時の人

<インタビュー・時の人>ソフトバンクBB 執行役員 コマース&サービス統括 CN事業推進本部 本部長 倉光哲男

2010/04/28 18:44

週刊BCN 2010年04月26日vol.1331掲載

 ソフトバンクBB(孫正義社長兼CEO)は、携帯電話アクセサリとPCソフトで展開する「SoftBank SELECTION」ブランドに、PC周辺機器を追加した。第一弾として、3月にマウス、キーボードを一部の家電量販店で発売。今年度(2011年3月期)下期以降は、ソフトバンクショップに展開していく計画だ。(取材・文/田沢理恵)

メーカーとしてPC周辺機器に参入
製品開発はユニクロがお手本

Q 07年11月にスタートした「SoftBank SELECTION」が3年目に入った。販売状況は。

 「ソフトバンクショップを販売チャネルとした携帯電話周辺機器から始まり、2年前からは量販店でPCソフトの販売を開始した。モバイル事業はもともと回線取次ビジネスだけで、物販はゼロから始めた取り組みだが、事業基盤として整ってきている。ソフトバンクモバイルとの連携を強め、さらに事業拡大を図っていくために、私自身、09年2月からソフトバンクモバイルのマーケティング本部副本部長を兼務している」


Q PC周辺機器参入の狙いは? なぜ、マウス、キーボードからなのか。

 「スマートフォンの進化やスマートブックの登場などで、次世代端末市場は間違いなく拡大していく。また、これらの機器とPCとの親和性は高くなっていく。これを踏まえて、PC本体の魅力を増す周辺機器を作っていくことが狙いだ。まず家電量販店で販売し、今年度下期以降、ソフトバンクショップで販売を始める。モバイルというチャネルでネットブックが売れ始めたのは、イー・モバイルとMVNO契約を結んで、09年3月に開始した定額制高速モバイルデータ通信サービスがきっかけ。この実績からも、ソフトバンクショップでPC周辺機器の需要を掘り起こすことができるとみている。第一弾は、周辺機器のなかで最も象徴的なマウスとキーボードにした。量販店の売り場が広く、需要も大きいからだ。まずは量販店を主戦場に勝負していく。ここで商品力と品揃えを勝負できなければ、先には進めない」

Q 製品の特徴と、自信のほどは?

 「マウスは、ネットブックユーザーをターゲットに、無線に特化した。また、マウス3種類のうち1種類は、ソフトバンクモバイルの携帯電話のように12色という豊富なカラー展開と、三層塗装などデザインへのこだわりが特徴。キーボードは、まずは有線タイプのベーシックな製品にした。マウスやキーボードは、けっして差異化しやすい製品ではないが、斬新な商品を出して成功したユニクロを参考にしていきたい。第二弾、第三弾にも期待してほしい」

Q 周辺機器メーカーになることで、流通事業者としての位置づけは変わるのか。

 「当社には、もちろん流通事業者としてのミッションがある。食い合いになるようにみえるかもしれないが、これからPCを含めたモバイル端末市場が拡大していくことによって、周辺機器のマーケット自体も大きくなっていく。先行する周辺機器メーカーとコミュニケーションをとって、一緒に売り場を拡げていきたい。誤解されないようにしたい」

Q 今後の方針は?

 「現在ソフトバンクショップを中心に販売している黒い箱の商品は、メーカーが製造とサポートを担当している。一方、iPhone周辺機器や新規参入したPC周辺機器は、白い箱を用いている。今後は当社がメーカーとなる“白箱”を拡大し、“黒箱”は1~2年かけて縮小していく。PCソフトは、現在、量販店を中心に販売しているが、パッケージだけでなく、新しい手法を検討中だ。モバイル事業やソフト、ハード、ブロードバンドなど各事業を組み合わせることで、いかに魅力的なアプローチができるかを追求している。今年度中には発表する予定だ。そのほか、雨後の筍のように出てくるスマートフォンのアプリ市場を睨み、ソフトバンクショップでの提供方法を考える。これも当社の役割だ」

・思い出に残る仕事

 96年に買収した米キングストンのメモリ事業で、指揮を任された。法人向けメモリはメーカー直販が当たり前の時代に、メーカー系サポート販社と契約し、サーバー用メモリからクライアントメモリまで、各メーカー向けの製品を用意。従来の常識を覆す発想で、初年度だけで40億円超を売り上げた。その後、ソフトバンクは、経営資源をインターネット事業に集中するために、99年に事業を売却したが、現場で事業を率いた氏にとって、「あの達成感は忘れられない」体験となった。
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