店頭流通
住友スリーエム PC不要のミニプロジェクターで法人需要に期待
2010/04/01 18:45
週刊BCN 2010年03月29日vol.1327掲載
市場の勃興期を振り返って、桑子進・ビジュアルシステムズプロジェクト部プロジェクト部長は「あれほどフィーバーするとは思わなかった」と述懐する。そして、「当社製品には“信頼”がある。もしほかのメーカーが着手しても火はつかなかったはず」と、それまでに培った顧客とのつながりに自信をみせた。
「BCNランキング」では、重さ1kg未満のモデルをミニプロジェクターと定義している。10年2月のプロジェクター全体における販売台数の割合をみると、住友スリーエムの製品が該当する重量「500g未満」のモデルは10.7%。一方、加賀電子やベンキュージャパン、日本エイサーが製品化している「500g以上1kg未満」のモデルは5.9%で、これらを合わせると16.6%。市場が立ち上がった当初と比べると、規模は小さくなっている。桑子部長は「一度ブームになってしまうと、その後が続かない」と課題を語る。
ミニプロジェクターを一過性の流行で終わらせないために、住友スリーエムはその後もラインアップを拡充してきた。初代モデル「MPro110」からデザインを一新し、バッテリ駆動時間を長くした2代目「MPro120」を09年8月に発売。そして10年3月には、Word、Excel、Adobe PDFなどの各種ソフトの表示機能を搭載した最新モデル「MPro150」を投入。ビジネスシーンでの使い勝手を高めてきた。「MPro150」はmicroSDカードスロットを備え、PCと接続しなくてもデータを投影できるのがポイント。PCが不要になったことで、「これまでにないタイプのユーザーが獲得できる」と期待する。
最近は、ミニプロジェクターのなかでも「500g以上1kg未満」のモデルが増えてきている。これらは「500g未満」の一般的なモデルと比べると画質、投影機能ともに性能がよく、住友スリーエムにとっては脅威だ。しかし桑子氏は、「市場で勝つ自信はある」と強気だ。現在、同社が提供するミニプロジェクターはビジネス向けだが、今後はコンシューマに特化した製品の発売も視野に入れる。
ビジネスユーザーの販売チャネルでは、法人向けの通信販売会社に手応えを感じており、引き続き活用していく。一方、コンシューマ向けには、家電量販店とECサイトで販売していく。量販店では、これまでのような一般的なプロジェクターと同じコーナーではなく、PCコーナーをはじめとしたAV機器以外の場所に専用の展示スペースを設けることを目標に据える。さらに、店舗スタッフの認知を高めるための策を講じるという。
今後、安定して市場を伸ばしていくには、ミニプロジェクターという製品ジャンルを多くの人に知ってもらうことが不可欠だ。住友スリーエムは、法人・個人市場ともに継続して力を入れ、10年は1万台のミニプロジェクターの販売を目指す。(井上真希子)
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