店頭流通
ポータブルカーナビゲーション 小型・軽量化が市場を刺激
2010/03/04 16:51
週刊BCN 2010年03月01日vol.1323掲載
「ナビ」がライフスタイルに浸透
「クルマの外でも」を訴求欠かせない本来機能の進化
三洋電機は、カーナビを車から持ち出し、家でドライブコースを調べたりワンセグを楽しんだりするほか、「ゴリラ散歩」と名づけた地図の縦表示が可能な「徒歩モード」を、カーナビの新たな用途として提案している。
メーカーシェア2位のソニーも、「nav-u(ナブ・ユー)」シリーズの新モデルで、「クルマの外でも使おう、という訴求を強化し、『徒歩ナビ』の機能を積極的に打ち出している」(コンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部パーソナルAVMK課の藤貫亮氏)という。また、徒歩ユースの提案に加え、自転車用クレードルをオプションで用意するなど、新しいユーザー層を開拓している。
しかし、新ユーザーの獲得に注力していればいいかといえば、状況はそう簡単ではない。携帯性や車外での使用提案だけを前面に押し出していると、携帯電話のマップ・ナビ機能との差がわかりにくくなってくるからだ。もちろん各メーカーはカーナビ本来の機能について、さまざまなかたちで進化を図っている。
例えばソニーは、「ユーザーが重視するカーナビとしての用途を主軸にする」(ソニー・藤貫氏)との考え方から、新モデルに独自の自車位置測位システム「POSITION plus GT」を搭載。長いトンネルや山岳路など、GPSを受信できない場所でも測位を継続し、ナビゲーションを表示するようにした。
三洋電機も、使用シーンのメインになるのはカーナビ機能とみて、「今後は本来機能で業界を引っ張るような技術に注力したい」(三洋・秋山課長)と、新たな技術開発を表明している。
存在感増すトライウイン
価格を抑えて女性に訴求
三洋、ソニー、パナソニック、パイオニアなど、大手メーカーが強いカーナビ市場で、今年に入って存在感を発揮しだしたのが、中小メーカーのトライウインだ。海外生産や少人数の従業員などでコストを抑え、低価格(2万円前後)の製品を投入している。1月の販売台数シェアは11.3%と、パナソニック(11.8%)とほぼ同レベル。主にテレビショッピングの販売チャネルを通じて、50~60代の女性ユーザーをターゲットに据え、「価格が安いので、2台目の車に最適」(商品企画担当の石井秀樹係長)と訴求する。今年、四つの新製品の投入でラインアップを拡大。新製品では、価格を抑えながらより技術を前面に押し出し、20~40代の男性ユーザーを狙う方針だ。
では、こうしたメーカーの目論見に対して、店頭の様子はどうなっているだろうか。
ビックカメラ有楽町店本館の2階ポータブルカーナビコーナーには、三洋電機「Gorilla」やソニー「nav-u」のほか、パナソニック「Strada(ストラーダ)」とパイオニア「Carrozzeria(カロッツェリア)」などがずらりと並ぶ。担当の久田上主任によれば、「確かに小型・軽量化は進んでいるが、お客様は最終的に画面の見やすさにこだわる」という。売れ筋は、「昔からカーナビを使っているユーザーには『Gorilla』が人気。新たにお買い求めのお客様には『Strada』がよく売れている」ということだ。
「まだ知らない人が多い」という徒歩ナビゲーション機能については、「散策や山登りに便利です」と説明するなど、新たな用途提案にも力を入れている。3~4月の新生活シーズンに向けて需要が広がるとにらんで、「売り場の拡大を考えている」(久田主任)という。
ポータブルカーナビ(PND)の市場は動いている。小型・軽量化が販売を押し上げるなかで、各メーカーは本格的なカーナビ機能を進化させ、他社製品との差異化を図る。それでも、メーカー各社の現在の思惑は共通していた。「ポータブルカーナビはまだまだ伸びる。ポテンシャルは大きい」──。
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