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オリンパスイメージング ICレコーダーに音声認識機能 新規ユーザー開拓で市場拡大

2010/07/15 18:45

週刊BCN 2010年07月12日vol.1341掲載

 オリンパスイメージング(大久保雅治代表取締役社長)は、ICレコーダー「Voice Trek」の上位モデルとして、7月8日、音声認識機能をもつ「DM-4」を発売した。付加価値の一つとして、アクセシビリティ(利便性)を追求する。視覚障がいをもつユーザーをターゲットに加えることで、市場の拡大を狙う。

猪狩一郎シニアマーケティング
マネージャー
 「DM-4」は、2.2型の大型カラー液晶を搭載し、これまでのICレコーダーにはなかったスケジュール管理など、豊富な機能をもつ。そもそもICレコーダーは音声を“録音”する機器のはずだが、なぜ、他の機能を盛り込んだのか。「『人の声』というものを、別の方法で活用できないか検討した結果、形になった」と猪狩一郎国内営業本部営業企画部営業企画1グループシニアマーケティングマネージャーは製品化の背景を語る。

 「DM-4」の音声認識機能は、自分の声をマイクに吹き込むと、メニューやスケジュール設定などの基本操作ができるというもの。現在メニューで選んでいる項目をお知らせする音声ガイド機能も備える。

 さらに、専用テキストを読み上げる国際規格「DAISY(Digital Accessible Information System)」に対応。PCの専用サイトからダウンロードしたテキストファイルを本体に保存し、文章と音声の読み上げを同期することで、テキストの内容を認識しやすくするのが狙いだ。「DM-4」はDAISYコンソーシアムが規定する機能を搭載し、専用書籍が再生できる目印となる「DAISY OK」のロゴを取得している。

Voice Trek DM-4
 このDAISYは、主に視覚障がいをもつ人が活用しており、海外にはすでにICレコーダーをこの用途で使うニーズがあるという。オリンパスは、「DM-4」を視覚障がい者という新しいユーザーに向け、「関連団体や点字図書館などを通じてアピールしていく」(猪狩シニアマネージャー)方針だ。パンフレットも、通常バージョンに加え、点字バージョンを用意している。

 また、「DM-4」の“多機能”を前面に押し出して、デジタル製品ファンのアーリーアダプタもターゲットとして想定。家電量販店でのデモ機の展示などを通じて訴求していく。

 「DM-4」は、実勢価格3万円前後という高級機であることから、現在進行している市場全体の製品単価下落傾向の抑制にひと役買うことが期待されるモデルでもある。猪狩シニアマネージャーは、「息の長い製品にしていきたい」と希望を述べた。

 現在、ICレコーダー市場は好調に推移しており、「BCNランキング」の6月の対前年同期比は、販売台数で113.1%、販売金額で105.1%だった。この状況について、猪狩シニアマネージャーは、「ビジネス用途以外の潜在的ニーズがあるのに加え、買い替え需要がある」と分析する。

 国内ICレコーダー市場で、「録音」以外の新しい音の活用方法を提案した今回の取り組みは、市場を刺激する一つのポイントとなる。高音質な録音ができるリニアPCMレコーダーの市場はすでに確立しており、堅調に推移している。さらなる市場の活性化を図るには、新しい使い方の発掘と、それによる新規ユーザーの獲得が不可欠だ。(井上真希子)
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