店頭流通

PC市場で存在感増す地デジ内蔵モデル 海外メーカーも販売強化へ

2010/08/26 16:51

週刊BCN 2010年08月23日vol.1346掲載

 地上デジタルチューナーを内蔵したPC、いわゆる「地デジPC」の存在感が増している。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、地デジチューナーを内蔵したPCの出荷台数は今年4月に初めて10万台を超え、メーカー各社が夏モデルを発売した6月には14万8000台に達した。BCNランキングでの伸びも顕著で、デスクトップPCでは7月の販売台数の5割に達し、ノートPCでも5%前後まで伸びてきている。地デジPCは、これまで主に国内メーカーが中心となって製品化してきたが、市場の拡大によって海外メーカーも本腰を入れ始めている。


製品強化を図る国内メーカー

 「デスクトップPCの地デジ内蔵はあたり前になっていい」と語るのは、NECパーソナルプロダクツの渡邉敏博・PC事業本部商品企画開発本部長代理。NECは、今春からモニタ一体型モデルをすべて地デジチューナー内蔵にした。2011年7月のアナログ放送停波を見据え、プライベートルームでの地デジ視聴や録画、ネット利用に向けた提案を強化しているのだ。

 富士通も「今後、個室のテレビをいかに地デジPCに置き替えられるかが、PCの普及にとって重要になってくる」(大橋慎太郎・パーソナルビジネス本部パーソナルマーケティング統括部長)と断言。オンキヨーも「映像配信やインターネットができるPCは、テレビ機能との相性がいい。今後、地デジPCは確立したカテゴリに成長する」(砂長潔・PCカンパニー量販営業部長)とみる。

 東芝も力を入れている。「ユーザーが求めている機能に関して、デスクトップがノートに近寄ってきた」(深串方彦・執行役上席常務デジタルプロダクツ&ネットワーク社社長)として、ノートPC25周年記念モデルで、何と地デジ内蔵のモニタ一体型デスクトップを投入した。アナログ放送停波に伴う地デジ視聴ニーズを追い風に、PCでの地デジ視聴を訴求する動きが活発化してきているのだ。

 メーカー各社の戦略は、冒頭述べたJEITAの出荷統計やBCNランキングの数字に表れている。Windows 7発売後の09年11月を起点にしたBCNランキングによる実売データの動きをみても、地デジ内蔵モデルの販売が上昇傾向にあることがわかる(図3)。今年7月には、デスクトップが09年11月の1.6倍、ノートは1.9倍に伸長している。


海外メーカーに新たな動き

 活況のなか、新たな動きも出てきている。地デジPCは、これまで国内メーカーが中心に製品化してきたが、海外メーカーも販売強化に乗り出したのだ。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、今年7月28日にウィンドウズ デジタルライフスタイルコンソーシアム(WDLC)に加盟。「地デジPC市場の拡大や、アナログ放送終了まで1年弱のカウントダウンに入ったことで、地デジPCの訴求力を高める」(森英雄・コンシューマビジネス本部デスクトップPCビジネスプロダクトマネージャー)ためだ。一方、レノボ・ジャパンも「PCでテレビを視聴する一定のニーズはある」(古田竜夫・リテール営業部部長)とみて、7月末にモニタ一体型デスクトップのラインアップに地デジ内蔵モデルを追加した。

 さらに、まだ地デジ内蔵モデルを投入していない日本エイサーやアスース・ジャパンも、今後の投入を目論む。日本エイサーは、今年5月に北京で発表したホームネットワーク構想「Acer clear.fi(エイサー・クリアファイ)」の推進策の一つとして、「日本市場向けに地デジPCを投入する可能性がある」(中溝良介・プロダクトマネジメント課Stational PC プロダクトマネージャー)としているほか、アスース・ジャパンは、「液晶一体型のEee Top PCのハイエンドモデルである24型大画面All-in-One PCに、地デジ3波対応モデルを加えることを前向きに検討している」(シンシア・テン・マーケティングマネージャー)としている。

 デルは、BTOのオプションとして外付け地デジチューナーを選択できるようにしており、現在は内蔵タイプがない。「すべてのユーザーが地デジを見ることを目的に地デジ内蔵PCを要望しているわけではないと考えている」(広報担当者)としながらも、「絶対数としてはニーズ自体は増加傾向にはある」ことなどから、地デジチューナー内蔵モデルが選択できるようにすることを検討しているという。


年末以降が正念場

 チューナーを搭載した「テレビパソコン」は、Windows XPやVista時代からあったが、残念ながら、PCでテレビを見るというスタイルは定着しなかった。しかし、地上、BS、CSの3波に対応し、液晶ディスプレイの画質を含めてハードウェアのスペックがハイビジョン映像の視聴環境に追いついてきたこと、そして10万~20万円弱という値頃感のある価格は、過去の「テレビパソコン」を取り巻く環境とはまったく異なる。

 さらに、消費者の地デジ対策意識の高まり、Windows XP/VistaからWindows 7への買い替えのタイミング、また12月の家電エコポイント制度の終了で、対象外だった商品の消費拡大に期待が高まっているなど、材料は揃っている。今こそ地デジPCの需要喚起には絶好の時期だ。国内メーカーに加え、海外メーカーの製品が充実することで、市場の活性化に期待できる。地デジPC市場は、年末以降が販売の正念場となりそうだ。
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