店頭流通

<デジタルカメラ店頭動向>韓国/中国編 多様な流通ルートへの対応がカギ

2010/09/09 18:45

週刊BCN 2010年09月06日vol.1348掲載

カシオ(上海)
“カシオグループ”を組織
販売店との絆を強化

三輪亮彦上級部長
 カシオ計算機の中国グループ会社であるカシオ(上海)は、コンパクトデジカメを中国市場で広めるため、直接コンシューマと接点のある販売店とのパートナーシップを深めようとしている。“カシオグループ”などといった名称で、マージンを優遇する緩やかな販売店の集まりを発足。同社でデジタルカメラ関連事業の販売推進を担当する三輪亮彦上級部長は、「50社程度は確保していきたい」考えを示している。

 中国市場では、コンパクトデジカメ需要が買い替え、もしくは買い増しのフェーズに入りつつあることを踏まえ、「ユーザーが所有しているコンパクトデジカメよりも魅力的な製品の市場投入、加えてブランド力アップが重要になってくる」(三輪上級部長)と捉えている。また、中国市場のシェアをみると、20%台を確保するキヤノンとソニーの“第1グループ”、10%台を維持するサムスンとニコンの“第2グループ”で、市場の半分以上を占めている。カシオは、“第3グループ”に位置することになり、「できるだけ早い段階で“第2グループ”、そして将来的には“第1グループ”のポジションを狙いたい」と、三輪上級部長は語っている。そこで打ち出した戦略が、「積極的に売ってくれる販売店を確保、当社製品の良さをコンシューマに訴える」といったものだ。“カシオグループ”に賛同した販売店は、今年7月下旬の時点で35社までに達しているという。

 また、中国コンパクトデジカメ市場は、低価格化を中心に競争が激化している。他社との差異化を図らなければ、なかなか市場シェアを上げることが難しいというのが大方の見解だ。そのため、メーカー各社が独自策を講じている状況でもある。そのなかで、カシオ(上海)では、コンシューマへの知名度を高めるために販売店とのパイプ固めを決断したのだ。ほかにも、イメージキャラクターに中国で活躍する若手女優を起用。今秋以降は、テレビCMを中心にPR活動の強化にも取り組む。

富士フイルム(チャイナ)インベストメント
コンパクトデジカメの新規需要開拓
郊外向けに製品をアピール

青山国雄事業長
 富士フイルムホールディングスの子会社である富士フイルム(チャイナ)インベンストメントが、コンパクトデジカメを拡販するために中国市場で他社との差異化策として掲げるのは、郊外のコンシューマを囲い込むことだ。これによって今年度は、前年比120~130%で推移する中国コンパクトデジカメ市場規模の伸びをはるかに上回る155%程度の売上成長率を果たす方針を示している。

 中国市場でデジタルカメラを販売する際、一般的に使う手は、上海や北京など大都市でいかに需要を増やすかということ。デジタルカメラメーカーの多くがターゲットとしている主要な商圏は、約30都市といわれている。その商圏のなかで、デジタル機器を販売する店舗が軒を連ねる商業ビル「電脳城」を活用して拡販していくケースが多い。

 富士フイルム(チャイナ)も、大都市の電脳城でコンパクトデジカメを販売しているが、「デジタルカメラを買う人は、大都市圏だけに存在するわけではない」と、同社でデジタルカメラ関連事業の責任者を務める青山国雄事業長は断言する。加えて、「最近では、郊外のほうが消費の勢いがあるのではないか」と分析。そうした理由から、同社は、中国の100~150都市を主要な商圏と捉えているのだ。

 大都市以外での拡販に向け、同社では郊外の商業ビル内の店舗とのコミュニケーションを密にしてパートナーシップを強めているほか、路面でデジカメを中心に販売する専門店への支援強化を図っている。さらに、郊外で店を構える家電量販店とのパイプを強くすることにも取り組んでいる。製品面では、「ユーザーがカラーバリエーションを求めている」(青山事業長)ことから、ラインアップの拡充も検討している。

電脳城以外の販売整備を
他社と一線を画した展開


 韓国と中国における日系デジタルカメラメーカーの拡販展開をみると、両国とも流通を整備することが事業拡大につながるということがわかる。なかでも中国は、大都市圏にある「電脳城」を経由した流通が最も大きな市場といわれていることから、その販路を維持しながら、他社とは一線を画した流通政策を講じる必要があるといえそうだ。

 ワールドワイドでは、デジタルカメラは日本メーカーが強い分野として知られている。しかも、日本は世界のなかでも間接販売が主流との見方が強い。

 そのような現状を踏まえ、日系デジタルカメラメーカーが、アジア地域においてさらに事業を拡大することに期待したい。(BCNエグゼクティブアナリスト・道越一郎、週刊BCN副編集長・佐相彰彦)

中国では、大都市圏の「電脳城」を経由した流通が最も大きな市場になっている
(写真は上海・徐家匯にある電脳城内)

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