店頭流通

ポータブルカーナビゲーション 小型・軽量化が市場を刺激

2010/03/04 16:51

週刊BCN 2010年03月01日vol.1323掲載

 カーナビゲーションシステム市場が、活況を呈している。2009年11月、各メーカーが揃って携帯性を重視した小型・軽量モデルを発売したことが、市場に刺激を与えたようだ。09年11月と10年1月を比較すると、販売台数で121%、販売金額で132%と、大きな伸びをみせている。各社とも、さらなる需要拡大を見込んでいるが、携帯性以外のどのような機能で勝負するかという課題に直面している。

「ナビ」がライフスタイルに浸透

「クルマの外でも」を訴求
欠かせない本来機能の進化


 「Gorilla(ゴリラ)」ブランドで展開する三洋電機は、厚さ18.8mm・重さ210gの新モデル「Gorilla LITE(NV-LB50DT)」が引っ張るかたちで、2010年1月の「BCNランキング」で35.3%の販売台数シェアを獲得。メーカー首位に立った。「携帯電話の進化と普及で、ナビゲーション機能がライフスタイルのなかに浸透してきた。携帯性にすぐれたポータブルカーナビも、これにけん引されている」と、車載機器事業部販売推進統括部の秋山隆課長はみている。

 三洋電機は、カーナビを車から持ち出し、家でドライブコースを調べたりワンセグを楽しんだりするほか、「ゴリラ散歩」と名づけた地図の縦表示が可能な「徒歩モード」を、カーナビの新たな用途として提案している。

 メーカーシェア2位のソニーも、「nav-u(ナブ・ユー)」シリーズの新モデルで、「クルマの外でも使おう、という訴求を強化し、『徒歩ナビ』の機能を積極的に打ち出している」(コンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部パーソナルAVMK課の藤貫亮氏)という。また、徒歩ユースの提案に加え、自転車用クレードルをオプションで用意するなど、新しいユーザー層を開拓している。

 しかし、新ユーザーの獲得に注力していればいいかといえば、状況はそう簡単ではない。携帯性や車外での使用提案だけを前面に押し出していると、携帯電話のマップ・ナビ機能との差がわかりにくくなってくるからだ。もちろん各メーカーはカーナビ本来の機能について、さまざまなかたちで進化を図っている。

 例えばソニーは、「ユーザーが重視するカーナビとしての用途を主軸にする」(ソニー・藤貫氏)との考え方から、新モデルに独自の自車位置測位システム「POSITION plus GT」を搭載。長いトンネルや山岳路など、GPSを受信できない場所でも測位を継続し、ナビゲーションを表示するようにした。

 三洋電機も、使用シーンのメインになるのはカーナビ機能とみて、「今後は本来機能で業界を引っ張るような技術に注力したい」(三洋・秋山課長)と、新たな技術開発を表明している。

存在感増すトライウイン
価格を抑えて女性に訴求


 三洋、ソニー、パナソニック、パイオニアなど、大手メーカーが強いカーナビ市場で、今年に入って存在感を発揮しだしたのが、中小メーカーのトライウインだ。海外生産や少人数の従業員などでコストを抑え、低価格(2万円前後)の製品を投入している。1月の販売台数シェアは11.3%と、パナソニック(11.8%)とほぼ同レベル。主にテレビショッピングの販売チャネルを通じて、50~60代の女性ユーザーをターゲットに据え、「価格が安いので、2台目の車に最適」(商品企画担当の石井秀樹係長)と訴求する。今年、四つの新製品の投入でラインアップを拡大。新製品では、価格を抑えながらより技術を前面に押し出し、20~40代の男性ユーザーを狙う方針だ。

 では、こうしたメーカーの目論見に対して、店頭の様子はどうなっているだろうか。

 ビックカメラ有楽町店本館の2階ポータブルカーナビコーナーには、三洋電機「Gorilla」やソニー「nav-u」のほか、パナソニック「Strada(ストラーダ)」とパイオニア「Carrozzeria(カロッツェリア)」などがずらりと並ぶ。担当の久田上主任によれば、「確かに小型・軽量化は進んでいるが、お客様は最終的に画面の見やすさにこだわる」という。売れ筋は、「昔からカーナビを使っているユーザーには『Gorilla』が人気。新たにお買い求めのお客様には『Strada』がよく売れている」ということだ。

売り場拡張を検討するビックカメラ(有楽町店本館)

 「まだ知らない人が多い」という徒歩ナビゲーション機能については、「散策や山登りに便利です」と説明するなど、新たな用途提案にも力を入れている。3~4月の新生活シーズンに向けて需要が広がるとにらんで、「売り場の拡大を考えている」(久田主任)という。

 ポータブルカーナビ(PND)の市場は動いている。小型・軽量化が販売を押し上げるなかで、各メーカーは本格的なカーナビ機能を進化させ、他社製品との差異化を図る。それでも、メーカー各社の現在の思惑は共通していた。「ポータブルカーナビはまだまだ伸びる。ポテンシャルは大きい」──。
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