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<3Dテレビ販売動向>拡大の兆しは“3D レディ”にあり

2010/10/14 16:51

週刊BCN 2010年10月11日vol.1353掲載

 2010年4月、日本ではパナソニックが先陣を切って発売した3D対応テレビ。6月にソニー、7月末にシャープ、そして8月下旬には東芝が対応モデルを投入。10月21日には三菱電機も参入する。メーカー各社は、年末商戦に向け、3Dを大きなトレンドとして位置づけ、上位モデルを中心にラインアップに加えてきた。はたして序盤戦はどのような展開をみせているのか、BCNランキングの実売データをもとに探った。

メーカーシェアはソニーが過半数に

「3D ビエラ」を各メーカーが続々追撃

 パナソニックが国内初の3D対応テレビ「3D ビエラ」を発表したのは今年2月。記者会見で西口史郎・デジタルAVCマーケティング本部本部長は、「映画界の3D元年は2009年だった。2010年は、3Dテレビ元年になる」と断言した。映画館で『アバター』を観た人の約8割が3Dシアターで観賞したことを引き合いに出し、3Dテレビ普及への確信を強調。実際に、国内初の家庭用3Dテレビ発売に向けて、消費者の関心も高まっていった。4月23日、家電量販店に商品が登場すると、「3D ビエラ」の体験コーナーには長蛇の列ができ、この様子を、新聞やテレビなどが大きく報じた。

 パナソニックが「3D ビエラ」を発売した頃は、当然だが、3Dのコンテンツは今以上に少なかった。3D時代を先取りして、やがて登場してくる対応コンテンツに備えて3D対応テレビを購入しておこうという人は、まだ少数派。BCNランキングでも、4月~5月の3D対応テレビの販売台数構成比は、0.1~0.2%で推移した。パナソニックも折り込み済みで、「5月までは、『VIERAの3Dは本物』という世論をつくる啓発期」(品田正弘・デジタルAVCマーケティング本部商品グループテレビチームチームリーダー)とみていた。

9月の3D対応テレビ販売は7月の倍を記録

 6月に入り、ソニーが「3D ブラビア」を投入。ここで3D対応テレビの構成比は0.8%に増加した。続いて7月には、シャープが「AQUOS クアトロン 3D」で参入。また、ソニーからは、別売の3Dシンクロトランスミッターなどを追加することで、将来、3Dに対応できる“3Dレディ”モデルの「HX900」「HX800」シリーズが登場した。

 3Dレディは、「今はまだいいけれど、将来は3Dに」というユーザーの心理を巧みに突いた商品構成で、単独で0.7%を獲得。これが寄与して、3D対応テレビ全体も1.3%に増えた。その後、東芝の投入が始まった8月は1.4%に、9月(9月1~27日)には、2.5%へと拡大した。

パナソニックが戦陣を切って発売した3Dテレビ売り場は、多くの人で賑わった
(今年4月=ビックカメラ有楽町本館)
 3D対応テレビの構成比は数%程度にとどまっているものの、各社の参入で製品数が増えたことで、販売台数は着実な伸びを示している。7月を起点とした販売台数指数をみると、9月は3D対応テレビ全体で2倍に拡大した。


3Dレディ人気で台数シェアはソニー優位

 では、3D対応テレビのメーカーシェアは、どうなっているのか。販売台数でみることにしよう。4~5月はパナソニック単独の市場だったが、6月以降はソニーが急上昇。68.6%を占め、7~8月も6~7割を維持している。

 シャープの上昇も見逃せない。7月30日の「AQUOS クアトロン 3D」発売後、8月は24.7%を獲得。一気にパナソニックを抜いた。9月のメーカーシェアは、1位がソニーで56.3%、2位が28.8%でシャープ、3位がパナソニックで13.2%、東芝が1.8%。ソニーが過半数を占め、優位に立っている。

 ソニーのシェアが高いのはなぜか。製品別(シリーズ別/カラーバリエーション合算)の販売台数をみると、その傾向が見えてくる。3D対応テレビのなかで売れている上位2製品は、前述の3Dレディモデル「HX800」シリーズ。1~2位だけで45.5%を占めている。

 3Dコンテンツは、現状では数が少なく、まだまだ「選んで見る」段階ではない。こうした環境で、「将来、対応コンテンツが充実してきて、3Dが見たいと思ったときに対応できるよう、ユーザーの利便性を考慮した」(石田佳久・業務執行役員SVPホームエンタテインメント事業本部長)という狙いが奏功したかたちだ。東芝が8月に発売した「F1シリーズ」と、10月下旬に発売する「ZG1シリーズ」は、テレビ本体は3Dに対応するものの、「購入時点では、3Dの視聴はもう少し先にしようと考えているユーザーもいることから、3Dメガネを別売にした」(岡田淳・映像マーケティング事業部日本部部長)という。

パナソニックは、自分で3D映像が撮影できるビデオカメラを発売

CATV、ネット…立ち上がる3Dコンテンツ

 今春以降、ジュピターテレコム(J:COM)やスカパーJSAT、NTTぷららなど、CATVやネット系のプロバイダが3Dコンテンツの提供を開始したが、絶対数が不足していた感は否めない。しかし、ようやく9月中旬に、ブルーレイ3Dの映画タイトルの販売がスタート。また、パナソニックが別売の3Dコンバージョンレンズを装着して3D撮影ができるデジタルビデオカメラを発売するなど、自分で3D映像を撮影できる機器が登場してきた。

 3Dテレビの視聴については、映像酔いなどの副作用やメガネ装着による煩わしさなど課題が残っており、普及には懐疑的な見方もある。しかし、東芝が12月下旬の発売を発表した裸眼3Dテレビなど、テクノロジは課題を解決していく。そして何より、映画でも、子どもが楽しく遊んでいる様子でも、波や滝などの壮大な風景でも、動物や植物などの教材でも、何でもいい。ユーザーが3D映像で、2Dではできなかった表現や感動を体験することで、3Dの魅力や価値を発見すれば、3D対応テレビ購入への流れができてくるはずだ。(田沢理恵)
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