時の人

<インタビュー・時の人>BSLシステム研究所 社長 小野秀幸

2010/07/22 18:44

週刊BCN 2010年07月19日vol.1342掲載

 低価格を売りに業務ソフトで市場シェアを拡大してきたBSLシステム研究所。ここにきて、新たな戦略を打ち出そうとしている。サポートサービスの強化に乗り出し、ユーザーに付加価値を提供。競合他社との差異化によって生き残りを図る。販路についても、店頭市場を中心に販売してきたが、これの見直しに着手する可能性について言及している。(取材・文/信澤健太)

サポートサービスは“命”
低価格だけではない強みを発揮

Q 3990円という超低価格帯の新製品「かるがるできる3」シリーズを4月に発売した。状況はどうか。

 「7月には残りのタイトルが出て、シリーズすべてが揃うことになる。いままでのシリーズ以上の売り上げ貢献を期待している。デフレ傾向になればなるほど、当社の業務ソフトが購入されるケースが増えるだろう」


Q BCNランキングによれば、BSLシステム研究所は本数ベースで急激な伸びをみせているが、金額ベースでは横ばいだ。

 「本数を捌いていくことはもちろんだが、『かるがるできる3』シリーズだけで勝負するのではなく、ユーザーを高価格帯に呼び込むことも必要だ。それは、サポートサービスを充実させたり機能アップを図ったりすることに目を向けておくということ。低価格帯だけに依存するのではなく、高価格帯も伸ばしていきたい」

Q 具体的にはどのようなサポートサービスの充実を考えているのか。

 「まだ、言えない部分が多い。従来は無償でやってたサポートサービスをさらに充実させて、有償にできるかどうかを社内で検討している段階だ。それは、無償でやってきたことを有償にしてお金をとるという単純な移行ではない。まったく別なサポートサービスを立ち上げて、さらに良いものを提供できるのではないかと考えている。

 サポートサービスは“命”と捉えている。開発や営業と比べて、サポートサービスには質量ともに最大の人員を投入している。それは、単に『頑張ろう』とシュプレヒコールをあげるということではない。他業種のサポートセンターに寄せられるクレームを研究して、その成果を取り入れてきた。そうすることで、競合との差異化が図れると思っている。今後は、さらにホスピタリティをあげていかないとユーザーに見限られる。期待に応えられるサポートサービスとは何なのかを、常に考えることが大事だ。

 周囲からは、低価格であることに加えて、無償のサポートサービスを提供していて、なぜやっていけるのかという質問を受けることがある。逆にいえば、そんなふうに思われるからこそ、ユーザーは当社製品を選んでくれているのではないかと思う。費用対効果を考えて、値段とサポートサービスに満足するユーザーが増えればシェアは伸びる。つまり、先行投資の部分があるというわけだ」

Q これまで、超低価格帯製品を市場に投入してきたわけだが、新製品について今後の見通しは?

 「新製品の開発については、常に市場の動向を探っている。緻密なマーケティングを行わないと、発売できるものではない。むしろ、今ある製品をリニューアルしてさらに優れた製品にしていく。それには、ユーザーの意見も重要な要素として反映させていきたい」

Q ここまで値段を下げてきて、これ以上安くすることはあるのか。

 「これ以上の低価格化は無理という気がする。ゼロ円に近づければユーザーは購入しやすいが、メーカーが利益を得なければ、商売を続けることはできない。ティッシュなどの消耗品であれば、同じものをどんどんリピートオーダーしてもらえる可能性があるが、業務ソフトの場合はそれが難しい」

Q これまで一貫して家電量販店などの店頭を中心に販売してきた。この路線に変更はないのか。

 「販路を変えるといった別の売り方はあり得る。まだ、それこそ雲をつかむような話だが、クラウドにしてみるとか、あるいは販売代理店経由の形式をとるとか。単に低価格ではなく、別の製品や販路を考えるほうが当社にとってメリットがあるかもしれない」

・思い出に残る仕事

 1996年、「らくだシリーズ」を発売するにあたって、最小限の機能でシンプルな業務ソフトが売れるという確信をもっていた。しかし、社内での評価はいまひとつ。「多機能でなければ競合他社に勝てない」という意見もあった。それでも「ユーザーが挫折しないで使いこなせるソフト」の必要性を切実に感じていたため、発売に踏み切った。以来、14年間にわたりロングセラーを続ける業務ソフトとなっている。とくに給与系ソフトなどがBCNランキングの5年連続で売上本数No.1にまで成長。「見栄えよりも実用的であることが大切ということを学んだ」と振り返る。
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