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セキュリティソフト4社 一段と競争激化 キーワードはクラウドとマーケティング強化
2010/09/24 16:51
週刊BCN 2010年09月20日vol.1350掲載
セキュリティ4社のなかで一番最初に発表会を開いたのは、「ノートン」を展開するシマンテックだ。新製品の「ノートン インターネットセキュリティ 2011」などのイメージキャラクターに俳優の成宮寛貴さんを起用し、テレビCMでサイバー犯罪者を演じさせている。発表会のプレス向け招待状は指名手配書をイメージしたもので、メディアの注目を集めた。
新製品の発表と同時に、サイバー犯罪で入手した個人情報の取引をテーマにした展示スペース「Black Market」を全国主要都市に開設。これらの活動によって、PCユーザーに「サイバー犯罪は恐ろしい」という認識をもってもらい、セキュリティソフトの必要性を積極的に訴えていく戦略だ。
トレンドマイクロは、ザ・リッツ・カールトン東京で、クラウド上のデータベースを参照してウイルスを検出する「ウイルスバスター2011 クラウド」を大々的に発表した。「ウイルスバスター」の2011年版は、「法人事業で培ってきたクラウド技術を初めてコンシューマ向け製品に取り入れた自信作」(吉田健史・マーケティング本部コンシューマ&SBマーケティンググループ部長)である。
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クラウド技術を利用したことで、PCへの負荷を軽減し、スペックを問わず軽く動作することを強みとしている。これを武器に、「3~4年前に購入したやや古いPCを使っているユーザーを獲得していく」(長島理恵プロダクトマネージャ)という。マーケティングもクラウド技術を前面に押し出して展開する。プロモーションキャラクターにはファッションモデルの山本美月さんを起用。ふわふわした雲(クラウド)の中で、山本さんら4人の女性が軽やかに跳ねるテレビCMで、新製品の軽快さをアピールしている。
マカフィーは、個人向けセキュリティソフトとして「マカフィー インターネットセキュリティ 2011」など3製品を投入した。リアルタイムに保護するクラウドベースのセキュリティ技術基盤を利用したり、クラウドでファイルの危険度をあらかじめ検証したりするなど、こちらもクラウド技術を訴求ポイントにしている。新製品のマーケティングでは、クラウド技術をユーザーに分かりやすく伝えるために、「難しい言葉は使わない。図を利用して特徴を伝える」(マーケティング本部の葛原卓造・プロダクトマーケティングマネージャー)とし、ビジュアルを重視する戦略を採っていく。
8月20日に発表されたインテルによる米マカフィーの買収については、「ハードとソフトを組み合わせることで、より強固なセキュリティを提供できる」(トッド・ゲブハート・エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)として、相乗効果を発揮していく意向だ。
4社のなかで最後に発表会を開催したカスペルスキーラブスジャパンは、個人向けとして「Kaspersky Internet Security 2011」などを投入した。プロモーションとして、アイドルグループ「AKB48」の研究生10名による「AKB48カスペルスキー研究所」を開設。「AKB 48カスペルスキー研究所」の特設サイトでは、10名が「研究員」となって、セキュリティ対策についてのユーザーアンケートや新製品に関する講座を開くなど、「彼女たちの目線でサイバー犯罪への対策を伝えていく」(マーケティング本部の長崎敏樹本部長)。
秋商戦や年末商戦に向け、本格的に動き出したセキュリティソフトの4社。各社が採るアグレッシブなマーケティング戦略からは、競争がますます激しさを増している構図が読み取れる。
セキュリティソフトは、機能だけでは差異化が難しい製品だ。マーケティング活動を通じて、自社製品をいかに消費者に深く印象的づけるかが、成功のカギを握っている。(ゼンフ ミシャ)
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