時の人

<インタビュー・時の人>ハイアールジャパンセールス 取締役副社長 営業本部長 篠田誠

2010/09/16 18:44

週刊BCN 2010年09月13日vol.1349掲載

 中国の大手家電メーカー、ハイアールの日本での販売を担うハイアールジャパンセールスは、2002年1月の設立。スタート時、社員数5~6人の陣容が、いまでは50人にふくらんでいる。国内大手メーカーが高級機に力を注ぐなかで、「基本機能に忠実で、安心して使える製品」であることをアピールし、着実にユーザーを獲得してきた。篠田誠・取締役副社長に、販売方針と今後の戦略を聞いた。(取材・文/田沢理恵)

日本市場に合わせた商品に自信
大手のいない隙間市場に活路

Q 日本で展開しているハイアール製品のコンセプトは。

 「ハイアールブランドのキーワードは、基本機能に忠実で安心して使えること。オーバースペックを排したシンプルな機能が売りだ。消費者の声を聞き、日本人のライフスタイルとニーズに対応した商品を作っている」


Q 日本の消費者は、品質に対して厳しい目をもっている。品質への自信は。

 「ハイアールは、常に技術革新を追い求めているメーカーだ。品質には自信がある。ワールドワイドの部材調達力によって、高級で耐久性があり、安心して使える製品を低価格で投入できる。厳しい目をもつ日本のユーザーに認めてもらいたい」

Q ハイアールジャパンセールスの役割は。

 「日本市場のニーズをハイアールに的確に伝え、日本向けに開発した商品を市場で販売することだ。例えば洗濯機市場では、大手メーカーはすでに全自動に軸足を移しているが、二層式も年間約45万台程度売れている。まだニーズはあるということで、われわれは二層式を投入している。また冷蔵庫では、ユーザーの『冷凍庫のスペースが足りない』という声に応えて、冷凍庫11機種を揃えた。これは、現在日本で最も充実したラインアップだ」

Q ターゲットは隙間市場ということなのか。

 「市場では高付加価値の高級機が伸びているが、われわれは量を売るビジネスはしていない。得意分野は年間50万台くらいの規模で、日本の大手メーカーが手薄な隙間市場だ。規模は小さくても、確実にニーズがある。だから、あまり景気に左右されない。ただ、2009年は攻勢に出ていたのにもかかわらず、売上高は前年並みに終わった。大型家電市場が拡大し、われわれのいる市場の製品に消費者の予算が回ってこなかったことが原因だ。それを取り返すのが2010年だと考えている」

Q どのようなかたちで取り返すのか。

 「売り上げを拡大するには、ラインアップを充実させることが必要で、すでに2012年度までは投入する機種を決めている。冷蔵庫は、日本人の身長に合った使い勝手のよいサイズで、『冷やす』『凍らせる』という基本機能がしっかりしたシンプルな2ドアモデルの商品群を投入する。市場のニーズを捉えて開発した製品で、販売店の利益も出る。しかも低価格な製品だ。これらの製品で、今年度は17~18%の伸長を見込んでいる」

Q 今後の目標は。

 「現在は一人暮らし向けの製品が多く、お客様は新規の方々が中心だ。しかし、今後は買い替えユーザーも増やしていきたい。その取り組みの一つとして、大容量9.0㎏の全自動洗濯機の販売を開始した。まずはシングル世帯から高齢者に広げ、最終的にはファミリー層を獲得していきたいと考えている。販売チャネルは、現在展開しているホームセンターやGMS、家電量販店などに加え、今後は高齢化社会を見据えて地域密着型の家電店を開拓していきたい。手始めに、高齢者世帯など地域に密着したサービスで成長しているヤマグチ(東京都町田市)での販売を始める計画だ。まずは、冷凍庫を販売する。買い物に出る機会の少ない高齢者などからの需要があると見込んでいる」

・思い出に残る仕事

 ハイアールジャパンセールスは、篠田氏を含め、ハイアール製品をOEMで販売していたメンバー5~6名が、日本でのハイアールブランドの販売を目指して2002年1月に設立した。01年8月に準備委員会を設置し、その後、中国ハイアールとの合弁契約を締結。設立当初、篠田氏は、商社勤務時代に交流のあった小売企業の幹部に、新ビジネス立ち上げの挨拶状を送った。その手紙を受け取った16社の幹部は、まだ応接室のなかった当時のオフィスに足を運び、話を聞いてくれたという。そのなかには、今は社長になっている人も多い。一筆がつないだ太いパイプだ。
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