、「インターネットで、あらかじめ商品の情報を調べて来店されるお客さまが増えている。ただし、細かい機能などは、やはり店舗で確認して購入したいという方が多い。そこで当社では、販売スタッフがお客さまに丁寧に説明できるよう、商品知識をしっかりと身につけることに加え、実際にソフトを操作して他社製品と比較できるコーナーを設置するなど、実店舗ならではの訴求をしている」という。また、店頭でまずパッケージ版を買って、製品が気に入れば次回からダウンロード版を購入する、という流れもあるという。
PCは、今や1人1台のものになりつつある。また、スマートフォンやスレート型PCなど、今後増えていくであろう新しいデバイスでも、ソフトの需要は必ずある。しばらくは、ダウンロード販売、パッケージ販売と、どちらかだけに注力するのではなく、お互いのシナジーを高めていくことが、ソフト市場を活性化する重要なカギになりそうだ。(武井美野里、ゼンフ ミシャ)
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