時の人
<インタビュー・時の人>オリンパスイメージング 取締役兼事業統括本部長 川俣尚彦
2010/06/03 18:44
週刊BCN 2010年05月31日vol.1335掲載
「PEN」のラインアップを拡充
レンズ小型化はマイクロフォーサーズ有利
Q マイクロフォーサーズ機が市場に受け入れられている理由は?「開発段階から、20代の若者や女性など、今までデジタル一眼を使ったことがない人たちをターゲットにして、従来のデジタル一眼の『大きい、重い、難しい』というデメリットを払拭したことが受け入れられている」
Q 「OLYMPUS PEN」シリーズの今後の製品展開は?
「上位モデル、下位モデルともに、ラインアップを拡充していく。レンズキットで10万円前後という『OLYMPUS PEN』の現在の価格は、ターゲットとする20代の若者には手が出しにくい。より価格を下げた下位のモデルを投入したい。ユーザーインタフェースもまだまだ難しい。もっと簡単にして、購入者の女性比率を40%以上にまで高めたい。また、上位モデルは、フォーサーズ機とは棲み分けるかたちでの投入を考えている」
Q ソニーが、6月にミラーレス一眼に参入するが…。
「ソニーの参入は、ミラーレス一眼が市民権を得た証。市場が盛り上がるという意味で歓迎している。」
Q そのなかで、オリンパスのマイクロフォーサーズ機の強みは?
「ソニーのミラーレス一眼は、確かにボディは薄い。しかし、レンズの薄さについては、光学メーカーである当社に一日の長がある。レンズを付けた状態で見ると、ソニーの製品は、本体に対してレンズがだいぶ大きいように思える。レンズの薄さが当社の強みだ」
Q コンパクトデジタルカメラは低価格化が進んでいるが、その要因をどのように分析しているか。
「毎年4月は新製品の売り上げがかなりの構成比を占めるが、今年は旧モデルと新モデルが混在している。それが平均単価の下ぶれに影響しているのだろう。新製品についても、本来2万円台半ばで出すようなモデルを、1万円台後半で投入するメーカーが出てきた。コンパクトデジタルカメラは、機能面での明確な差異化が難しい。低価格の製品で数を売ることに注力するメーカーが増えてきたように思う」
Q そのなかで、オリンパスはどのように戦っていくのか。
「ワールドワイドでは、当社も低価格モデルの投入を考える必要がある。しかし、国内は別だ。付加価値モデルとして、まず防水・耐衝撃・耐低温の「μTOUGH」シリーズを強く推していく。防水性能だけでなく、子どもが使って落としても壊れないといった耐衝撃性能もあわせてアピールする。もう一つ、インターネットとの関係だ。現在、デジタルカメラユーザーの多くは、写真をどう保管するかに悩んでいる。そこで、写真を安心して保存できるオンラインストレージの提供を検討している。当社だけで始められるサービスではないので、はっきりとはいえないが、2010年度中に提供したいと思っている」
Q デジタル一眼とコンパクトデジタルカメラ、それぞれの今後の目標は。
「ワールドワイドの3年後の販売台数シェアで、デジタル一眼、コンパクトデジタルカメラともに、最低でも15%を獲得することが目標だ」
入社以来、製造に関わってきた川俣尚彦氏。その後が、2006年に開発本部長に就任し、「OLYMPUS PEN」シリーズの開発に携わることになった。そこで一番印象に残っているのは、マイクロフォーサーズ機第一弾製品の「OLYMPUS PEN E─P1」のデザイン決定プロセスだ。川俣氏は、試作の段階で、現在の「OLYMPUS PEN E─P1」のデザインを見たとき、「あまりにもレトロすぎる」と思い、違うデザインを選んだ。しかし、開発の若い人たち数百人にアンケートをとると、圧倒的にレトロなデザインが支持された。川俣氏はこのときのことを「私が決めていたら、今頃『OLYMPUS PEN』は売れていなかったかもしれない。今後は若い人がデザインを決めるべきだと実感した」と振り返る。若者の意見を素直に取り入れる姿勢が、新世代ミラーレス一眼「OLYMPUS PEN」シリーズのヒットを支えたのだ。
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