時の人
<インタビュー・時の人>富士通 パーソナルビジネス本部 パーソナルマーケティング統括部長 兼 プラットフォームビジネス推進本部 クライアントPCビジネス推進統括部長 大橋 慎太郎
2010/07/29 18:44
週刊BCN 2010年07月26日vol.1343掲載
一人ひとりの「やりたいこと」をかたちに
ブランドをグローバルで統一
Q ブランド統一の意図は。「これまで当社は世界の各拠点ごとに異なった商品を開発し、それぞれのブランドで販売していた。しかし、開発費用がかさむうえに、グローバルで富士通のブランドを浸透させるためには効率がよくない。ブランドを統一することで開発費を下げ、グローバルで効率的に訴求していく。さらに、商品を統一したことで、世界のユーザーに対して同一のサポートを提供できるという利点もある」
Q 新「FMV」のブランドメッセージ「デキルが、ココに。」に込めた思いは。
「携帯電話のように、今後ユーザーがPCと一緒にいる時間が増えていくなかで、富士通のPCは、ユーザーの『ライフパートナー』になることを目指している。そのために、ユーザー一人ひとりのやりたいことをPCでかたちにしていく。個人向けPCの夏モデルは、8シリーズ21機種を用意した。一つひとつの機種に、ユーザーそれぞれのやりたいことを実現する機能や特徴を盛り込んでいる。『デキルが、ココに。』をコンセプトに、今後もユーザーの一人ひとりの顔を思い浮かべながら製品を開発し、投入していく」
Q 夏モデルのなかでも、とくに力を入れた製品は。
「もちろん、3D対応のデスクトップPC『FMVF553AM』だ。3Dコンテンツを『見る』、2D映像を3D映像に『変える』、オリジナルの3D映像を『作る』という三つの3D体験ができる。とくに、3Dカメラを内蔵し、3D映像を作成できるという特徴は、PCにしかできないことであると同時に、他社の3D対応PCにはない機能だ。販売店からの引き合いも強く、夏モデル全体を底上げする起爆剤になると期待している」
Q 3D対応PCをユーザーにアピールする施策は。
「テレビCMでは、3Dを正しく伝えることはできないので、店頭での訴求に工夫を凝らした。3D対応PCには、立体的に見える位置がある。来店したお客様が何気なく覗いてみて、その時に立体的に見えないと、『3Dってこんなものか』と思ってしまう。そこで、お客様が自分の身長に合わせて立体に見える画面の角度を調節できるツールを設置した。ベストな状態の3D映像を体感してもらっている」
Q 3Dモデル以外で注力する新製品は。
「地デジPCだ。1年後のアナログ放送終了に向けて、テレビ機能がPCの大きな特徴になってきている。今後、個室のテレビをいかにPCに置き替えられるかが、PCの普及にとって重要になってくる。そこで夏モデルでは、フルハイビジョン画質のまま、2番組同時に10倍録画できるデスクトップPC「FMVF905AD」を投入した。レコーダーではすでにある機能だが、PCとしては世界で初めてだ」
Q 下期の重点目標は。
「2009年は、個人向け、企業向けを合わせたPC全体の国内販売台数が272万台だった。2010年は275万台を目指す。上半期が終わった時点では好調だが、地に足の着いた数字を掲げている。商品としては、長年取り組んできたAV機能の強化に今後も注力する。追求しているのは、リアリティ。その切り口の一つとして、3Dがある。当社は、AV機能を中心に、ユーザーのライフパートナーになるための機能や特徴をもつPCを、今後も積極的に開発していく」
15年ほど前、ハンドヘルドターミナルの商品企画を担当していた大橋氏。当時のハンドヘルドターミナル市場は、国内で20万台程度で、富士通は約5万台を販売してトップシェアを確保していた。ハンドヘルドターミナルは、まさにカスタマイズ製品。たった1000台でも、ユーザーの要望に合った製品を開発した。その後に手がけた携帯電話は、一つの商品が50万~100万台売れる。一見、ハンドヘルドターミナルとはまったく違う商品のようにみえるが、大橋氏は「目指したところは同じ」と語る。「ユーザーを綿密にカテゴライズし、一人ひとりの顔を思い浮かべながら商品を作る」。大橋氏のポリシーが、現在の富士通PCの商品企画にも反映されている。
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