店頭流通
需要広がるプリンタ用紙 自宅プリントの普及が追い風に
2010/02/18 16:51
週刊BCN 2010年02月15日vol.1321掲載
プリンタの高機能化、一眼の普及で拡大
インクジェットペーパー用紙でメーカーシェア1位のエプソン販売によると、お店プリントと自宅プリントの割合は、「6対4で、自宅プリントの構成比が上回っている」(マーケティングセンタープロダクトマーケティング部の神阪誠課長)のが現状という。プリンタが高機能化し、自宅でもお店に劣らないきれいなプリントが、手軽に楽しめるようになったことが大きい。また、高画質な写真を撮影できるデジタル一眼が普及。写真愛好家だけでなく、ファミリー層や若い女性も、L版以上のサイズで写真をプリントしたい、光沢紙だけでなくマットな質感の用紙も使ってみたい、とプリントへのこだわりをもつようになってきた。
そのため、用紙のサイズ・質感を選んだり、パソコンで画質調整を行ったりして、「好みで写真の表現を変えることができる」(神阪課長)自宅プリントが支持を集めているようだ。
その一方で、2009年のインクジェット用紙の前年比は、販売数量で7.2%減、金額で7.6%減と、ともに前年割れ。その要因を、エプソン販売、富士フイルム、キヤノンの上位メーカー3社は、「大容量のメディアが低価格で購入できるようになり、メディアに眠ったままの写真データが増えた」と分析している。
メーカーシェア3位のキヤノンでは、「昨年くらいから、一番人気の『キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド』の下のクラスである『キヤノン写真用紙・光沢』の構成比が大きくなってきた」(プリンティングソリューション企画本部インクジェットマーケティング部インクジェット商品企画第一課の岡崎哲人課長)という。写真をプリントするという行為は、日常生活のなかでさほど優先順位が高くないことから、景気の影響を受けやすいようだ。
プリントする楽しみを伝える
そこで、各メーカーは、自宅プリントの簡単さや楽しみを伝えるため、さまざまな施策を打っている。例えば、エプソン販売は、プリンタで写真を印刷するまでの一連の動作を再現する店頭デモを行っているほか、デジタル写真を自身で作品に仕上げる方法を知らない写真愛好家向けに、「それいけ!写真隊」というセミナーを、月に1回、全国各地で開催している。セミナーでは、「Photoshop」を使った画像処理の方法から、サイズや質感による用紙の選択まで、プリントして作品に仕上げるまでの過程を体験してもらうことで、自分で作品を作る楽しみを伝えている。
同じくキヤノンも、店頭でのプリントデモを数年前から実施。また、人気アニメ「ポケットモンスター」のカレンダーのテンプレートをホームページに用意し、無料で提供することで、ユーザーがプリントするのを促している。
メーカーシェア2位の富士フイルムは、定期的に写真コンテストを開催。昨年は、「画彩 写真仕上げ 光沢プレミアム」を使った、家族をテーマにした写真を募集。「店頭でチラシを配るなどして告知したところ、1000点近くの応募があった」(コンシューマー営業本部営業推進グループ兼プロフェッショナル写真グループの岩田敏部長)という。できるだけたくさんの人に商品を体験してもらい、リピートにつなげる狙いだ。
量販店の状況を尋ねてみると──。ビックカメラ有楽町店本館・4F周辺機器コーナーの冨田将彦主任は、「最新のプリンタは、簡単な操作で、きれいに、しかもスピーディーに印刷できるようになった。デジタル一眼が普及したこともあり、自宅プリントの需要は増えている」と語る。
ユーザーは、「日常使い用の写真で、印刷コストを抑えたい場合は自宅プリント。人にプレゼントするなど、大量に印刷する場合はお店でと、両方をうまく使い分けている」(冨田主任)という。
同店の人気製品は、富士フイルムの「画彩 写真仕上げ Value(バリュー)」のL版と、エプソン販売の「写真用紙<光沢>」のL版など、比較的低価格なもの。その一方で、富士フイルムの「画彩 写真仕上げ Pro」シリーズも、「デジタル一眼が普及して一般ユーザーも、より高画質なプリントを求めるようになってきた」(冨田主任)ことから、売れているという。
しかし、市場については、メーカーと同様に「ユーザーがプリントするのは、人にあげるなどの目的があるときだ。メディアが大容量化しており、プリントまでなかなか辿りつかない」と、冨田主任は厳しい見方をしている。
メーカー側は、自宅でプリントする人は今後も増えるが、09年に引き続き、10年、11年の用紙市場は苦戦するとみており、いかに「プリントで写真を残す」機会を提案していけるかが、今後の市場拡大のカギとなりそうだ。
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