デジタルトレンド“今読み先読み”
<PC市場>Windows 7発売から1年 新OSが買い替え需要を喚起
2010/10/28 16:51
週刊BCN 2010年10月25日vol.1355掲載
デスクトップに活気戻る
ノートはスタンダードが拡大
Windows 7発売後の1年で、活気を取り戻しつつあるPCの店頭市場。そのベースには、「OS自体の評判がよいことが、PCの買い替えを検討していた潜在需要を喚起した」(剣持開・ソニーマーケティングITマーケティング部MK課プロダクツGpリーダー)ということがある。とくに、昨年9月まで台数・金額ともに前年を下回って推移していたデスクトップの回復が著しい。11月に台数・金額ともにプラスに転じて以来、概ね前年を上回って推移してきている。 デスクトップ好調の理由には、地上デジタル放送が見られる“地デジPC”が根付いてきたことが挙げられる。昨年10月時点で26%強だった地デジチューナー搭載機の販売台数構成比は、今年6月に5割までに伸びた。Wnidows 7が、地デジをはじめとする映像を視聴するのに適した機能とスペックをもったことで、据置型のデスクトップPCが、マイルームのテレビ視聴スタイルとしてユーザーに受け入れられている。国内大手メーカーでは、NEC、富士通、ソニーがデスクトップ、ノートともに地デジPCを揃えてきたが、東芝がノートPCに加え、今夏にデスクトップを発売。売り場での選択肢が広がったことも、市場拡大を後押しした。
個室のテレビを置き替え
地デジPCをアピール
一方、ネットブックがけん引するかたちで、台数で成長を維持してきたノートPCは、スペックが充実するスタンダードタイプに需要がシフトした。 昨年9月に台数で3割弱を占めていたネットブックは、今年9月には1割に縮小。買い替えに加え、「メールやネットなどのほかに、もう少し高度な作業がしたいネットブックユーザーが増えてきた」(荻野孝広・東芝デジタルプロダクツ&ネットワーク社PCマーケティング部マーケティング担当グループ長)ことが、需要拡大の要因だ。台数は前年並みかやや下回るペースだが、前年割れが続いていた金額がプラスに転じ、8月、9月には2ケタ伸長を遂げている。
メーカー各社はこの勢いに乗って、年末商戦でデスクトップ、ノートの高性能モデルへの買い替え需要を喚起するとともに、地デジPCの販売拡大を目指す。東芝は、デスクトップPCの秋冬モデルを今夏の1機種から6機種に拡大して攻勢をかける。BCNランキングの年間販売台数で4年連続No.1を維持しているノートPCに加え、「今後はデスクトップPCでもトップを目指す」(荻野グループ長)という。一方、09年のデスクトップPCでNo.1を獲得したNECは、「ノートPCでもトップを獲得する」(渡邉敏博・NECパーソナルプロダクツ・PC事業本部商品企画開発本部長代理)と、火花を散らす。
富士通は、「地デジPCは、リビングの地デジ化が完了した後も、個室のテレビの置き替え需要はある程度続く」(中西猛・パーソナルマーケティング統括部コンシューマPCグループのプロジェクト部長)と見込んで、引き続き地デジPCのアピールに力を注ぐ。デスクトップPCの冬モデルでチューナー搭載を選択できるようにしたデルは、「やっと他社と同じ土俵に立つことができた」と、これからの攻勢に出る構えだ。Windows 7発売から1年で、PCでテレビを見るスタイルが、需要を喚起する大きなキーワードとなった。テレビメーカー各社がテレビで楽しむインターネットを訴求しているなかで地デジPCの販売拡大を図っていくには、その認知度をさらに高める必要がある。例えばテレビ売り場での展開など、“販売する場所”の垣根を越えたアプローチが拡販のカギを握りそうだ。(田沢理恵、佐相彰彦、武井美野里)
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