時の人

<インタビュー・時の人>アスース・ジャパン チャネルマネージメント部長 生松智明

2010/06/24 18:44

週刊BCN 2010年06月21日vol.1338掲載

 「ネットブックのパイオニア」の印象が強いASUSTeK Computer。現状、ネットブック市場は縮小傾向にあるが、同社は今後もネットブックを市場に投入しながら、並行して、ネットブックで高まった日本市場での認知度を武器に、10万円を超える高付加価値ノートPCに注力する。(取材・文/武井美野里)

高付加価値ノートを積極投入
ネットブックで築いた認知度を武器に

Q ネットブック市場の縮小とともに、国内でのシェアが落ちてきているが…。

 「確かにノートPCでのシェアは下がってきているが、2008年、2009年と2年連続して『BCNランキング』でネットブックの販売台数シェアNo.1を獲得できた。また、2009年に投入したCULVノートPCが好調だ。ネットブックで日本市場における認知度を高めることができたので、CULVノートPCはスムーズにスタートを切ることができた」


Q ネットブックは、今後どのような戦略で販売していくのか。

 「今後もネットブックから手を引くことは考えていない。ユーザーはネットブックを選ぶとき、価格だけでなくデザインやスペックなど、PCの『内容』をより重視するようになっている。当社は、これまで比較的低価格の製品に力を入れていたが、今後は付加価値の高い製品の開発にも力を入れる。例えば、これまで取り組んでこなかったセグメントとして、子ども向けの製品開発を促進する。子どもがより気軽に安心して利用できるよう、馴染みやすいユーザーインタフェースを採用するほか、学習系など、コンテンツも充実させる」

Q CULVノートは、今後、市場の伸びがあまり期待できない印象だが…。

 「確かに、CULVノートPCというカテゴリは狭く、今後、市場が伸びていくほどのインパクトはない。積極的に製品を投入していくが、市場動向をしっかりとみる必要があるだろう。当社は今後、ネットブックやCULVノートなどのモバイルノートPCだけでなく、10万円以上の製品に力を入れていく。現在、国内メーカーの製品で、デュアルコアのCPU、Officeを搭載したPCでも10万円を切っている。平均単価を上げるため、いかに10万円を超える製品を、ユーザーのニーズに合わせて提供していくか、というところで試行錯誤している」

Q 10万円以上の製品について、具体的な内容を教えてほしい。

 「4月24日に発売した3D対応のノートPC『G51Jx 3D』もその一つだ。2010年は『3D元年』といわれ、ユーザーの3Dに対する関心が高まっている。『G51Jx 3D』も、発売後、販売店の引き合いが予想以上に多く、取り扱い店舗はどんどん増えている。そのほか、日本への投入はまだ未定だが、音響メーカーとして最高峰のバング&オルフセン社のデザイナーとコラボした『NX90』が挙げられる。両側面に大型スピーカーを配置し、音にこだわりのある人をダーゲットにしている。このような、市場にインパクトを与えるユニークな製品を、継続して日本市場に投入していきたい」

Q 拡販のための店頭での施策は?

 「現在、当社の日本の量販店カバー率は90%くらい。今後は、いかにお店の目立つところに製品を置いてもらうかということに注力したい。そのために、今までお店に直接行くことがなかった当社の社員が、この1年で100店舗ほどを巡回し、販売店との関係を築いている。また、独自のコーナーを拡充し、お客さんとの接点を増やしたい。これが、売り上げに結び付けるための一番効果的な方法だと思っている」」

Q 2010年の目標は。

 「『BCNランキング』で、2008~2010年と3年連続でネットブックの販売台数シェアNo.1を獲得すること、ノートPC全体では、外資系メーカーのなかでの販売台数シェア1位を目指している」

・思い出に残る仕事

 2003年にアップルコンピュータに入社した生松氏。外資系の企業は少人数で動くため、量販店への新しい販売スタイルの提案、新規ビジネスの立ち上げなどは、一人で企画から販売店との交渉、導入まで管理していた。生松氏は、「すごくタフな仕事だったけれども、やっているのはすべて自分なので、結果が返ってくるのも自分。うまくいったときは、達成感を肌で感じることができた。これは、ほかでは経験できなかったことだ」と、満足げに振り返る。企画から導入まで、ビジネスの一連の流れを一人で責任をもってこなしたことが、現在のASUSビジネスにも生かされている。
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