時の人

<インタビュー・時の人>富士フイルム コンシューマー営業本部 ファインピックスグループ 部長 小島正彦

2010/05/06 18:44

週刊BCN 2010年05月03日vol.1332掲載

 富士フイルム(古森重隆社長)が、コンパクトデジタルカメラ「FinePix(ファインピックス)」で攻勢をかけている。2010年の春モデルとして、高画質CCD「スーパーCCDハニカムEXR」やタッチパネルなどを備えた「Z700 EXR」、高画質CCDと光学10倍ズームレンズなどを搭載した「F80 EXR」など、9機種もの新製品を投入。国内シェア15%を目標に掲げ、これまでにない品揃えで市場を攻略する。(取材・文/米山淳)

「画像漂流時代」の救世主登場!
春商戦で新製品9モデルを投入

Q エントリーから高機能モデルまで、9機種もの製品を投入する狙いは?

 「デジタルカメラのユーザーは、10代から60代までと幅広い。以前と比べると、年齢層が広がっている。第一に高画質を求めるのはどの世代でも同じだが、一方で、デザインや使い勝手など、世代ごとに異なるニーズもある。そうした要望に応えるために、幅広いモデルを用意した。プリントメーカーでもある当社は、デジカメに関して『プリントしたくなるような高画質』を基本にしている。そのうえで、デザインやカラーなどで、他社よりも女性を意識したカメラづくりを行っている。全機種とも、ぜひ女性ユーザーに使ってもらいたい」


Q 具体的なラインアップは?

 「エントリーモデルの『Jシリーズ』を核に、高画質の『Fシリーズ』、女性を意識したデザインの『Zシリーズ』、防水機能などを備えた『XPシリーズ』など、7シリーズを展開している。高倍率ズームレンズの『Sシリーズ』では、30倍ズームと風景写真などで動いている被写体を取り除く機能を備えた『HS10』で、デジタル一眼レフユーザーの取り込みを狙う。一方で、価格も重要だ。1万円台から5万円台までの幅広い価格帯に、機能で差異化した各シリーズを置き、選択の幅を広げている。こうした全方位の品揃えで、多くのユーザーを獲得したい」

Q 新製品の目玉は?

 「最大の特徴は、撮った画像をすぐに探して見ることができる『ピクチャーサーチ』だ。デジカメはパーソナルツール化しており、とくに女性は『撮った写真を誰かに見せたい』という欲求が高い。一方で、保存用のメモリカードは平均で4GBまで大容量化しており、1枚のカードで1300枚もの写真が撮れるようになっている。ユーザーは、旅行やイベントなど、すべての写真を1枚のカードに収めているのだ。その結果、『見たい』『見せたい』写真がカードのどこにあるかわからないという『画像漂流』が起きている。ピクチャーサーチは、その問題を解決した。他社モデルとの差異化とユーザー拡大につながる機能だと考えている。販売面でも、タッチパネルやペット検出などを搭載して女性をターゲットにした『Z700 EXR』、高機能CCDと10倍ズームの『F80 EXR』というピクチャーサーチ搭載機種を主軸に据える」

Q 富士フイルムは、メモリに写真を溜める傾向を「画像漂流時代」と名付けたが、言い得て妙だ。

 「私自身も2GBのメモリ1枚に両親や孫の写真を混ぜて保存しており、すぐには探せない状況にあった。整理すればいいのだが、なんとなく面倒で、1枚のカードで撮り続けてしまう。写真は増える一方で、まさにメモリカードの中で画像が『漂流』してしまっている。友人に聞いても同じで、世の中の人の実感だと思えた。だからこそ、カメラ側で整理できるようになれば便利だと考えた」

Q 3D対応テレビが話題になっているが、昨年発売した3Dデジカメの動向は?

 「3D対応テレビが発売されることで、追い風が吹くと思っている。もちろん、当社も3D対応テレビに接続して3D写真が見ることができる機器を発売し、需要を喚起していく。3Dテレビは、まだ対応コンテンツが少ない。そういう点で、3D写真はユーザーを引き付けるコンテンツになる。例えば3Dデジカメは、これまで見たことがない自分の立体写真を撮影できる。こうした写真に興味をもつ人は少なくないはずだ」

・思い出に残る仕事

 入社以来、営業畑を長く歩いてきたが、一方で商品開発など、モノづくりにも関わってきた。一番の思い出は、VHSテープ製品の命名に携わったこと。VHS全盛時、他社が数字と型番の品名でテープを販売するなかで、高画質モードでエアチェックしたり、繰り返し重ねて録画したりといったユーザーの「使用シーン」に着目。「きれい撮り」「重ね撮り」というネーミングを思いつき、商品化した。この名前が受けて商品は大ヒットし、他社も追従した。その後、メディアはテープから光ディスクへと変わったが、名前は使われ続け、VHSとDVDの累計で1億本以上を販売した。「自分の考えをアピールして、世の中の評価をじかに確認できる仕事ができたのはうれしかった」と振り返る。
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