店頭流通

拡大するスキャナ市場 シートフィード型スキャナが急成長

2010/02/04 16:51

週刊BCN 2010年02月01日vol.1319掲載

 スキャナ市場が活気を帯びている。BCNランキングでは、2009年12月の時点で、対前年の販売台数で119.6%、金額では112.2%と好調だ。この成長を後押ししたのは、スキャニングしたい書類を大量にローラーで取り込んで読み取る「シートフィード型」の拡大。同月の販売台数構成比で46.8%を獲得し、書類をガラス面に置いて下から光を当てて読み取る「フラットベッド型」の42.5%を上回った。フラットベッド型は複合プリンタに搭載されていることが多く、単機能機としての規模は縮小しつつある。だが、スキャナ市場そのものは拡大する傾向にある。ビジネスやプライベートで、スキャナを使った書類の整理ニーズが高まっているからだ。


文書に適したシートフィード型

 ビックカメラ新宿西口店でのスキャナの人気モデルは、キヤノンの「image FORMULA DR-150」とPFUの「Scan Snap FI-S1300」。いずれもシートフィード型で、2009年秋に発売された新製品だ。プリンタ・スキャナコーナー担当の持田佳紀氏は、「紙のサイズが異なっても一度に取り込んでくれる。電源がUSBバスパワーなのも便利」と売れている理由を語る。

 ただ、「紙焼き写真を取り込みたいユーザーは、(単機能のスキャナよりも)スキャナ機能付きの複合プリンタに流れる」(持田氏)という。こうした複合プリンタはカードスロットを搭載するモデルが多く、PCを介さずに写真をメモリカードに保存できるという利点があるからだ。デジタル化したい素材によって、シートフィード型スキャナか複合プリンタか、選択の分かれ道になるというわけだ。

 スキャナの購入層は大学生や社会人の男性が中心。「主婦の方が家族連れで来られるケースもある」そうで、最近では女性ユーザーも目立ってきている。

ビックカメラ新宿西口店のスキャナコーナー

複合プリンタとの共存は可能

 シートフィード型を投入するPFUは、ワールドワイドの業務向けスキャナ市場で確固たる地位を築く老舗メーカー。国内の個人向けスキャナ市場には2000年に参入し、09年12月のBCNランキングのメーカー別販売台数シェアは32.9%で、1位のキヤノン33.9%に迫る勢い。年次推移でも、台数・金額ともに右肩上がりを続け、現在のシェアまで登りつめた。

 09年12月に急激に市場規模が拡大した理由として、「不況の時こそ業務の効率化やエコに注目が集まる。こうした世の中の動きとスキャナの認知度の向上が合致した」とPFUの松本秀樹・イメージビジネス営業統括部第一営業部部長は振り返る。また、同社ではWindows 7などの新OSにいち早く対応。11月の「FI-S1300」投入が成果に結びついた。「01年の『ScanSnap』ブランド確立当初から、『簡単、スピーディ、コンパクト』という基本コンセプトを変えずに長年取り組み続けた」(松本部長)点も評価されたようだ。

 販売チャネルは、富士通パーソナルズ経由で製品を販売する家電量販店のほか、大手ECサイトがある。スキャナはその性質上、デジタル化する素材や管理ソフトの操作方法などを伝えないとメリットを理解してもらいにくい製品だ。そこでPFUは、店頭で製品の脇に小型モニタを設置し、動画で使い方を紹介する。また、「一般的に、量販店のスキャナコーナーは狭い。(ある程度の面積を確保して)店内での地位を上げていきたい」と意気込む。ユーザーは企業内個人が中心だが、ビジネス用途として教員や医師からもニーズがあるという。

 複合プリンタとの競合が懸念されるなか、今後、スキャナ市場は縮小するとみられる。しかし、「スキャナの利用価値を理解してもらえれば、伸びる余地はある」(松本部長)と強気の姿勢をみせる。例えば、プライベート用途で、年賀状や各種明細、フリーペーパーのレシピなどの需要を見込む。09年は店頭で体験イベントを14回実施した実績があり、こうした機会を増やすことでユーザーのすそ野を広げる考えだ。

フラットベッド型は一機能に

 一方、メーカーシェア首位のキヤノンは、フラットベッド型を主に扱う。「スキャナは機能」であると、キヤノンマーケティングジャパンの橋本圭弘・プリンティングソリューション企画本部インクジェットマーケティング企画部部長は言い切る。つまりファクスのように、機器単体ではなく一つの機能として今後デバイスに組み込まれていくと予想する。事実、同社の複合プリンタにはフラットベッド型スキャナを搭載しており、プリンタに軸足を置く構えだ。

 確かに、スキャナ機能付きのプリンタ市場は拡大している。BCNランキングのインクジェット/ページプリンタを合算した販売台数構成比は年々上昇しており、07年の64.6%から、08年は70.3%、09年には74.1%まで増加。プリンタの標準機能として確立している。ただ、一方でキヤノンはシートフィード型の「DR-150」を09年10月に投入しており、同型に関しては拡大の余地があるとみている。

 キヤノンと同じくフラットベッド型を販売するエプソンもまた、複合プリンタに定評があるメーカーだ。エプソン販売の石川勝也・マーケティングセンタープロダクトマーケティング部課長は「(スキャナ機能付きプリンタを含めた)スキャナユニット全体の市場は伸びている」と楽観的だ。同社は、手書き文字と写真を組み合わせる「手書き合成」や、PCを使わずに写真・文書をメディアに直接保存するなど、スキャナを用いた各種機能を複合プリンタの付加価値として盛り込む。キヤノンと同様、プリンタの一機能として訴求している。

 スキャナ単体については、「郊外型店舗のほうが都市型よりもフラットベッド型が置かれている割合が高い」(石川課長)という傾向を踏まえ、「ニューフォトフォーラム」「それいけ!写真隊」などの独自のプロモーションを通じて、家電量販店の少ない地方のユーザーが実機に触れられる機会を増やし、フラットベッド型のメリットを示していく方針だ。
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