時の人

<インタビュー・時の人>パナソニック 商品グループ ビデオチーム チームリーダー 下元勉

2010/09/24 18:44

週刊BCN 2010年09月20日vol.1350掲載

 パナソニックは、3Dテレビ「3Dビエラ」やブルーレイ3Dディスクの再生に対応するレコーダー「ブルーレイディーガ」などを組み合わせ、3Dを存分に楽しむ視聴環境づくりを提案している。8月下旬には、民生用として世界で初めて3Dに対応するデジタルビデオカメラを発売。対応製品を強化した。下元勉・商品グループビデオチームチームリーダーに、その狙いを聞いた。(取材・文/井上真希子)

ビデオカメラで3D市場を活性化
自作映像がキラーコンテンツに

Q 民生用として初めて3Dに対応したデジタルビデオカメラを発売した。3D市場の起爆剤となるのか。

 「当社は2010年を『3D元年』と位置付け、3Dに対応するテレビやBDレコーダーを発売してきた。これらの製品で、3D映像を『見る』『残す』ことは実現した。次は、自分で映像を『撮る』ことをかなえるビデオカメラを投入することで、より広がりをもった3D映像の楽しみ方をユーザーに提供できたと感じている。


 複数の対応機器をつないで3Dを楽しむ、いわゆる『3D Link』を構築することは、メーカーとしての使命だと考えている。3Dに対応するデジタルビデオカメラ『HDC-TM750』や『HDC-TM650』を使って撮影した3D映像は、必ずキラーコンテンツとなって3D市場の活性化につながると期待している。2モデルの発売によって、2010年度末までに、販売台数シェア30%の獲得を目指す」

Q 「HDC-TM750」「HDC-TM650」の特徴とターゲットは。

 「この2モデルは、撮像素子に光の三原色RGBをそれぞれ専用のセンサで処理する3MOSを搭載した最上位機だ。2Dの高画質を存分に楽しんでもらえると自信をもっている。広告宣伝ではこの点を第一に訴求していくが、別売のコンバージョンレンズ『VW-CLT1』を装着すれば、3Dも撮影できるようになる。つまり、3Dは付加価値として提供した機能で、レンズを着脱タイプにしたのもそのためだ。

 ターゲットは従来同様、入学式や運動会など、子どもの成長記録を残したいと思っている親世代を想定している。そのほか、ビデオカメラとしての高い基本性能を備えているので、映像制作を趣味としているようなマニア層にも十分活用していただけるだろう」

Q 3Dの魅力をユーザーに伝えるために、販売店ではどのような取り組みをしているのか。

 「ビデオカメラ売り場はもちろん、テレビ売り場でも訴求していく。ビデオカメラで撮影した3D映像を見るには、3Dに対応するテレビが必要だからだ。例えば、テレビ売り場では、ボタンを押せば自分の姿を3D映像で撮影できるという展示を行っている。さらに、9月の需要期には、全国の販売店約600店舗で3D映像の体験イベントを実施する。3Dのすばらしさは、実際に自分で撮影して、映像を見ていただかないとわからない」

Q 3D対応モデル以外で、トピックスがあれば教えてほしい。

 「約185gと世界最軽量の女性向けモデル『HDC-TM35』がある。これは2009年9月に社内で立ち上げた“フェミニンプロジェクト”の成果を製品化したものだ。当時、商品企画の担当者は男性ばかりで、『男性だけで考えて、本当に女性に受け入れられる製品を作ることができるのか?』という疑問の声が上がった。そこで、社内の別の部署から女性を選抜して、新たにチームを結成。企画段階から女性の視点を取り入れた製品になっている。ターゲットは“若くてかっこいい奥さま、旦那さま”。カラーを決めるときは、30代の既婚者にアンケートを取った。

 実は、このプロジェクトは、カナル型イヤホン『MOON JEWEL(ムーンジュエル)』でスタートしたのが最初。今後は、ビデオカメラだけでなく、ほかの製品でも展開していきたいと考えている」

・思い出に残る仕事

 大阪のオーディオ事業部国内営業部時代は、CDラジカセやヘッドホンステレオなどの営業を担当。営業エリアとして大阪の電気街、日本橋地区を管轄していた。ここで学んだのが、販売店の売り場に足を運ぶことの大切さ。店員や来店客から得られる定性情報は、常に新鮮で生き生きとしていた。売り場の状況を把握することで、売り上げデータなどの定量情報を販売に生かすこともできた。「ここで培った現場から情報を掴み取る感覚は忘れないようにしたい」。
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