時の人
<インタビュー・時の人>シャープ AVシステム事業本部 液晶デジタルシステム第1事業部 事業部長 喜多村和洋
2010/07/15 18:44
週刊BCN 2010年07月12日vol.1341掲載
技術革新でハイグレードモデルに自信
7月の発売は秋以降を見据えたベストタイミング
Q クアトロン技術への自信を聞かせてほしい。「カラーテレビは赤・緑・青の3原色で色を表現しているが、クアトロンは、黄色を加えた4色にしている。これは、テレビの歴史を塗り替えるエポックメイキングな技術だ。ブラウン管テレビが薄型テレビにシフトしたのと同じインパクトがある」
Q 一般消費者にも「4原色」という大きな技術革新は伝わるだろうか。そのよさをどのように伝えていくのか。
「まずはテレビCMを通じて、4原色とは何か、ということを伝えていく。店頭では、画質を実際に見ていただくことに加え、4原色の仕組みを伝える販促物を用意する。また、ワーナー エンターテイメント ジャパンと共同で、黄色をきれいに表現している映画ソフトをプレゼントするキャンペーンを展開していく」
Q クアトロンのほかに、訴求していくポイントは?
「いや、『AQUOS クアトロン』と『AQUOS クアトロン 3D』に尽きる。そのほかのことをいうと戦略がぼやけてしまうので、これらをメインに訴求していく方針だ。2010年度は、まず40V型以上の30%にクアトロンを採用し、11年度には40V型以上のすべてに採用していく。ハイグレードモデルで、ひとり勝ちを狙いたい」
Q すでに圧倒的な地位にあるが…。
「シャープは従来、ハイグレードモデルが手薄だった。しかし、昨年の『LED AQUOS』の投入によって、その部分を補うことができた。『LED AQUOS』で築いたハイグレードモデルの基礎に、クアトロンによって、もう一段磨きをかけたい。クアトロンは、夏商戦に向けて7月1日にXFシリーズ、20日にLXシリーズ、そして7月末に3DのLVシリーズと、“三本の矢”を束ねて放つ。赤・緑・青に黄色を加えたクアトロンのプレゼンスをお客様に伝えていただいて、販売店の単価アップにつなげていただきたいと考えている」
Q しかし、夏商戦に向けての投入ならば、タイミングを失したのでは?
「今年は、12月末までエコポイント需要が続く。例年と販売パターンが異なる特別な年だ。その意味で、今は12月末までの商戦に向けての助走期間だと思っている。今回は、ボーナス商戦ということではなくて、秋以降を見据えたベストタイミングとして、あえてこの時期に新商品を投入することにした」
Q 「AQUOS クアトロン 3D」の発売によって、7月末以降、3Dテレビのプレーヤーは3社になる。さらに参入が続くなかで、シャープの優位性は何か。
「クアトロンがなければ、3Dは出したくないと考えていた。3Dには、画面が暗くなるという欠点があるからだ。クアトロンにしても、3原色を4原色にすることで、一つひとつの色の面積が小さくなり、画面は暗くなってしまう。しかし、『LED AQUOS』に採用した高コントラストと光利用効率を高めた独自の『UV2A技術』があったので、明るく高画質の3Dが実現できた。仮に他社が4原色技術を開発しても、明るいパネルにはならないだろう。当社は、明るさを武器に3Dテレビを訴求していく」
2001年、シャープが世界で初めて発売したBSデジタルチューナー内蔵HDDレコーダー「TU-HVR100」は、喜多村氏の発案で製品化したもの。ニュース番組やドラマなど「テレビ好き」という氏が、「きれいな映像を録画して、手軽に再生できる製品が欲しかった」のだという。著作権関連で、放送局から「製品化は諦めてほしい」といわれたこともあったが、今となれば、同社のハイビジョンレコーダーの原点になった製品。「現在のシャープのBDレコーダーのシェアにつながっているのだと思う」と振り返る。
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