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<3Dテレビ製品戦略>3Dテレビの利用シーンを提案 「撮る3D」との組み合わせを訴求
2010/10/21 16:51
週刊BCN 2010年10月18日vol.1354掲載
CEATECで利用シーンを提案
3Dコンテンツは、今年4月、業界に先駆けてジュピターテレコム(J:COM)が、ビデオ・オン・デマンド(VOD)での配信を開始した。ただし、9月中旬時点で、無料・有料を含めたVODの3Dコンテンツは30タイトル。渡辺一正・商品戦略本部長 兼 放送事業戦略部長は、「3Dコンテンツ市場が本格化していくのは、来年あたりから。拡充には息の長い取り組みが必要だ」として、計画を明らかにしていない。
6月から3Dコンテンツの提供を開始したNTTぷららも、「3Dコンテンツを何本にしていくかは決めていない。3D対応テレビの普及状況をみて検討する」(板東浩二社長)として、積極的に取り組んでいくという方針を示しながらも、明言を避ける。
9月にはブルーレイ3Dの映画タイトルの発売が始まったが、まだまだ絶対数は不足している。こうした状況のなかで、テレビメーカー各社は、3D撮影ができるデジタルカメラやビデオカメラと連動して、3Dテレビの具体的な利用提案に力を入れている。10月5・9日に開催した電機/ITの総合見本市「CEATEC JAPAN 2010」の会場では、3D対応テレビの発売を控える三菱電機や、参考展示の日立コンシューマエレクトロニクス、裸眼で見られる「グラスレス3Dレグザ」を発表した東芝を除き、パナソニックやソニー、シャープが、自分で撮った3D写真や動画を3Dテレビで見るという具体的に利用シーンを提案する光景が目立った。「ハリウッドの3D映画を待っていても、コンテンツは拡大しない。ユーザーが自分で撮る環境をつくっていかなければ、3Dコンテンツのすそ野は広がらない」(パナソニック担当者)からだ。
パナソニックやソニーは、自社の3D対応デジタルカメラと組み合わせて展示。一方、デジタルカメラをもたないシャープは、富士フイルムの3D対応デジタルカメラ「FinePix REAL 3D」で撮影した画像を見せたり、参考出品したモバイル3Dカメラ(発売時期は未定)で撮影した3D動画を「AQUOS クアトロン 3D」で見せるデモを行った。
コンテンツ不足解消のカギは制作環境
パーソナルコンテンツで3Dを楽しむことを訴求するとともに、コンテンツを増やしていくためには、プロフェッショナルのコンテンツ制作現場が3Dに対応していく必要がある。それも大手制作会社だけでなく、中小の制作会社が3Dコンテンツを作ることができる環境にしていかなければならない。さらに大手制作会社にしても、ハイビジョンカメラに多額の投資をしたばかりで、3Dまで手が回らないというケースは少なくない。
パナソニックは、8月に220万5000円で発売した業務用の一体型二眼式3Dカメラ「AG-3DA1」が、「生産が追いつかないほどの人気」(商品説明員)となっている。8月19日の発表によれば、全世界で3000以上の法人から3500台以上の引き合いがあり、受注は800台を超えたという。2台のカメラがワンセットで1000万~2000万円していたこれまでの3D撮影機材と比べると破格の安さで、さらに、従来は1日に5シーンくらいの撮影が限界だったのに対し、100シーンもの撮影が可能になるという。「いまのところ学術や医療からの引き合いが多いが、面白いところでは、サーカスのトレーニングなどのコンテンツ制作という話もある」(商品説明員)そうだ。
3Dの制作環境が整い、中小制作会社にすそ野が拡大することが、コンテンツ不足解消の原点。あわせて一般ユーザーに自分で3Dを撮影する楽しさを伝えていくことで、3D対応テレビの普及は弾みがつくだろう。(田沢理恵/武井美野里)
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