店頭流通

異変! USBメモリ市場 塗り変わる勢力図 ソニーがバッファローに肉薄

2010/01/14 16:51

週刊BCN 2010年01月11日vol.1316掲載

 USBメモリ市場の勢力図に変化が起きている。これまではバッファロー、エレコム、アイ・オー・データ機器といった国内パソコン周辺機器メーカーが主導してきたが、2009年に入ってからソニーのシェアが上昇。09年10月にバッファローを抜き、トップに立った。11月は再びバッファローが首位を取り返したものの、両社のシェアは拮抗。ソニーの台頭が目立っている。

ビックカメラ新宿西口店のUSBメモリ売り場

価格メリットを打ち出しにくい状況

 USBメモリ市場は、ここ数年、低価格を武器に台湾メーカーが参入しているが、主たるけん引役は依然として国内メーカーだ。そのなかで販売台数シェアトップのバッファローは、2~3割前後で推移している。

 しかし、08年11月と09年11月で販売台数と金額シェアのメーカー別ポジショニングを比較すると、08年11月に台数シェアで5位だったソニーが、1年後の09年11月にはトップのバッファローに肉薄。ソニーがバッファローを脅かす存在になってきていることがわかる。

 その要因について、ソニーマーケティング・メディア&バッテリーMK課の白髭誠二氏は「フラッシュメモリ価格の上昇に伴って、年率60~70%という単価ダウンが落ち着き、他社との価格差が少なくなってきたことが、大きな要因と考えられる」と分析する。

 一方バッファローでは、「09年はフラッシュメモリチップの調達が厳しい状況だったが、製品単価が上がらないように価格を維持してきた」(ストレージ事業部の中村新次長)という。

 08年11月の台数シェアで、4位(8.4%)を獲得し、ソニー(6.7%)を上回っていたトランセンド・ジャパンも「09年12月に入って落ち着いてはいるものの、08年末から09年11月頃までメモリ価格が上昇し続けた」(伊佐山明・営業第四部部長)と話す。「1年間にわたって上がり続けることは今までなかった」ことから、新製品を投入しつつも戦略が打ち出しにくい状態だったようだ。

 しかし、ソニーにとっては、低価格を強みにしていたメーカーが価格メリットを出しにくくなったことが、シェア上昇をもたらす結果につながった。パソコン本体がコモディティ化するなかで、USBメモリのユーザー層も広がった。


 パソコン周辺機器ブランドに詳しくない人がUSBメモリを選ぶ際、価格に大きな差がなければ、知名度の高いソニーを選ぶという購入傾向が反映されているといえるだろう。

 さらに、ソニーの製品は、「差込口をノック式で押し出す仕組みになっているので、キャップがなくて使いやすい」(ビックカメラ新宿西口店の周辺・通信機器コーナー担当澤田光昭氏)という特色もある。ブランド認知度に加え、こうした製品の特徴も追い風になっているようだ。


需要にブレーキ、大容量化の傾向

 ソニーの人気が高まるなか、バッファローはトップシェアを維持するために、「他人と違ったものを持ちたい」「個人情報を安全に携帯する」ことに着目し、販売強化を図っていく方針だ。08年6月に発売した「綾波レイ」や「ルパン三世」などのキャラクター製品は、「USBメモリなのにフィギュア、フィギュアなのにUSBメモリ」というユニークデザイン。「(これまでなかった)市場を開拓する」と、平野健太郎・ストレージ事業部フラッシュソリューショングループリーダーは販売に力を入れていく。

 トランセンド・ジャパンは、09年11月には販売本数シェアが4.8%となり、前年同月に比べて3.6ポイント減ったが、今後はPCパーツショップやECサイト、ホームセンター、ショッピングセンターなどでの拡販に力を入れる。

 では、市場はどのように動いていくのだろうか。ビックカメラ新宿西口店の澤田氏は、「売れ行きとしては、昨年(08年)とほとんど変わらない」という。しかし市場全体の伸び率をみると、台数ベースで09年9月以降は前年を割り込み、金額でも前年を下回って推移している。長期にわたってメモリ価格が上昇を続けたことで、メーカーが製品単価を下げにくい状況になったため、需要にブレーキがかかったとみることができる。

 しかし、平均単価は上昇傾向にある。「大容量の製品が買いやすくなっている」(ビックカメラの澤田氏)ことが一因になっているようだ。
  • 1

関連記事

USBメモリの販売台数が失速ぎみ 一方では大容量化が進む