店頭流通

ラック型サラウンドシステムが拡大 テレビ買い替え需要で市場に勢い

2010/01/21 16:51

週刊BCN 2010年01月18日vol.1317掲載

 テレビやBDレコーダーとつなげば臨場感溢れる音が楽しめるサラウンドシステム。なかでも、テレビ台と兼用できるラック型が売れる割合が増えている。「BCNランキング」2009年11月の構成比では、台数で35.4%、金額では52.5%。08年以前と比較して拡大している。家電量販店によると、テレビの買い替えとタイミングを合わせて「ついで買い」するユーザーが増えているという。デジタル放送への移行とAV機器の技術革新によって、高精細なハイビジョン映像が手軽に視聴できる時代になり、ユーザーはそれにふさわしい高品質な音を求めるようになってきた。

家電量販店は「リンク機能」で訴求

 ビックカメラ有楽町店本館では、ラック型サラウンドシステムをテレビ売り場で展開する。ユーザーがアナログからデジタルにテレビを買い替える際、以前よりも画面サイズの大きなモデルを買うと、それまで使っていた自宅のテレビ台が使えなくなることがある。店頭ではこの点に着目し、サイズに合ったラック型をセットにした購入を提案する。

 同店ビジュアルコーナー主任の太田修二氏によると、「ユーザーはオーディオ機器について『難しそう』というイメージを抱きがち。想像している以上にケーブルが少なくて済むなど、手軽に導入できる利便性を伝えている」そうだ。実際、ユーザーは、テレビと同じメーカーの製品であればリモコン一つで操作できる「リンク機能」を重視してラック型を検討しているという。

 このほか、オーディオ機器コーナーではヤマハやデノンなど音響系のメーカー別に製品を設置、ラック型以外の「フロントサラウンド型」「スピーカーシステム型」などを揃える。「自宅で迫力ある映像を見ることができるので、映画館に行く回数が減った」「友達や家族などみんなで楽しめるのがいい」など、サラウンドシステムを導入したユーザーの声も届いており、太田氏は手応えを感じている。

 ラック型を扱うテレビメーカーのパナソニックは、11月のメーカー別販売台数シェアで2位に入っている。「(スピーカーシステム型と比べて)手軽に設置できるほか、テレビ台と兼用なので場所を取らず、手軽にホームシアターが楽しめる」と、デジタルAVCマーケティング本部商品グループテレビチームの酒本俊雄氏はメリットを語る。家電量販店では、同社のテレビ「VIERA」とレコーダー「DIGA」、ラック型の三つを同時に体感できる展示やイベントを実施。「ユーザーに『触って』『見て』もらい、ラック型のよさを実感してもらう」(酒本氏)のが狙いだ。

 パナソニックの売れ筋モデルは「SC-HTR210」。部屋の隅に置けるよう、本体の角をカットした省スペース設計と、小さい音量でも臨場感ある音声を再現する技術「ウィスパーモードサラウンド」が人気の理由だ。さらに、前面にガラス製の扉を採用したことで、「高級家具のよう」だと主婦層を中心に好評を博しているという。ラック型はほかのタイプと比べてサイズが大きく、リビングである程度の体積を占める。このため、ユーザーはインテリアとしてデザインも重視している。店頭でテレビと一緒に展示することで、設置後のイメージが掴みやすいという利点がある。

ビックカメラ有楽町店本館のテレビ売り場。テレビの下にはラック型のサラウンドシステムが置かれている

今後はラック型以外の成長に期待

 ラック型とそれ以外のタイプ両方を扱っているメーカーもある。ヤマハだ。ヤマハは、ラック型に参入していない東芝の「REGZA」や日立製作所の「Wooo」とともに製品を設置する。「テレビの音がよくなるほか、売り場として存在感がある」と、ヤマハエレクトロニクスマーケティングの企画・広報室広報担当プロダクトマネジャー課長代理の加藤剛士氏はテレビ売り場で展示するメリットを語る。

 ヤマハはラック型の「YRS-1000」が売れ筋。このモデルは、各テレビメーカーが提供する「リンク機能」に対応し、メーカーを気にせずに組み合わせられる安心感がある。また、デザインを重視し、サラウンドシステムとしては珍しいホワイトモデルも提供する。一方、スピーカーとウーファーを一体化した「フロントサラウンド型」にも注力。上位モデル「YSPシリーズ」では「ユーザー層が『REGZA』と一致」(加藤氏)しているため、東芝のテレビとセットで購入するユーザーの割合が高いという。現在ヤマハでは、ラック型とそれ以外のタイプの販売台数の比率は「8対2」とラック型が多数を占めている。ただ、「2011年まではラック型が伸びるが、それ以降はラック型以外の外付けタイプが増える」と予想する。

 一方、オンキヨーは、スピーカーとウーファーをセットにした「スピーカーシステム型」を軸に据える。チャンネル数2.1chの最小構成を提供することで、リビングの大きさや予算に応じて、後からスピーカーを追加できるのが強みだ。09年11月の販売台数シェアで1位を獲得した「HTX-11X」がそれだ。

 ラック型の市場拡大について、AVカンパニー国内営業部国内マーケティング課の山本誓一氏は「(ラック型やスピーカーシステム型など)ユーザーは幅広い選択肢から製品を選ぶ。個別のニーズに合ったモデルをいかに提案していくかが課題」とあくまで冷静だ。リビングに置くような40V型以上の大型テレビをターゲットとするラック型に対し、「2台目などの小型テレビにもアプローチする」ことで市場の棲み分けを図る。

 同社は07年に当時最新の音声フォーマット「Dolby TrueHD」「DTS-HD Master Audio」に対応した製品をいち早く投入し、市場をけん引してきた自負がある。今後の市場拡大の外的要素としては、BDソフトの充実やBDレコーダーの普及に期待する。同社の「音に対するこだわり」を妥協することなく、リピーターを確保していきたい考えだ。
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