店頭流通
低価格化進み伸びる地デジチューナー 無償配布など政府の施策も後押し
2010/01/28 16:51
週刊BCN 2010年01月25日vol.1318掲載
低価格を求める声が増加
2009年に地上デジタルチューナーが伸びた最大の要因は、価格の急速な下落にある。1月の税別平均単価は1万4122円だったが、12月の時点では8051円まで下がった。地上デジタルチューナー市場でシェアトップのマスプロ電工は、「もともと地上デジタルチューナーはアナログのテレビを救済するためのもの。家庭にある2台目、3台目の小型テレビに使われることが多く、ハイビジョンのグレードのものを必要とするよりは、低価格を求める声が主流になってきた。そこで、テレビとの接続機能として備えていたD端子を削り、SD画質にするなどして、コストを削減した」(河合清彦営業部長)と語る。メーカーシェア3位のバッファローも「デジタルチューナーのユーザーは多くの機能を求めてはいない。今もっているテレビを最低限の出費で見続けることを重視している」(事業本部市場開発事業部次長兼デジタルホームマーケティンググループリーダー製品マーケティング担当の荒木甲和氏)と市場のニーズを分析する。
こういったユーザーの要望を受けて、メーカーは今まで部品点数が多かったチューナーを非常にシンプルな構造で作るようになった。サイズもパッケージも小さくなったことで物流コストも下がり、結果、製品を安く提供できるようになったのだ。
さらに、マスプロ電工とバッファローは、「イオンが4980円で09年9月に発売した『PRD-BT102-PA1』が、価格下落に拍車をかけた」と口を揃える。
イオンに製品を提供したメーカーシェア2位のピクセラは「イオンが家電専用の売り場を作った。製品を安く提供するにあたって、大手メーカーと組むのは難しい。そこで、低コストに対応できる当社に依頼があった」(池本敬太専務取締役)と提携に至った経緯を語る。
「家電においてイオンは独自のブランドを展開し、他社製品は並べない。そのため、ある程度の数が見込める。また、家電に詳しくないファミリー層にもデジタルチューナーを浸透させることができた」(同)としており、イオンで展開したメリットは大きい。
見ることができればいい
地上デジタルチューナーが09年に伸びた理由は、製品単価の下落だけではない。「エコポイント制度で薄型テレビを購入したユーザーがデジタル画質の美しさを体感したことが、既存の2台目、3台目テレビに用いるチューナーの需要を喚起した」(マスプロ電工の河合部長)というのだ。さらに、「総務省の生活困窮世帯への簡易チューナー無償配布がメディアで大きく取り上げられ、地上デジタル放送を見るために最も安く済む手はデジタルチューナーを買い求めることだという意識が浸透してきた」(バッファローの荒木氏)という。
2009年は製品のラインアップが増え、地上デジタルチューナー売り場の棚はぎっしりと埋まった(写真は、ビックカメラ有楽町店本館) |
エコポイント制度によってテレビ単体だけでなく、地上デジタル放送自体への認識が高まったことが、デジタルチューナーの売り上げを伸ばしているようだ。
同店舗での売れ筋は、やはりピクセラ「PRD-BT100-P00」やバッファロー「DTV-S100」などの低価格な簡易チューナー。これらはチューナーを地上デジタルのみに絞り、BS・110度CSには対応していないし、表示はSD画質。
しかし、「2台目、3台目の小型アナログテレビなら衛星放送は不要だし、SD画質であってもアナログに比べれば画質は断然美しい。そのため、とにかく地上デジタル放送を見ることができればいいというユーザーに売れている」と同氏。さらに、簡易チューナーであればコンパクトで設置場所に困らない。テレビ周りをすっきりさせたいというニーズから、好まれているようだ。
量販店、メーカーともに一致しているのは、11年7月のアナログ放送停波に向けて、チューナーの売り上げはさらに伸びるだろうということ。
ピクセラは、「地上デジタルだけでなく、衛星放送にも対応して低価格な製品を2010年に投入する」(池本専務)と明言する。マスプロ電工は「2月のバンクーバーオリンピックの影響で、今年はBSの需要が伸びてくるのではないか。3波対応機の拡大に期待している」(河合部長)と話す。バッファローは「簡易チューナーのラインアップを充実させたうえで、3波対応の多機能チューナーにも力を入れたい」(荒木氏)とする。2011年に向けて、メーカーの試行錯誤は続く。
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